短編集―紅魔館は本日も平常運転 (フラン・パチュリー編)―
昼下がり、わたしはフランと2人で図書館にいた。わたしはいつもの席に腰を落ち
着かせつつ、いつものように趣味の読書と魔法の研究に励んでいた。その間、フラン
はこの広大な図書館の中を、まるで自分の遊び場のようにはしゃぎ回り、あちら側か
ら現れてはいなくなり、こちら側から現れてはいなくなりを繰り返していた。
――館内ではおとなしくしなさいといつもあれだけ言っているのに、あのは……、
「フラン、何度言えば解るの? ここでは静かにしなさいと言っているでしょ?」
「えー、だってこんなに広いんだよ? それなのに、ただ本読んでるだけなんて退屈
だよ」
そんなふうに、フランはいかにもな理屈をつけつつわたしに口答えをした。わたし
は「はぁ」と溜め息を漏らしながら、「程々にしなさいね?」と、釘だけを刺し、仕
方なく、また研究に戻った。
しばらくしてから、わたし達は咲夜が用意してくれたおやつを頂いていた。その
間、フランは、「それでさぁ」や、「あのお姉様がさぁ」など、無邪気に笑いながら
ケタケタと話し続けていた。わたしはそんなフランの話に耳を傾けながら、「せめて
口の中身だけはなくしてからにしなさい」と注意した。
「――ところで」
わたしはあることを思い出し、一言フランに尋ねてみることにした。
「ねぇフラン、唐突だけれど、わたしが楽しみに残しておいたプリン、知らないかし
ら?」
わたしがそう尋ねた途端、フランはスプーンを咥えたまま笑顔で硬直した。どうや
ら犯人はこの子のようである。
「……怒らないから、もし食べてしまったと言うのであればその理由と、いつそうし
てしまったのかを正直に言いなさい。大丈夫、これは第三者には決して言いふらした
りはしないから」
「……昨日の夜中、お腹すいちゃって。つい」
「そう、解ったわ。でも、やっぱり食べたら食べたでこっそり一言くらいは言って欲
しかったわね?」
「……ごめんなさい」
フランは反省してくれたらしく、しばしの間ここに訪れても騒ぐことはなくなっ
た。
けれど、
「……」
代わりに度々わたしのおやつを摘まみ食いしては、
『美味しかったよ♡』
という、あの子のイラスト入りのメッセージカードが添えられたお皿だけが目に留まるようになった。
「むっきゅん!」
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