4.中間選考突破、そして受賞へ

 その後、私は『うさぎとココア』(現在は非公開)や『流れ星に乗せるには少し重すぎる僕の感情は』(現在は『無限の色の記憶~雨虹みかん短編集~』に収録)という小説を執筆した。すっかり小説を書くことにのめり込んでしまったのだ。のめり込んだのは小説だけではない。Twitterの「Rium」という毎日ひとつ短歌のお題を出してくれるアカウントを見つけてからは毎日短歌を詠むようになった。そこで私は『雨と虹とみかんと』という短歌集を作り、カクヨムで短歌を更新し始めた。また同時に「#雨と虹とみかんと」というハッシュタグを使ってTwitterとInstagramでも短歌を更新し始めた。この頃が一番SNSを駆使していたと思う。


 そうして生まれた作品たちを公開する際に何も考えずにとりあえず「カクヨム甲子園に応募する」ボタン(?)にチェックを入れて応募した。つまり、『雨と虹とみかんと』もカクヨム甲子園に応募したということだ。だってジャンル不問だからね!(ポケットモンスターシリーズに出てくるとあるおじさんの細かすぎるモノマネ)もちろん短歌で受賞するとは思っていなかった。応募できるものはしちゃえ精神である。もしこれで受賞していたら「詩・童話・その他」というジャンルでの初の受賞者となっていただろう。


 部活を引退し(実は私は高3の夏まで部活をやっていた。吹奏楽部の夏のコンクールの県大会が8月なので8月まで部活をしていたことになる)、小説を書きたい欲も収まり短歌だけを続けていた頃に、『帰り道』と『文房具コーナーから始まる文通』が中間選考を突破したことを知る。私はとても嬉しかった。また、当時応援していた作品たちが残っていて嬉しく思ったことをよく覚えている。そして、もう学校を辞めるなんて考えてはいけないと意志が固まった。「高校生限定の小説コンテスト」なのだから、高校を辞めてしまっては中間選考突破が取り消されてしまう、そう思った。高校を辞めようと思っていた当時の私にとって、この中間選考突破は大きな出来事だった。カクヨム甲子園が私の心の支えとなった。


 そして12月23日、受賞作品が発表された。私はショートストーリー部門に応募した『文房具コーナーから始まる文通』で奨励賞を受賞することができた。『帰り道』で受賞できなかったのが少し残念だったが、それ以上に受賞できたことが嬉しかった。それに、『帰り道』ではなく『文房具コーナーから始まる文通』が受賞したのも納得できる気がした。というのも、自分が思うより『文房具コーナーから始まる文通』は色々な方々からコメントやレビューを多く頂いていた作品だったからだ。今では『文房具コーナーから始まる文通』という作品が大好きだ。


 ここからは余談。受賞作品一覧を見たときのことはあまり覚えていないのだが、印象的なエピソードが1つあったので紹介しておく。

 私はショートストーリー部門の「奨励賞」だ。つまり、それはショートストーリー部門に私の作品よりも高い評価を得た作品があるということ。私はまずショートストーリー部門の大賞の作品のあらすじをチェックすることにした(以下の「」内がそのときの私)。


「嬉しいけど、大賞じゃないのはちょっと悔しいな……。大賞の作品のあらすじを見てみようじゃないか……え! テーマかぶってるんだけど!」


 私は『文房具コーナーから始まる文通』というタイトルの作品で受賞したのだが、ショートストーリー部門の大賞の作品のタイトルは『初デート前レター』だった。「文通」と「レター」。自分の作品のアイデアは唯一無二だという謎の自信があったため、手紙かぶりをしてしまったのは少し悔しかった(その時はまだ読んでもいないのに)。審査員の全体の作品を読んでのコメントにも「今年は手紙というテーマもあり……」のようなもの(原文はかなり違うがこのようなことを書かれていた)があり、るんるん気分でいたのだがそれは『初デート前レター』を指しているのであって私の作品を指しているのではないことを知ったときはかなり悔しかった。今となっては笑い話。


 余談は置いといて。


 私は、学校名が公表されたからには、高校をちゃんと卒業しようとさらに意志が強まった。


 私にとってこの受賞はゴールではなくスタートだった。


(つづく)



※『雨虹みかんの日記帳』の『三嶋悠希について』より加筆修正したものを含む。

 

 

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