女の子の過失で傷つけられてただただめちゃめちゃに謝られたい

かぎろ

タバスコ

「それでさー、おもしろいのがねー? 山センのギャグに誰も反応しなかったの! あはははは!」

「ウケるあははははは! かわいそー!」

「そうなのまじでかわいそうで逆に申し訳なくなっちゃってさ、品田を肘でこうやって、こうやって小突いたんだよね、ね品田」

「んあっ?」


 その話の流れでなぜ俺に。井村の肘につつかれ、メロンクリームソーダを飲む手を止める。

 サイゼでの一幕。

 放課後だ。


「あの時、品田に教科書見せてあげてたじゃん? 机くっつけてたから、肘が当てやすかったんだよね。で、小突いてさ、『おい笑ってやれよ~!』って私がささやいたらさ品田なにしたと思う?」


 ああ、あの時か。俺はクソ寒いギャグにしらけた教室で、山センがあまりに可哀想だったので、山センと同レベルのゴミみたいなギャグを放ったのだ。


「山セン以下のガチでゴミ未満のギャグ言い出してさーもうまじサイアクだったのー!」

「そこまで言うことなくないか?」

「だって、『傘を差してあげたいですね。しいたけだけに……』って何だよぉー! ゴミ処理場に帰れってまじ! あははは!」

「おまえな。ゴミ処理場は社会に不可欠な存在なんだぞ」

「そこかよ!? あははははは!」

「あははは! いやーにしてもいむりんと品田くん、仲良いよね」


 佐々木がミラノ風ドリアのスプーンをふらふらさせながら向けてくる。


「えー? そぉかなー」

「付き合ってんの?」

「は? ささきん、まじありえない」

「ごめんてごめんて! タバスコを持つな! 中身をシェイクして威圧するな!」

「品田となんてありえないから! ねー、品田ー」

「ねー」

「やっぱ付き合ってんだろ」

「ささきん、死ぬ?」

「俺は付き合ってもいいけどな」


 井村が固まった。

 ……のも束の間。

 スプーンを持ったかと思うとタバスコをそこに溜め始める。


「何やってんの井村」

「品田オラッ飲めやッ!」

「うわああああやめろやめろやめろやめろ」

「いむりんさすがにそれはやばいから! 死ぬから!」

「あかんやつやって井村! あかんあかんあか」


 赤――――


「ウッヴァ!!!!!ヴォエ!!!!!!!!!!」

「ああああまじで飲ませやがった! 大丈夫品田くん!?」

「ヴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「へーんっ、制裁だよ制裁」

「ヴヴィア!!!!!!!!!!!!」

「ちょ、いむりん、やばいんじゃないこれ。品田くんって辛いの得意だった?」

「苦手って言ってたけど」

「ヴ!!!!!!!!!オン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「え、大げさすぎない? タバスコってそんな辛いの?」

「いむりんタバスコ舐めたことある?」

「ないかも」

「ミ゜」


 俺は床に倒れた。


「え……待って。ほんとに? ご、ごめん……」

「ウ、ヴォ」

「だい……大丈夫? ねえ、品田、ねえって」

「オ」

「ねえごめん! ごめんってねえ! ねえ、待ってほんとに?」

「ュ」

「ねえごめんなさい!」


 井村の悲鳴に近い謝罪。俺は、大丈夫だとアピールしようとして、実際大丈夫じゃないので奇声しか出せない。井村は泣きそうだ。というか涙目だ。


「ねえ、ほんとに……うぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……! か、カルピスあるよ? 飲める?」

「ノ、ム」

「はい私のカルピス、飲んで!」


 俺は井村にコップからカルピスウォーターを飲まされて気管に入りそうになり、吐いた。


「ウッヴッフォア!!!!!」

「嫌っ嫌ぁっ! ごめんなさいごめんなさい! 違うのそんなつもりじゃなくて! ……ほんとにっ……知らなかったの! タバスコそんな辛いの知らなくて!」

「ヴホッガホ」

「いやっ、やだよぉっ、ごめんね品田、ねえ……ごめんね……ぅぅ……」


「私そんなんじゃなくて……ごめんなさい……ごめんなさい……」


「ごめんね、ね……? ごめん……ねえ、許して、ねえ……」


「ごめん……」


「私、いつも迷惑かけてばっかりかも……」


「ごめんね……ほんとごめんね……」


「……ぅう……ごめんん……」


「ねえ……」


「わ……私……私も……」


「私もっ、タバスコ、飲む!」


「だ、だから許して……ごめんね……? 私も飲むから……」


「……え? ……と、止めなくていいよ……品田だけにつらい思いさせない……」


「えっ? 大丈夫に……なってきたの? ほんとに? ほんとのほんと? もう辛くない? ほんと?」


「ほんと……? あ……」


「よ……」


「よかったぁ……っ」


「ねえ、ごめんね……ごめん……もうしない……絶対しないから……」


「……うん。しないよ……」


「……えへ。何それ。タバスコは健康に良いから大丈夫って……もう……」


「ばか。」








「確定で付き合ってんだろ」

「ねえささきん、元はと言えばあんたのせいじゃない?」

「なぜそうなる~?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女の子の過失で傷つけられてただただめちゃめちゃに謝られたい かぎろ @kagiro_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ