第2話
わたしは典型的な一重瞼を過去最高レベルで見開いて、まじまじとシンジャ様を見た。
シンジャ様は、日本人形を萌えキャラ化したかのような文句なしの和風美少女だ。いつも着物を着ていて、まっしろい肌にまっすぐな黒髪、ちいさくて赤いくちびる。そのくせ目だけはぱっちりと大きくて、嘘みたいに長いまつげがぴんと天を向いてみっちり生えそろっている。ああこのひとにはアイプチなんて永遠に必要ないんだろうな、って思う。
まあ、このひとは、
わたしの物心ついた頃から、シンジャ様の外見はまったく変わっていない。それだけなら脅威的な若づくりと考えられなくもないけれど、わたしの母が子供の時からずっと同じ姿をしているというので、これはもう疑いようがない。シンジャ様は人間ではないナニカなのだ。
守護霊なのかお化けなのか、死神なのか天使なのかもわからないけれど、とにかくシンジャ様は、ずっとわたしのそばをうろちょろしている。
ついでに言うとその姿はわたしと母にしか見えなくて、その声もわたしと母にしか聞こえない。そのくせ、こちらから話しかけてもほとんどは無視される。どうしてわたしにくっついているんだろうって、ずっと謎に思っていた。
「魂って、何?」
思わずわたしがつぶやくと、シンジャ様は呆れたように目を細めてみせた。そうそう、シンジャ様は結構わたしに対して辛辣だ。当たりがきついというか、あまり優しいひとではない。
「そんなことも知らないのか」
「知ってるわよ、魂が何かくらい、でも。おばあちゃんの魂なんて、どうして、こんなのに入ってるの」
何かのたとえ話? そうだよね? と思いたかったけど、違った。
「私が閉じ込めた。見失わないように」
その言葉に、足首についた鈴がずんと急に重たくなったように感じた。
わたしはそろそろと手を伸ばし、手のひらで押さえるように鈴に触れた。閉じ込められたというおばあちゃんの魂をいたわるように、あるいは、シンジャ様の視線からかばうかのように。
「……どうしてそんなひどいことをするわけ? 魂を閉じ込めるなんて、そんな、かわいそう」
「ひどいのはあれの方だよ。私をのこして勝手に死んだ」
シンジャ様が目を伏せる。長いまつげが頬にまで影を落として、艷やかな闇色の瞳がさらに濃さを増した気がした。
「私は、許さないって言ったのに」
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