魂、重たくって

二枚貝

第1話

「ねえ、このなか、何が入ってるの」


 組んだ右足をぶらぶらと揺らし、足首についた鈴を見せつけるようにして、訊いた。物心ついた時にはとっくに括りつけられたそれは、見た目は瀟洒な細い金の輪なのだが、アンクレットというおしゃれな名ではなく足枷と呼びたくなるような代物。女子高生の制服と紺ソには、マッチしているのかいないのか、微妙なところだ。

 シンジャ様は、わたしにこれを与えた張本人は、ちらと一瞥をくれただけで、すぐに手許の本へ視線を戻した。しばらく待ったけれど沈黙が破られることはなかった。


「無視しないでよ」

「知る必要はないよ。きみが死ぬまでそれは外れない。知ったところで、変わらない」

 このひとは昔から、わたしの顔をろくに見ない。

「変わらないなら、教えてくれてもいいでしょ。勝手にこんなものをひとに嵌めておいて、理由も言わないつもり?」


 もう一度、シンジャ様が顔を向けてきた。やっぱりわたしの顔は見なくて、足首をじっと見つめている。

 わたしは貧乏ゆすりみたいに足を揺らしまくる。カラカラカラカラ。どこか乾いた高い音が響く。

「お、し、え、て」

「…………………………、たましい」

「は?」

「だから、魂」

 ちいさなくちびるが、なんでもないことのように、その言葉を吐き出す。




「あなたのおばあさまの、魂」



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