044:犠牲者一人……

「 ………そろそろ、かな? 」


スッカリ眠りから覚めた頭で計画を入念に確認しながらも、ベット脇に置かれた備え付けの目覚まし時計を目に私の心臓は高鳴り続けている。


ウィルキーを出てもう二日も経ってしまっているだなんて信じられない。


けど、初めから変わらないこの旅での私の真の目的。


それは、カイルに……カイルに、ちゃんと想いを告白する事!!


だ、だだ、大好きだって!!告白する!!!


森での夜は失敗しちゃったけど、あいつに私の事を少しでも意識させて絶好のタイミングで告白アタックするのが私の最終目的!!


しかしそんな覚悟を持ちつつも、早る心を落ち着かせる事は叶わず、頭の中で「キャー」と悲鳴を上げては先程からずっとベットでモゾモゾと呻き転げてしまっているのが現状だ。


改めて考えても、今からやろうとしてる事が恥ずかしすぎて顔から火が出そうなのだ……だけど、カイルあのバカに、私もちゃんとした魅力ある異性だって認識させないと、いつまで経ってもだなんて……嫌だ


それはそれで、ちょっとは、嬉しいけど……

ちゃんと女の子としても、見て欲しい……なんて


転げ回っている身体をピタッと止めて、朝一番に目を覚ましてから何度となく確認した布団に隠した身体をもう一度まじまじと見てみる。


いつもは今が雪の季節という事もあり、モコモコのあったかいモノを身に付けているのだけど、今日は……この日の為に買ったヒラヒラのスカートタイプの寝巻き!!!


上もちゃんと大事な所は隠れてるけど薄らと肌が透けて見えるような下と一体型のワンピースみたいな……おお、大人の女性が着るようなやつなのだ!!!


昨日は夕食での件もあってこの作戦の実行は出来ないかと思ってたけど、なんとか漕ぎ着けた。ちゃんとカイルに「明日の朝起こしてくれる?」って話しかけれたし、了承も貰えたッッ


だからアイツがもう少しして私を起こしに来たら、ワザと寝たフリを続けて……結果

「お前、いい加減起きろって!!」と痺れを切らした標的が布団を掻っ攫いうと共に、現れたこの大人な……その、い、色気のある私こと、ルイス・フォーゲルンの姿を直視するっていうドキドキ作戦!!


大胆に攻めた戦略だ、これなら鈍感馬鹿なカイルでも私を少しは意識してくれるハズッッ!!


旅の出発前に心配から院長先生に相談したら

『あら、なら折角ですし下着オンリーで行きましょう』なんて笑顔で言われたけど、それは絶対無理!!


そんなの出来っこないッッ恥ずかしい。無理無理ッッ絶ッッッ対ダメ!!!


『私も若い頃はそうやってグイグイ攻めてたのよ』ってあんまり聞きたくなかったよ、先生!!


そうしてまた頭の中で「キャー」と悲鳴をあげては転げ回る。

作戦決行の時は刻一刻と近付きつつあった………ーーーー




「 これは罠だッッ 」


これが、俺ことカイル・ダルチが幼馴染が眠る高級ホテルの一室と遜色ないような乗車している寝台列車の寝室へ足を踏み入れてから口にした第一声である。


昨夜、また朝起こしてくれと頼まれたから仕方なくこうして来てやったものの……いや、起きてるじゃん。


ルイスばっちり起きてるよ!!


部屋に入ってすぐに分かるくらい鼻息は荒いうえに、遠目でも分かるほどに被ってる布団が小刻みに震え続けているのだ。

これで起きてないなら、絶対病院連れて行く。


「 あの〜……ルイスさん?おはようございます。起きてますよね〜? 」


試しに部屋に入ってすぐのその場から声をかけてみる。


「 ………う、うみゅ…ね、寝てるよ〜 」


「 撤退ッッ!!!! 」


歯切りの良い発声と共に踵を返し、部屋を出ようとドアノブに手を伸ばす。

明らかに俺に対して何かを仕掛けようとしているのは明白!!ならば、逃走あるのみッ!!


「 ね、寝〜てるよ〜〜 」


「 なッ、なにィィ!!? 」


瞬間、俺の片足に巻きつく植物の蔦たち。


いや待て。この力は確実にルイスの森心術グランドローグによるものだろう?


けどあれって植物と対話して力を借りる能力のはずだ……となると、予め成長前の種を持参していたのか知らないが、なんてつまらないことを頼み込んでるんだこの幼馴染バカは……いや、ホントウチの身内がすみません。植物さん。


呆れた眼で未だベットで寝たふりを続けてるルイスを見てみると、明らかに力を使っているのが分かる程にその艶やかな金のショートヘアーは発光している。


「 ルイス、離しなさい。起きてるのは分かってるんだ 」


「 寝〜てる〜 」


「 寝てないでしょ〜 」


「 寝〜て〜〜る〜の〜〜 」


とうとう「の〜」になっちゃったよ。どうすれば正解だこれ?


足に絡まった蔦はピッタリこの寝室の長さに調整されており、室内を歩く事は出来るけど外には出れないようにされている。


状況を整理するに、この幼馴染バカはどうあっても俺に起こして欲しい……いや、枕元に来て欲しいのかそれとも……布団か?


わざとらしく目を瞑っていても、何故か顔が真っ赤になっているルイスをこの場から観察してみると、全身を覆っている掛け布団は変わらず震えている、というよりモゾモゾとしている。つまりそれこそが……


「 ……罠だな 」


何年一緒に過ごしてきてると思っているんだ?ルイス……お前の魂胆は見えたぞ!!


しかし……となると、どう現状を攻略したものか


「 ね、寝〜てるよ〜〜 」


ダメ押しとばかりに下手な寝言、のつもりであろう戯言を繰り返す幼馴染を無視し作戦を練る。


「 あの〜……寝〜てるよ〜〜 」


ルイスが羽織ってる布団の中に何かが仕掛けられているのは確実だ。つまり、不用意に近付き捲るのは危険すぎる……


「 ね、寝〜てるんだよ〜〜〜 」


この状況においては气流力は意味を成さないだろう。なら、どうする?どういう行動を取るのが正解だ?


「 寝〜てるから〜〜起こして、ほ、欲しいな〜〜 」


あっ、そういえば今日の朝ご飯はどうなるんだろう?昨夜の事があるからちゃんと食べれたらいいんだけど……


「 ………カイル? 」


「 朝食はパンとスープが食べたい 」


コーヒーとかもあればもう最高だねッ!!


「 あぁぁ、もう!!!さっさと布団捲れバカァァァ!!! 」


「 へぇあッ!!? 」


瞬間、我慢が限界に達したらしい幼馴染が勢いよくベットから飛び降りると共に、全身を覆っていた布団をマントを払い除けるかのように放り上げる。


当然そんな突然かつ、予想外の行動に視線は誘導され思わず奇声も飛び出てしまうが……それよりも!!?


ばっ、なな、なんて格好してるんだよ!!ハレンチ!!!


咄嗟に顔を両手で覆い隠し「キャー」と悲鳴を上げてしまう。


「 ばば、バカはお前だァァァ!!!なな、なんてて、格好してんだよッッ!?いつものモコモコお子様ふんわりパジャマはどうしたァァァ!!? 」


布団が空を舞う事によって一瞬露わになった幼馴染の全身。それが身に付けていたのは、前に院で見たようなごく一般的な寝巻きとは違う、一言で表現するなら……セクシーというやつであったのだ。


それは昔からずっと一緒にいる幼馴染に対して感じて良いような思考ではないのだろうが、全身ヒラヒラの透き通った薄い白の布地に、ちょっと風が吹いただけで……何がとは言わないけど見えちゃいそうな非常に短いハレンチなスカート。


そんな予想だにしていなかった不意打ちに今の俺の心臓は肋骨を突き破って身体から飛び出してしまうのではないかと思える程に脈打ってしまっている。


冗談にしてもやりすぎだ!!


「 あのなぁぁ!!いくら長い仲だからってやっていい冗談とそうじゃないのくらいあるだろう!!分かってくださいッッこっちは男の子なんですよ!!? 」


顔を隠したのをそのままに慌てて振り返る。しかし、一瞬でも目にしてしまったルイスのあの姿が脳裏に焼き付いて離れない。

前よりもハッキリと見えてしまった白く細い艶のある肌の全身に、スカートから伸びる……理性をしっかり保ってなければ手を伸ばして触ってしまいそうになる程、引き寄せられる魅力的な………脚、太腿。

それに胸やお腹なんかも……あぁぁもう!!とにかく全部エッチだった!!!


もう全部が魅惑的すぎて……旅に出ての初めの夜に起きた森での体験を……あの反射的にルイスを抱きしめたくなってしまった、その唇を奪いたくなってしまった思春期特有のモノなのか、それとも拗らせた童貞心からのものだったのか、そんなどうしようもない衝動を強制的に思い出してしまう。


しかし、深呼吸を繰り返し再燃したそれらを必死に鎮めて、どうにか心の冷静を努める。相手は……異性とはいえ幼馴染だぞ?昔から一緒にいる…家族みたいな存在なんだ。


そうして頑張ってはいるが、どうしても隠しきれない動揺。そんなこちらの事情などお構い無しとばかりに、ルイスの少し震えた口調が俺の背へと向けられる。


「 あの……これはね?……そ、そうッ!!あの、ウィルキーを出て進学したらいつまでもあんなパジャマじゃダメかなって思ったの……か、カイルなら色々詳しいから意見聞いてみたいかなってッッ!! 」


「 進学と寝巻きは関係ないだろう。……それこそ、と、特定の相手に見せるとかじゃなけりゃ、そんな気遣い不要だっての!!…… 」


雰囲気的に本人もこの状況がかなり恥ずかしいのだろう、緊張の籠った声色で向けられた質問。対して俺はその返答を一息で吐き切るつもりだった、けど気がつくとそれは歯切りの悪いものになってしまっていた。


自分が口に出した言葉たちが何故か重りのように心にのしかかる。


特定の相手に見せる、か……ルイスにも、そんな相手が出来るのかな?


………って何考えてんだ俺はッ!!!あぁぁ、もうッ色々と訳わからねぇぇぇ!!?


「 あの……カイル?に、似合ってた……かな? 」


「 ………綺麗だったよ 」


何口走ってるんだよ、俺ェェェェ!!!?


言葉に詰まっていたはずなのに無意識に出てしまった自分の無意識の声に驚愕してしまう。


もう頭の中はパニック一色で、これならまだ金級ゴールドクラスの魔物と戦っていたほうがマシだ。その方が今よりも断然、冷静を保つことが出来るだろう。


……ほんと、一体なんなんだ。ここ最近のルイスの心が行動がもう全く分からない。

本人は離れ離れになる焦りからといっていたが、本当にそれだけが原因なのか?


先程からずっと胸は謎に、ズキリと痛く苦しい……そして熱い……


俺の素っ気ないような返事に「ふふふ、良かった」と微笑を洩らしている後ろにいる幼馴染が……愛おしいと感じしてしまう。けど、このという感情は可愛らしい動物たちに向けるそれとは違う気もする。ならこの気持ちは?………分からん。


そんなやり取りを最後に、室内に漂う沈黙。すると不意に「コンコン」というノックの後、返事を待たずして扉が音を立てて開かれ先程、俺が寝室に来る前まで寝ぼけ眼であったリースが現れては、目が合う。


「 おぉぉい、カイル。スタッフさんが朝食の事で話したい事が、ある、、って…… 」


「 ……… 」


何も言うな、分かるだろう……相棒!!?


「 ………… 」


しっかりと重なり合った視線で強く心に訴えかける………


「 あ〜ら〜〜お邪魔しちゃったかしら〜〜ごめんなさいね〜まぁまぁ、元気な息子さんでらっしゃいますね〜〜ん〜ご立派ッッ!!! 」


「 リース…お前を殺す 」


よろしい、ならば戦争だッッ俺の下部見てニヤニヤするんじゃねぇぇ馬鹿野郎!!?


とりあえず、全身全霊をかけて俺は渾身の蹴りを目の前の敵の股間弱点に向けて解き放つのであった………ーー

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