悲劇の元凶
茜は、言葉を忘れていた。息すらも忘れていた。何も考えられなかった。気を失いそうになった。
……しかし、ハッとあることに気がついて、一気に目が覚めた。
串刺し死体の様子が変なのだ。これだけ無残に傷つけられているのに、血が一滴も流れていない。どういうことだ。
すると、また別のことに気がついて、今度は体中に寛喜の電流がほとばしった。
茜は、晴加の手を握っていた。晴加は、今さっき最後の口づけをした姿勢のまま茜に寄りかかっていたのだ。晴加は生きていた。
実に奇妙な現象が起きている。茜の視界に、生きた晴加と串刺しの晴加が同時に写っている。教会の中に晴加が二人いるのだ。
この不可思議な現象の理由は、すぐにわかる。
魔導ポリスが「クソッ!」といって、串刺し晴加をなぎ払った。晴加の体は薔薇の茎からすっぽりと抜けて、教会の床に跳ねて転がった。やっぱり血の一滴も飛び散らなかった。やがて、グロテスクな格好で横たわる晴加の体がボーッと光り始め、霧みたいに霞んでいき、線香花火のような小さなスパークがパチパチとひらめいた。そして、消える寸前のロウソクの火のようにパタパタと明滅したかと思うと、煙となって空気の中に消えた。
「プロジェクション・デコイか」
兵士が言うと、
「正解」
と、誰かの声が教会の入口から聞こえた。入口には黒いローブに身を包んだ何者かが立っていた。
兵隊は、背中の方の入口から聞こえてくる声が、誰のものなのかわかっているらしい。振り向くことなく黒いローブに話しかけた。
「プロジェクション・デコイは下級の電気属性魔法。空気中の電子を操作して発光させ、ニセのビジョンを作り出す目くらまし」
「その通り。自分の周囲に発生させれば変装として使えるし、今のように相手に的を外させる囮(デコイ)としても使える」
答えた黒ローブの言い方は、皮肉めいていた。お前は下級魔法如きに欺かれたんだぞ、とでも言いたげだった。それが兵隊には癪だったようで、彼は、不機嫌に言葉を返した。
「なにもヒーロー漫画みたいに、ギリギリまでひっぱって見せ場を膨らませる必要もなかったろうに。出てくるならさっさと出てこい。そのほうが手短に済む」
言い切るか否かのうちに、兵隊は身を翻し、アサシン・ローズを放った。緑のいばらのムチが、黒ローブを襲った。鋭い切っ先は、あっけなくローブを捉えた。今度は容赦がなかった。グルグル巻きになどせずに正面から直接串刺しにした、はずだった。しかし、黒ローブはまたしても空中で線香花火のパチパチとともに消え失せた。電気魔法のデコイだ。兵隊は同じ技を同じ技で躱されたのだ。背後から嘲笑う声が聞こえた。
「お前は学習しない奴か?」
振り返ると黒ローブが立っていた。入口から瞬間移動した黒ローブは、いまは茜と晴加を守るように祭壇の方に立っている。
ローブはフードをとった。中から出てきたのは美しい金色の髪のアレクサンドラの顔だった。凛々しい顔立ち。
「学習しない? フン、四大魔導と言えども舐めすぎは禁物だ」
兵隊は、兜の隙間から見える目でニヤリと笑った。まだ奥の手が残っているサインだ。
「串刺しになれ!」
兵隊が叫ぶと、アレクサンドの足元が、ニュッと盛り上がった。間髪入れずに、地面が放射状に割れ、アサシン・ローズの切っ先が飛び出て、アレクサンドラを串刺しにしてそのまま天井に突き刺さった。天井にめり込んだ彼女は足だけが見えていて、ぶらんぶらんと振り子運動をしていた。兵隊の先ほどの魔法は不発に見えたが、そうではなかった。的がデコイだと見抜いていた。背後に転送移動することも読んでいた。だから、切っ先を地面に潜り込ませ、地中を這って足元に忍び寄らせ、タイミングをはかって突き出したのだ。兵士の戦術はみごとに成功した。
だが、不思議なことに、またしてもアレクサンドラの声が聞こえた。
「舐めているのはお前の方だろうな。お前は先ほどプロジェクション・デコイは下級の目くらましだと言ったが、それは間違いだ。たとえ魔法が下級でも、使い手のレベルで魔法の形態が変わる」
兵隊には予想外だったようで、少しうろたえた。声の出処がわからない。あちこちをキョロキョロと見回した。が、それが隙をつくった。天井からトゲが飛んできて、兵隊の肩を貫いた。
彼は肩を押さえて天井を睨んだ。すると、ギョッとした目が兜の隙間に見えた。天井に百人のアレクサンドラがいたのだ。そして、全員がレンズを構え、兵隊を狙っている。
「なんだ、この魔法は」
兵隊は唖然としている。
「お前がさっき下級だと見下した魔法だよ」
「馬鹿な! プロジェクション・デコイを一度にこんなに出せるわけが……」
「ないな、普通は。だが、これが四大魔導だ。これで驚くのは早いぞ」
百のアレクサンドラが言うと、その内のひとりが、レンズからトゲを放った。兵士は飛んでそれを躱した。しかし、その落下点を狙って別のデコイがトゲを放った。間一髪で兵隊はよけたが、バランスを保つ余裕はなかった。よろめいたところを、別のデコイが仕留めた。放たれたトゲは、兵士の兜の隙間に見える眼球に、正確に飛び込む、かと思われたが、その寸前の空中で、トゲはピタリと止まった。アレクサンドラは手加減したのだ。
「中級クラスなら、デコイを出現させることは出来ても、今のようにデコイに魔法攻撃をさせることは出来ない」
兵士は、格の違いを突きつけられて、膝を落とした。戦意を失くしたのだろう。
百のアレクサンドラが、次々に線香花火のスパークを散らして消滅していき、天井にはひとりもいなくなった。
気が付けば、また茜たちの前に本体が立っていた。
教会は静かになり、これで戦いは終わったかに思われたが、そうは行かない。アレクサンドラたちの魔法の連発をオセロが感知したようだ。そして、アレクサンドラが姿を現したと勘ぐったのかもしれない。教会に、転送魔法の予兆を知らせる空気の渦が、あちこちで五つ現れた。
ピカピカピカッ!と閃光が走って、次々に新手の魔導士が現れた。ひ弱な地球人を相手にした魔導ポリスではなかった。ゲオルク上級魔導議員が統括する魔導公安部隊の精鋭だ。
ある魔導士が持つ杖の先端には、天空を羽ばたく大天使の黄金の翼がはためいていて、さらにその先には、自ら発光しているかのように鮮やかな青いクリスタルが煌めいている。別の魔導士は、イカ墨と鶏の血を使って染めたような、二色使いの魔女のウェディンドレスを纏い、頭には、地獄の女神の後光を思わせる装飾の冠をかぶり、さらに別の魔導士は、燃え盛る不死鳥の化身のような巨大な剣を手に持ち、背中には、触れることさえ叶わぬような雷神の剣と、永久凍土の飴細工のような氷の剣を背負っている。
どれこれも、戦うための出で立ちであり、皆が皆、戦うための光りを目にたたえている。
「上級が五人。ここでドンパチすれば、ここにいる地球人たちが無事じゃない。ここは下がるが懸命」
アレクサンドラは頭の中でそう判断した。彼女は、新手の魔導士たちが攻撃を始める前に、すばやく茜のそばに駆け寄った。
「すまんが君は定員オーバーだ」
と晴加に言い残して、茜を抱いて転送魔法を使った。ストロボが閃いたかと思うと、二人の姿が、吹き消えたロウソクの火のように影もなく消えた。
その直後、取り残された晴加の首筋に、刃物が突きつけられた。
アレクサンドラは、茜を連れて、別のどこだかわからない場所まで魔法で飛んできた。山奥の小屋のような場所だった。ボロボロのドレス姿の茜は、キョトンとしながら辺りを見回した。そして、アレクサンドラがいることに気づいてギョッとした。おそろしいテロリストだと聞かされている奴が目の前にいるのだ。
しかし、直前の記憶を辿ってみて、どうやら彼女に助けられたようだとわかり、混乱した。悪いテロリストがどうして?
茜は、晴加がいないことに気づいて慌てた。アレクサンドにたずねた。
「ねぇ、晴加は?」
「人間の転送魔法は複雑で難しい。君しか運べなかった。すまん」
茜は、あんな場所に置き去りにしたら、彼女がどうなるかが考えなくてもわかった。今頃、死刑が執行されているんじゃないのか……。
「ねぇ、お願い。今すぐ晴加を助けに行って!」
「手遅れだ」
アレクサンドラがそっけなく即答した。
「手遅れって、どういう意味」
「おそらく彼女はもう……」
茜は、その先を聞くのがこわかった。アレクサンドラの声をかき消すように叫んだ。目にはジュワッと涙がでた。
「お願い! いますぐに助けに行って!」
アレクサンドラは表情を変えない。飄々としている。もう、晴加の命をあきらめているのか? 彼女は薄情なのか? いや、そうではないようだ。
「落ち着いてよく聞け。おそらく彼女はもう連れ去られた」
殺されたのではないらしい。しかし、晴加の身が危険に晒されていることに変わりない。
「晴加は助かるの?」
茜がたずねると、アレクサンドラはクスクスと笑いだした。
「呑気だな」
ニヒルな女魔導士の言っていることの意味がわからなかった。呑気? 何の事?
「助かるの?って、まるで他人の仕事みたいな言い方じゃないか。いっておくが、親友を助けるのは君の仕事だ。嫌でもそうなる」
そう言われて、茜はびっくりして聞き返した。
「どういう意味?」
アレクサンドラは、魔法で適当な服をこしらえて茜に手渡した。茜があまりにも可哀想な格好になっているのをみかねたのだろう。やさしい魔導士だ。
「着ながらでいいから、よく聞け」
アレクサンドラが、長い話を始めた。
「今、地球で何が起きているのかを聞かせてやる。君が親友を助けるためにも、知っておかねばならない内容だからな。ただし、あまりにも現実離れした話に聞こえるはずだから、心を柔軟にして欲しい。
詳しくは話さない。かいつまんで言うぞ。
むかしむかし、ここから遠く遠く離れたところに、魔導界と呼ばれる世界があった。そこに住む人たちはみな魔法使いで、魔法の力を使って生活していた。そして、その世界を束ねる一人の女王様がいた。彼女はもう年寄りになっていた。後継者を決めなければならなかった。候補者の若い女が二人いたが、やがてその内の一人が次期女王に決まった。しかし、その次期女王は、心が弱かった。もうひとりの候補者だった女を恐れた。落選した女のほうが、魔法が上手だったからだ。だから、せっかく勝ち取った女王の座を奪い返されるのではないかと恐れた。しかしそれは妄想だった。落選者は、真摯に現実を受け入れ、王座奪還など一ミリも考えていなかった。だが、弱者の妄想は暴走した。やがて老年の女王が亡くなり、次期女王が正式に王の座を引き継ぐと、すぐに落選した女を魔導界から追放した。星の外に追い出したのだ。しかし、そんなことをされても落選の女は腐らず、新天地を求めて宇宙を彷徨った。そして、地球といういい星を見つけて、そこに住むことにした。新しいお家だ。
彼女は地球で子孫を増やし、あたらしい魔法人類の世界を築き上げた。地球はとてもとても発展した。すると、その輝かしい噂が、魔導界の新女王の耳に入った。また、弱者の妄想が暴走した。このまま地球が発展し続ければ、いつかは落選の女が力を持つようになり、魔導界を追い出したことを恨んで復讐に来るんじゃないかと恐れた。むろん、落選者はそんなことは一ミリも考えなかった。魔導界の新女王のような弱い人間ではなかった。しかし、新女王の暴走はとまらず、ついには、兵隊を地球に送り込み、魔法を封じ込める呪いをかけてしまった。
地球人は全員、魔法を失ってしまった。落選の女も、魔法が使えなくなった。しかし、彼女はめげずに、呪いをとく方法を探した。そして、そのための道具を発明した。その道具を、すぐに使ってしまっては、また魔導界から呪いをかけられてしまうので、地球にまた魔法の花をさかせるのにふさわしい時期がくるときまで、その道具を隠すことにした」
アレクサンドラはここで話を切った。茜は、服を着替え終えていたが、キョトンとしていた。当然だろう。おとぎ話ならありそうな話でも、それが現実と言われてもすぐに飲み込む者などいない。彼女はとりあえずたずねた。
「私達の先祖は、もともとは魔導界に住んでいたけど、意地悪な女王様に住処と魔法を奪われたってこと?」
「そんなところだ」
「でも、どうしてこんな侵略行為をするの? 別にわたしたちが反乱を起こしたわけじゃないのに。魔法を封じられたままおとなしく生きていたのに」
「きっかけはこれだ」
アレクサンドラは、懐から黄金の杖・ジェミネーターを取り出して茜に見せた。杖の先には、ソフトボール大の大きな美しい水晶がはまっていた。茜は過去に一度、杖を見せられたことがあった。しかし、あらためてそれを見つめると、不思議と懐かしさを覚えるのであった。
「これが呪いを解く道具だ。君たちが自分らしさを取り戻すきっかけになる魔法の杖だ」
「自分らしさ……」
茜は口の中でおもわずつぶやいた。新憲法がやってきて以来、口にすることすらなかった言葉だ。システムに支配され、システムに従う方法の模索に明け暮れ、考えることすら忘れていた言葉だ。
「こんなものが存在していることが魔導界に知られ始めたのは、つい最近のことだ。今の魔導界の女王は、さっきの昔話に出てきた新女王の末裔だ。だから、臆病なメンタルはばっちり引き継いでいる。やつはこの杖を恐れた。地球人が魔法を取り戻すのを予感してビビった。だから、こっちの世界にたくさんの魔導士をもぐりこませ、地球人よりも早くこれを発見して葬るつもりだった。だが、私がそれを邪魔した。
数年前、エジプトのピラミッドで起きた怪事件が地球人たちのあいでニュースになっただろう?」
茜はそのニュースを記憶していた。当時、世界中でかなり騒がれたからだ。ピラミッドの地下にあいた謎の穴。不可解な感電死体。消えた二人の調査員。
「その事件のときに密かに発見されていたのがこれだ。失踪した二人の内の一人は私だ。私がエジプトのピラミッドの地下空洞の情報を得たのは魔導界の連中とほぼ同時だった。私は、地球人にも魔導界にも正体がばれないような方法で変装し、調査員に化けてピラミッドを調べた。この杖は、巧妙な手段で隠されていた。地球人にも魔導界にも簡単に発見されないような魔法仕掛けでうまく封印されていた。しかし、長い歳月の果てに、その封印が解けたのが、ちょうどあの日だった。
私は杖を葬ることには反対だ。地球人には、魔法を取り戻させるのが正しいと思っていた。だから、杖を奴らから守った。結果的にはそれがオセロ計画の引き金になってしまったがな。君がこんな目に合わされるきっかけの半分は私が作ったのかもしれない。だが、私を恨まないで欲しい。オセロ計画はいずれ実行される運命にあった。それがちょっと早まっただけだ」
茜は、まだ飲み込めていない感じだ。理解が宙をふわふわと舞っているようだった。しかし、アレクサンドラはそんなのはお構いなしに話を進める。
「で、ここから先が、親友が助かるかどうかに関わる話になる。
魔導界はいま、この黄金の杖・ジェミネーターを血眼になって探している。そして、この杖によって地球人が魔法に目覚めることを阻止しようとやっきになっている。新世界憲法の目的もそれだ。魔導界は、才能を自覚し、それを磨く意思を持つものを押さえ込みたい。魔法は、そういう者ほど早く目覚める。だから、そういう者が力を失う支配構造を形成させるためにオセロ計画を実行したんだ。無能が美味しく息を吸い、有能が絶望していく。そうなれば、杖があっても覚醒の可能性を押さえ込める。
私は、地球のあちこちで宣伝活動をして、覚醒を促そうと試みたが、あまりうまくいかなった。覚醒の脈がありそうな地球人をたずねてスカウトしたが、オセロ計画の進行のせいでみな魔法に怯えていたから成功しなかった」
茜は、少し前にアレクサンドラに話しかけられたことを思い出した。読者も覚えているはずだ。晴加が指輪を受け取った日に、茜がひとりで路地を歩いていると、とつぜん黒ローブ姿のアレクサンドラが目の前に現れたことを。怖くなった茜はすぐに逃げたが、あれは、アレクサンドラが茜をスカウトしにきたのだ。
「魔導界の連中は、私のやろうとしていることを知っている。そして、それを何が何でも阻止しようとしている。さっき教会に現れた五人の魔導士を見たろ? あれはいわば魔導界の軍人たちだ。上級クラスの魔導軍人だ。あんなものを差し向けてくるほど、奴らはやっきになっている」
「どうやったら晴加を助けられるの?」
「相手はきっとこう考えているはずだ。『アレクサンドラは沙倉茜を覚醒させて魔導士にしようとしている』と。だから『沙倉茜を早期抹殺しなければならない』と。連中は、そのために、佐藤晴加を人質として利用するはずだ。覚醒した魔導士がどれほどの力を持っているのかは未知数だ。連中は用心に用心を重ねて準備してくるだろう。君と佐藤は深い絆で結ばれている。教会での君たちを見ていればそれがよくわかった。しかし、絆は力になると同時に弱点にもなる。魔導界はその弱点を利用しないわけがない」
「晴加の命が惜しければ、魔導士になるなと脅してくるってこと?」
アレクサンドラはうなづいた。
「ただし、断っても無駄だぜ。どうせ君たちを殺す気だからな」
「じゃあ、どうすればいいの」
フフッ。アレクサンドラは小さく笑った。
「答えはひとつしかないだろ。君が魔導士になって奴らを倒すんだよ」
茜は背筋が寒くなった。リッキド・ジェットで跳ね飛ばされたクラスメートの手首。空中で炭になった魔法少女。輪切りスライスされて地面に散らばった少女の破片。アサシン・ローズの血まみれのトゲと花びら。
残酷なものが脳裏でドバッと再生された。
「健全に築き上げて来たものを、努力を知らない奴に踏みにじられ、死を以てでしか誠を貫けない世の中。誠に背を向けて『生』に執着するものが支配するディストピア。そこから脱出するには力が必要だ。力がなければ、支配構造のピラミッドの外には出られない。そして、この杖が力のきっかけになる」
アレクサンドラの言葉は、茜の脳の残酷なフィードバックを薄めさせた。そして、別のものを思い浮かばせた。
気高く自害した父の炎のような目。そんな父から真の愛を受けた母の最後の笑顔。裏切りに耐えられなくなり、身を捨てて守ってくれた晴加。親愛なる人たちとの記憶が残酷な記憶を奥へ奥へと押し返し始めた。雪解けの季節のように、恐れに凍りついた胸の大地が溶け始めた。
どんなに世界のシステムが腐っても、魂の色だけは変わらない。汚れらない人間は、どんなに頑張っても汚れられないのだ。
茜は両親から同じ色の血を受け継いでいる。だから、アレクサンドラにこう答えたのは必然であろう。
「私、戦うわ。そして、必ず晴加を助ける」
茜はアレクサンドラに手を差し伸べた。四大魔導の女は、瞳に、水平線に燃える朝日のような光りをたたえながら、黄金の杖を茜に渡した。
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