悪夢のランキング

 ランクは、オセロによって計測された脳波からすでに決定されていた。

 ローブは、廊下側の先頭の席から、一人づつ順番にランクを告げはじめた。

 まずはじめの女子生徒の前に立って、レンズで覗いた。レンズの中に、黄色のBのアルファベットが浮かんだ。その文字は生徒にも見えた。

「よかったねぇ。君はBランクだ。大した不自由もないから安心しなさい」

 そういって、彼はパーソナルカードを渡した。黄色のカードだった。

「お金を払うときだけじゃなく、あらゆる場面で必要になるから無くしちゃだめだよ」

 ローブは次の席へ移った。次は気の弱そうな男子だった。彼もBだった。その後、数人Bが続き、その列の一番後ろの女子の番になった。レンズの中に初めてCの文字が浮かんだ。Cの文字を見たローブがニヤリと笑った。

「Cランクか。かわいそうに。ではまずはCランク用の服を渡そうね」

 パチンと指をならすと、折りたたまれた青い服が、空中にポンッと現れた。ローブはそれを女子生徒に渡した。

「さぁ、これに着替えたまえ」

 女子は恐る恐る服を広げると、キョトンとしてしまった。それは真っ青なつなぎ服だった。パンデミック映画に出てくる防護服のような服。

 真っ青な手袋。真っ青な靴。黄色の大きなバッテンマークのついた青いマスクが付属していた。実に奇妙な服だ。

「これを着るの?」

 と、女子は目で問うと、ローブはニコッと笑って、うん、とうなづいた。

 女子の脳裏に、さっきの血まみれの光景がフィードバックした。反抗する気持ちなんて起きなかった。おしゃれじゃない変な服だが、彼女は無言でそれに着替えた。

 手も含めて全身真っ青で、口に黄色い大きなバッテンがあり、可愛い目だけが露出していた。実に異様な格好だった。

「さっきも言ったが、Cランク者はAとBのいる前でしゃべってはいけないからね。気をつけるんだよ」  

 そういわれた女子は、陰鬱な顔でうつむいてしまった。

 それから次々にランクが言い渡された。

 BとCがランダムに続いた。Cを告げられた者はことごとく青ずくめにさせられていった。そして、茜の前の席の晴加の番になった。

 ローブのレンズに赤いCの文字が浮かんだ。

「さぁ着替えよう」

 ローブが服を渡した。晴加は黙って、泣きそうな目になりながら青いバッテンマスクをつけ、手袋をはめ、青いつなぎ服を着た。

 茜の番だ。ローブがレンズを覗き込んだ。屈折して拡大した目玉お化けが、ギョロッと茜を見つめた。黒目の中心に、血のように赤いCの文字が浮かんだ。

「君もCだね、学級委員長さん」

 茜の机にも青装束の一式が置かれた。彼女も瞬く間に青一色に染まっていった。

 その後もランク申告が続き、青い人が続出した。

 

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