アオの宝物
「ねえ、アオ、どうしたの?」
あたしは神殿の隅にうずくまっている、雷のアオに声をかけた。
「ニ、ニ、ニナちゃん……‼ な、なんでもないっ」
アオはあたしを見ると、変な顔をして、後ずさった。ここは天界。あたしは精霊のニナ。ちっちゃくてかわいくて、アオとは仲良し……なんだけど……。
「アオ、何か、探しているの?」
「う、ううん! ぼく、何も失くしてないよっ」
「何か、失くしたの?」
「失くしてないもん! ぼく、ニナちゃんからもらった宝物、失くしてないもん! ……うわあああああん」って、アオは泣いちゃった。
あたしはアオの顔にぴたっとはりついてよしよし……しようと思ったら、またぽんって大きくなっちゃった!
「ニナちゃん!」
アオは目を丸くして、あたしに抱きつく。あたしは泣ているアオをぎゅっと抱きしめた。泣いている子は、ぎゅってしなきゃね。
「アオ、なんで泣いてるの? 何を失くしたの? 宝物?」
「ニナちゃん、ごめんね」
アオは涙をぼろぼろ流しながら、言った。
「ぼく、ぼくね……」アオが何か言いかけたとき、「あー! めんどくさいやつが、またおっきくなってるー!」という声がした。
「レイ!」とあたしがふりかえって言うと、アオがすっごく嫌な顔をした。レイは地獄の小鬼なの。仕事でよく天界に来るのよ。でもって、あたしたちは三人とも仲良しなの! アオが嫌な顔したとしても、きっと仲良し。
「あ。お前、ほら、これ、お前のだろ?」
レイはそう言うと、透明で虹色にきらきら光る小さなものをアオに渡した。……あ、あれっ!
「ぼくの宝物……!」
アオはとてもたいせつそうにそれを受け取り、頬ずりしたあと、角にそっとしまった。
「それ……あたしの羽?」
「ニナちゃんがくれたから、ぼくの宝物なの」
「アオ」
「そんで、おれんちに忘れてったんだよ。ニナちゃんからもらったんだ~って見せびらかして」
「……ありがと、レイ。届けてくれて」
「おう」
あたしはレイのこともぎゅってした。ありがとっていう気持ちを込めて。
「あー! ニナちゃん、ずるいっ。ぼくもぼくもっ! レイにはだめっ」
しかたがないなあ。あたしはまたアオをぎゅってした。
その瞬間、あたしはもとの小さい姿に戻っちゃった! ので、レイの顔にぴたっとはりついた。
「ニナちゃん、くすぐったいよ。ふふ」
アオが笑って、よかった。
あたしたちは神殿の階段に座って、なんだかものすごくきれいな青空を眺めた。アオの笑顔みたいだった。
「ニナちゃんがね、幸運のお守りなのよって、くれたから嬉しくて。たいせつな羽」
「うん、アオもレイも大好きよ。来年、生え変わった羽はレイにあげるね!」
「だめだめ! ぜんぶ、ぼくの!」
「いらねーよ、ニナの羽なんて!」
「ニナちゃんの羽、いらないって言っちゃだめ!」
「どっちなんだよー」
あたしはアオとレイの顔の前をひらひらって飛びながら、このほわんとした気持ちが下界いっぱいに広がって、みんなみんな、青空の下で笑っているといいなと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます