星祭り
今夜は星祭り。
あたしは星祭りに備えて、ベルフラワーを三つ用意してもらったの。神さまにね。あたしは神さまのお気に入りの精霊、ニナ。手のひらサイズでかわいいのよ。あたしのベルフラワーは特別に小さくしてもらったの。嬉しいな。
星祭りの夜はベルフラワーに灯りをともして、ベルフラワーを持ってみんな集まるの。やさしい紫の灯りがいくつもいくつも集まって、すごくきれいなんだ。
今年の星祭りはね、小鬼のレイと雷のアオといっしょに行く約束をしているの。あたし、すっごく楽しみにしていたんだ! ベルフラワーに紫色の灯りをともして、群青の夜にお出かけするのよ。
あたしはアオの家に行った。レイはもうアオの家に来ているはずなんだよね。レイの家は地獄にあるんだけど、今日は天界の星祭りに来るから、アオの家に集合なんだ。
アオの家は天界の端っこにあった。アオは雷で、七代目のセント・エルモの修業のために天界に来ていた。アオが天界に来ていて、あたしはすっごく嬉しいの。あたし、アオ大好きなんだもん。もちろん、レイも大好き!
「アオー! レイ! ニナよ。星祭り、行こう!」
「ニナちゃん!」
ばたん! とドアが開いて、アオが出て来た。それからレイも。アオはあたしをとってもだいじそうに両手に抱えると、頭の上に乗せた。
「あのね、ベルフラワーは神殿に置いてあるのよ」
「じゃ、まず神殿に行こう」「行こうか」
薄暗くなってきた中をあたしたちは神殿に向かった。影が伸びて、なんかいい感じ。
神殿に着いてそれぞれベルフラワーを持ち、灯りをともした。やさしい紫色の灯り。
天界の中央広場に行く。天界のみんなが、ベルフラワーを持って集まって来ていた。
「きれいね」
「うん」
「きれいだね」
群青色に染まった中に紫の仄かな灯りがいくつもいくつも浮かんでいた。真昼の明るい天界も美しいけれど、群青色に仄かな紫の灯りが浮かんだ情景は、何か涙が出るような美しさがあった。
神さまが現れ、両手を高く上に揚げた。すると、天に、金色に輝く光が無数に輝いた。まるで天の川の中にいるよう。きらきらと輝く星は美しく瞬いて、歌をうたっていた。
神さまが両手を横に広げると、星ぼしは下界に流れるように落ちていった。希望の歌をうたいながら、踊るようにして。あたしたちはベルフラワーの灯りを掲げる。
祈る。
この星は希望。下に住まう人たちの、こころの灯り。しあわせの歌。
みんなみんな。こころがあったかくなりますように。
天の星が下に流れて行ったあと、最後にベルフラワーの灯りがぽわっと宙に浮いて、下に吸い込まれるように流れて行った。
全部の灯りが下界に降り注いで、天界は群青色のあたたかい暗さに包まれた。
「ねえ、ニナちゃん。ぼく、ニナちゃん、大好き。ここがあったかくなる」
アオは胸を手で押さえた。
「うん、あたしもアオ、大好き。レイも好きよ」
「おう」レイは少し照れたように笑った。
アオは今日はレイにつっかかったりせず、あたしを両手にそっと抱えただけだった。
下界は星ぼしとベルフラワーの灯りで満たされていて、まるで光が笑っているようだった。
光が瞬く。大好きだよしあわせだよだいすきだよ。ねえ、わらって?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます