落とし物

 あたしは天界に住む、精霊のニナ。ちっちゃくって、すっごくかわいいのよ。それに神さまのお気に入りなのよ。


 今日は友だちの、雷のアオとお散歩しているんだ。――ま、あたしは飛んでいるんだけど! アオはね、無口だけど、かわいいのよ。あたしのこと、一番にすきって言ってくれるから、すき!


 アオと散歩していたら、黄色く尖った三角錐を見つけちゃった。

「なんだろう、これ」

 あたしは近寄ってみた。あ、なんか、力を感じる。

「……ねえ、これって、もしかして……‼」

 あたしはアオの頭を見た。うん、似てる!

 青いくせ毛の中の二つの角。そっくり‼


「これって、もしかして、アオの三つ目の角じゃない?」


「……ぼくの角、二つだけだよ」ってアオはつぶやいていたけど、あたし、「やだやだ、つけてみて‼」って、アオの頭にくっつけた。アオは小さい声で「ニナちゃんが言うなら」って言ってくれたし、だいじょうぶ。


 角はピカリと光って、アオの二本の角の間にくっついた。

「やっぱり、アオの! ……少し、大きいけど」

「……ぼくのかなあ。ニナちゃんが言うなら、そうかなあ。……なんか、力がみなぎる感じ」

 そう言うと、アオは近くの小山に手をかざし――大きな炎を飛ばして、小山をぶっ飛ばした!


「すごい! アオ、すごいすごい! 炎出せるようになったんだね! 角のおかげかな?」

「うん、たぶん」

 あたしがアオの周りを、すごいすごいと飛び回って、アオが嬉しそうにしていたら、神さまがやってきた。あ、なんか怖い顔してる。


「ニナ」

「なあに、神さま」

「……まったく!」

 神さまはアオの頭に手をやり、さっきアオにくっつけた角をとった。

「あ、それ」

「これは小鬼の角だ」

「えっ。アオのじゃなくて?」


「おれの角!」

「あ、レイ!」

「お前、こっち来んなっ! ニナちゃんはぼくの!」

「ちげーよ、角の話だよっ」

「ニナちゃん!」


「いい加減にしなさい」

 神さまはアオとレイを引き離すと、レイの頭に角をくっつけた。あ、ほんと、レイのだ。レイはほっとした顔をしていた。そうだよね。あの角、地獄の門の鍵だしね。


「ねえねえ、炎、ばーんっての、やって?」

「やだよ。何言ってんだよ」

「ニナちゃん、ぼくがやってあげるよ。お前、角よこせ!」

「ちょ、やめろよ!」レイは角を隠して逃げて行った。


「つまんないなあ」

「ニナちゃん、ぼく、雷撃なら出せるよ。見る?」

「見るみるー!」

「やめなさい」

 神さまは溜め息をついて、アオの頭をぽんってやった。それから、あたしに「めっ!」ってやった。えへへ。でもおもしろいんだもん!


「ニナちゃん、すき」

「あたしもすきだよ」

 レイもすき。かわいいんだもん。

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