友だちの小鬼ちゃん
ここは天界。
あたしは神さまのお気に入りの精霊なのよ。
あたしはひらひらと可憐に飛びながら、蓮の花畑へ向かった。
「こら、ニナ」
「かみさま!」
ところが、あたしは神さまに摘み上げられた。ああん!
「お前、どこへ行くつもりだった?」
「えーとお。ちょっとまた地獄に行こうかなって思って」
「だめだ。苦情が来ている」
「えええ。でもお。小鬼ちゃんに挨拶したくて!」
「その小鬼から苦情が来ているのだ」
「ええええ」
あたしはバタバタして、神さまの手から抜け出そうとした。
「あ」
神さまの手から抜け出た拍子に、ぽーんと飛んで蓮の葉にぽとんと落ちた。
「ニナ!」
神さまの声が聞こえた。でも、もう遅いの。あたし、行ってきまーす!
あたしは蓮の葉の穴にひゅーんと落ちて行った。
蓮の葉の真ん中に穴をあけて、茎を通って地獄に行くのよ。
あ、あれ? こないだと違って、なんんか曲がったよ。なんか楽しい! あたしはそのまま滑り台みたいにして滑って行った。
ん? ここ、どこかな? 暗くて狭かったので、えいって手足を伸ばしたら、ぱかーんて割れて、あたしは眩しいところにぽんって出た。あれ、ここ、地獄じゃないのかな?
見ると、いっぱい青い実がなっていた。あたし、この中の一つに入っていたみたい。辺りを見渡すと、緑の葉が生き生きとしていて、なんだかうきうきしちゃう! あたしはふわりと高く上がって、若葉の中を飛んで遊んだ。
わーい、楽しいなっ。あ、ひよどりさん、こんにちは! ちょっと背中に乗っていいかな? え? ダメ? いいじゃんいいじゃん!
あたしはひよどりさんの背中に乗って、高く飛んだ。ひよどりさんは仕方がないなあって言いながら、町を巡ってくれた。えへ。
「ねえ、ニンゲンがいっぱいいるね!」
「だって、ここは人間界だもの。知らなかったの?」
「知らなかった! あたし小鬼ちゃんに会いに、地獄に行こうと思っていたのよ」
「小鬼ちゃん? 小鬼なら、いま、人間界に来ているよ」
「ほんと⁉ 小鬼ちゃんのところに連れて行って!」
ひよどりさんは「小鬼は仕事じゃないかなあ」ってつぶやきながら、連れて行ってくれた。小鬼ちゃんはシロツメクサの花畑の中を走っていた。
「あ、小鬼ちゃん!」
あたしはひよどりさんに「ありがとう!」って言ってひよどりさんから下りて、小鬼ちゃんのところへ飛んで行った。
「げ!」
小鬼ちゃんはあたしを見ると、いやな顔をした。失礼しちゃう! あん、やだ、逃げないで! あたしは小鬼ちゃんにしがみついた。
「離れろよ、仕事中なんだ」
「あたしね、また蓮の葉から来ちゃったの! でね、どうやって帰ろうかなって」
「知るかよ!」
「だからね、小鬼ちゃんについて地獄に行って、それからまた地獄の門から帰ろうと思って!」
小鬼ちゃんは角を抑えた。そうそう、小鬼ちゃんの角が地獄の門の鍵なんだよね!
あたしは小鬼ちゃんといっしょに、シロツメクサの花畑の隅にあった古い井戸に落っこちた。
わーい、小鬼ちゃんといっしょに地獄に行くよ!
小鬼ちゃんは「勘弁してくれよ」と角を抑えていたけど、うふ、友だちだもんね!
「小鬼ちゃん、名前はなんていうの? あたしはニナ!」
「……レイ」
「レイ、大好きよ!」
大好きって言っているのにレイは相変わらず角を抑えたまましかめツラをしていた。
失礼しちゃう!
いっしょに遊んでよ。大好きなお友だちだもん!
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