第27話 テレパシー

 海「唯愛さん!美華さん!大丈夫?」


あの男の人達がいなくなり、彼がこっちに駆けつけてくる。


 美華「はいっ...大丈夫です!唯愛?大丈夫?」

私は地ベタにしゃがみ込んでいて動けなかった。


 海「たまたま通りかかったら二人がいてね。よく見てみたら二人の様子がおかしかったから近づいて見たんだ」


 美華「あの人達、海さんの知り合いですか?」


 海「うん。今の職場の上司の人だよ」

彼の顔色が変わる。

私は聞いた。


 唯愛「海さん...あの人が言ってた事...」


そして彼が答える。


 海「そうなんだ。俺は毎日、あの人達に職場でパワハラを受けている。見せたくないけど、今全身アザだらけなんだ...」

その事を聞き、言葉が出てこなくなる私。


そしてそのアザが一瞬だけ見え、美華が言う。


 美華「ちょっと、それ...少しでも応急処置した方がいいですよ!私、ちょっと近くのドラッグストア行ってきます!唯愛のこと見ててください!」

そう言って彼女はこの場を離れた。


私は思う。


あの時、冷静にいて、強がっていたけど、きっと彼も怖かったはず。


それなのに私達を守ってくれた。


もしかしたら、あの後彼はもっと痛い目にあっていたかもしれない。


それに今は免れたけど、明日何されるかわからない。


それなのに...


それなのに...


 唯愛「どうして...どうして、もう会わないと言ったのに、守ってくれたんですか?」


すると彼が答えた。


 海「あの日から、ずっと唯愛さんの事が頭から離れなかった。会ったら駄目だと思えば思うほど...この感情が何か分からないが、唯愛さんに...唯愛さんに会いたいと思ったんだ」


彼らしい言い方。

その言葉を聞いた私は、今まで何か息詰まっていた感情が晴れきて笑みが溢れる。


 唯愛「なんですか?それ...よくわからないです!」

私は彼をからかってみた。


急に慌てだす彼。


 海「ごっごめん!よくわからないよねっ!」


そして

私は心の中で彼に言った。


 "よくわからないことが、私にはほんの少しだけわかるんです!ありがとう。海さん"


久しぶりの私達の再会。


地べたに座っていた私達は一緒に空を見上げて同じことを思う。


 "この曇り空が私達には似合ってるな"って

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