第22話 前に進む勇気
亮「お前不倫したんだって?」
電話がきた1週間後、彼はわざわざ地元から離れた場所まで来てくれて、とある居酒屋で飲んでいた。
海「そう...最悪だよな。俺」
彼が、しばらく黙り、残りのビールを一気に飲み干し言う。
亮「まぁ、家族の事だから、俺があれやこれや言う事ではないけど、お前らしくはないよな。色々思うところがあったんやろ」
海「...それが分からないんだよな」
亮「というと?」
海「別に嫁の事、嫌いだったわけじゃない。もちろんずっと一つ屋根の下で一緒にいるから喧嘩することなんて多々あるし、楽しい事ばかりではないのも分かってるハズだったんだけどな...」
亮「そうか...。で、その不倫相手は?」
海「俺とは別れたよ。離婚したかは知らんな。向こうが先に仕事を辞めて離れていったから」
亮「そっか...でもまぁその人も苦しかっただろうな」
海「そう思うか?」
亮「だと思うよ。色々話聞けば聞くほど、お前の事本当に好きだったんだなって思う」
海「そっか。でも彼女に助けられたのかもしれないけど、このままだと駄目だと思って全部家族に話して、そして...離婚した。全部0からやり直したかったから」
亮「それで、その罰がそのアザか...」
そう言って彼は俺のシャツを捲り、アザになっている箇所を指差した。
亮「大丈夫か?お前」
海「...このぐらいなら全然平気やな。受け入れてるわ」
そう言いながらアザを隠くし、ビールを飲む俺。
すると彼が言った。
亮「今まで色々嫁とあったかもしれないけど、ちゃんと自分から非を認めて、けじめとして離婚までして、帰ってきたんだ。それにいじめられてるのもしっかりと我慢して、充分過ぎるぐらい罰は受けてるやろ。やから気持ちを早く切り替えるというか、少しでも前には進んだほうがいい!」
前を向かせようとしてくる彼。
本当に嬉しかった。
海「ありがとうな。離婚してなかったらお前とこうやって会えてなかったかもしれんしな」
亮「そう。だからいい事もたくさんあるやろうし、これから出会う人を大事にしていかんとな!」
その言葉を聞き、俺は小春の事よりも"あの彼女"の方が頭によぎった。
その少しの心の変化に気づく彼。
亮「ん?もう出会ってるんか?大切にしたい人に」
ニヤリとする彼。
海「大切にしたいというか気になってた程度な...」
亮「いいやんか!おるやん!」
海「でもこれ以上、彼女に近づいたらさらに罰がくだるような気がして、不倫して離婚したことを全て話したよ」
亮「それでその人は?」
海「ん?俺がその話終わった後,"もう会わないようにしよう"って行ってその場から離れたから、彼女の反応は見てない。きっと嫌われてると思うしな...」
その言葉を聞いた彼は、俺の肩をトントンとしながら言う。
亮「どんな状況だったか詳しくはわからんけど、でもまだその人が、お前の事嫌いになったかどうかはわからんやん?だからまたお前の気分が少し落ちついて、彼女に会いたいなと思ったらまた会いに行ってみ?きっと向こうも待ってくれてるかもしれんしな!」
そう言ってくれた彼。
俺はずっとあの日から罰を受けていながらも、彼女の事が頭から離れなかった。
まだ好きな人を作るべきではない人間と思っていた俺。
だが、亮は言ってくれた。
"前に進め"と
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