第21話 着信音
「本当にありがとう。さようなら。唯愛さん」
俺はあの日から公園には行かなかった。
ちょうどよかった。
彼女の事を気になりかけていたから。
これでいい。
どうせ俺が過去に不倫をしていた事を話したから嫌われただろう。
うん。
これでいい。
現在進行中で罰を受けている俺は、まだ人を好きになってはいけない。
そう思っていた。
またいつもの日々が始まる。
会社に行けば、いつものように年下の上司にいじめられ、奴隷扱いにされ、時間がきたら、帰りにコンビニにより、カップラーメンを買って家に帰る。
これが離婚後の当たり前の日常。
気づけば彼女と公園で会うことだけが生きがいになっていた俺。
普通の人からしたらそれぐらいいいんじゃないかって思うだろうが、それをするとまたさらに罰がきそうな気がして怖かった。
年下の上司にいじめられる事が罰なら全然耐えれる。
痛くもかゆくもない。
ただ全身がアザだらけになるだけだ。
ランニングもやめ、ほとんど外に出なくなった俺だったが、ある日俺のスマホに着信が鳴った。
まだ、様々なトラウマを抱えていた俺。
知らない番号からかかってくるだけで、背筋が凍ってしまう。
でも出ないわけにはいかない。
俺は電話をとった。
海「もしもし...」
男の人「もしもーし!最上元気にしてるか?」
どこか聞き覚えのある声。
懐かしさのある感じだったが誰かわからなかった。
海「だっ誰ですか?」
俺は聞いた。
男の人「俺だよー!俺。ほら!高校の時の、"高橋 亮"だよー!」
まさかの高校生の時一番友達だったやつからの電話だった。
お互い大学卒業するまではちょくちょく会っていたが、社会人になり初めて、一切連絡をとらなくなっていた。
俺もスマホの番号を変えた時、なぜか彼の電話帳まで消えてしまっていて、それっきりだった。
海「おぉー!亮じゃん!久しぶり!元気してたか?」
亮「俺は元気だけどお前は大丈夫か?俺の親がお前の事知ってたみたいで俺も気になってさぁ、今地元にいるのか?」
海「そうだったんだ。俺は今地元から離れた隣の隣の県に1人でいるわ。なぁ...亮。俺、駄目だったわ...」
俺は心配して彼が電話をしてくれたことで全身の力が抜けてしまい、そして、涙が溢れてしまった。
亮「そっかそっか。でもまぁ、お疲れさん。1週間後そっちへお前に会いに行くから一緒に飲もう。10何年ぶりだし、語ろうや!」
彼がそう言ってくれた。
本当...。
友達はいつになっても友達だ。
お互い好きな時に連絡とらなくなり、そして都合がいいときに勝手に電話する。
そして久しぶりに会うが、気まずさは全くなく、昔の頃に戻る。
俺には、大切な友達がいた。
海「ありがとう。飲もうや!」
1週間後俺は、昔の友達の"亮"と会うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます