第19話  恐怖

 唯愛「ちょっと私トイレいってくるねっ!」

そう美華に声を掛けその場を離れた。


初めての合コンの雰囲気を味わった私。


今までは男の人と話すことなんか滅多になかった為、こうして話を聞いてみるとグイグイこられる。


それに圧倒され開始30分で意気消沈してしまった私。


一方美華の方はなんとなく受け答えが出来ていて、それが羨ましかった。


トイレの前で、先に入っている人が出てくるのを待っている私。


 すると...


 男の人「唯愛ちゃーん!」

と肩をポンとされた。


 振り返るとそこには、先程私の事を可愛いといってくれた男の人がいた。


完全に酔っぱらっていて、その後も何を言ってるかわからない。


 唯愛「大丈夫ですか?」

私は声をかけた。

すると、


 男の人「唯愛ちゃぁん。可愛いねぇ。どこか2人で抜け出さない?」

酔っていると思ったが、急にニヤリと怖い目つきになるその人。


 唯愛「そ...それは..」

私は言葉がでなかった。その人の顔が余りにも怖くて。


 男の人「なんでさぁ〜!出会いを求めてきたんだろ?俺が相手するからさぁ!」

そう言って私の腕を掴んできた。


この状況に固まってしまい動けなくなる私。

その手をどけようとするが、身体が全く動かなかった。


動けずにいた私を見てその男の人は外へと連れて行こうとする。


すると、


 「何やってんの?」

小春さんの声が後ろから聞こえた。


 男の人「唯愛ちゃん可愛いから二人で抜け出しちゃおうと思ってね。ねー唯愛ちゃん?」


違うと言いたかった私。

だけど、もしそれを言ってしまったらその後どうなるか、考えただけでも怖くなり、何も言えずにいた。


 小春さん「そんな人だから、まだまともに彼女ができたことないんじゃないですか?」

その言葉をきき、少し動揺していたが、次の彼の言葉で私は更に驚愕してしまった。


 男の人「てめぇーこそ、いい歳こいて家族いながらずっと不倫してたって、周り周って耳に入って噂になってたぞー!」

その彼の言葉が店内中に響き渡った。


奥にいた美華も慌ててこっちまでくる。


しばらく黙って下を向いていた小春さん。

そして口を開いた。


 小春さん「私が何をしようが、あなた達には関係ないでしょ?どう見ても嫌がっている女の子を連れ出すあなたこそどうかしてると思うわ」

そして、小春さんは私の手を握り、美華を連れ、お店を出た。



私の初めての合コンは最低最悪に終わった。


でも、嬉しかったことが一つだけある。


美華だけじゃない。


小春さんも私の事を守ってくれた。


太陽が沈み、夜が本格的に始まり出した頃、私達3人は美華の近くの公園に行くことにした。

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