第11話 最低な俺

 そう。俺は、離婚をした。


 すぐには前に進めなかった。


別に家族仲が悪化したわけではない。


転勤して単身赴任になり、新しい職場でも頑張っていた。

休みの日はなるべく、家族の元に戻り、家族サービスをしていた。


そんな俺だったが、どうしても0から自分をやり直したかった。


やはり不倫していた事も隠し通すのではなく、きちんと妻に打ち明け、制裁を受けるべきだと。

そう思った。


小春には感謝している。


だけど、うまく隠し通せたとしても、心に罪悪感が一生残り、全く前に進めない。



妻も子供も俺の大事な宝。


小春もそれと同等。


小春と離れて、すぐに気持ちが切り替えれたかと言えば嘘になる。


そんなのすぐに出来るはずがない。


だが、俺の中では罪悪感の方が勝り、あんなに元気だった俺もすぐに皮が剥がれ、ボロボロになっていった。


そして俺は妻に全てを打ち明けた。


妻はそれを聞き泣いていた。


最低最悪の俺。


だけど...。


だけど...。



幸い、妻は話しを聞いてくれて理解してくれた。



普通の人は分かってくれない。


こんな自分勝手な意見を。


そうして指輪を外し、俺はいつもの公園のベンチに座っていた。


そう。

ついに天罰が下った。

就いていた仕事も辞め、全く違う業種の仕事をし始めた俺。


当然会社では馴染めず、コキ使われていた毎日。


そのせいで、自棄糞になり走っていたから膝を痛めてしまった。


何やってんだ俺。

せっかく、妻も、小春も...俺を前に進ませようとしてくれているのに。



でもそんなときに以前、タオルを拾ってくれ、それから気まずいままで話が終わった人に話しかけられた。


そう。


それが唯愛。


俺の一番、誰にも見られたくない姿を、彼女に見られてしまった。


その時の俺は多分、見てられないぐらいに負のオーラがでていたはず。


それなのに、彼女は俺の様子がおかしい事を心配してくれて、病院に行くようにと言ってくれた。


...彼女の優しさ。


見る限り、純粋で大人しそう。


でも、まだ年は俺よりもだいぶ若そうだが、そこまで年の差を感じない何か...。


本当に。


少し心配されたぐらいで気になってしまう俺。


何やってんだ。

離婚してそうそう。


最低だな俺は...。


この優しい彼女に会うのは辞めよう。


今ならまだ大丈夫。


まだ...。


こうして俺はしばらく膝を理由に、いつもの公園には行かなかった。


だが、彼女が心配し、言ってくれたことだけは守った。


嬉しかったから。


自分で選んだ孤独の道。


頭の整理がつかず、何もかもリセットして自分を見つめなおしたいと思っていた俺。


そんなマイナス要素でいっぱいの俺に対し、誰も相手するわけがない。


するわけがない。


なのに彼女は。

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