第10話 可愛い嫉妬

 美華「おーい!唯愛ー!」


公園の周りを走っていた美華が帰ってきた。


 美華「あれ?海さんもう帰っちゃったの?」


 唯愛「うん。」

私の声が自然と弾んでいることに彼女は気づいた。


 美華「あれ〜?なんかいいことあった?」


 唯愛「謝ることはできなかったけど、逆に感謝された...後は名前聞かれて、また今度ねって言われたよ」


 美華「だから心なしか表情がスッキリしてるんだね!かわいいやつめっ!」

彼女が私のオデコを人差し指で軽く突いた。


 唯愛「もおやめてよぉ〜」


 美華「ほれほれ~!でも、せっかくだから私も話したかったなぁ〜。てか私の出番もう終わりじゃん!」


 唯愛「そおだねっ!笑」


 美華「せっかく服まで買ったのにぃ〜!」

拗ねる彼女に私は頭をポンッとする。


 唯愛「冗談だよっ!美華とランニングするのが一番の目的だからさっ!」


 美華「本当かなぁ〜...」

じーっと私をイジけた顔で見つめてくる。

すると彼女が、


 美華「じゃあ次、海さんがいたら3人で話そうよっ!」

そう提案してきた。


 唯愛「うんっ!いいよ!3人で話そっ!」


 美華「めっちゃ嫉妬させてやるんだからぁ〜!」


 唯愛「まだそんなところまで言ってないからっ!」

彼の事でずっと会話が弾んだ私達だった。



 そして次の日の朝。


少し寝不足だった私達は、寝ぼけたまま服を着替え、家をでる。

昨日、彼の事で夜遅くまで話していた二人。

結局きちんと寝たのは、約1時間ぐらいだった。


 公園の周りを走り、そして園内に入る。


 美華「あっ!今日も海さんいるじゃんっ!」

彼女が嬉しそうに私に言ってきた。


 するとあまりにも楽しそうに、二人で話していたのが分かったか、彼は振り返り、私達に会釈をする。


 海「七瀬さん。おはようございます。あと...」


 美華「木下ですっ!木下美華ですっ!」

かなり張り切っている彼女。

なぜかその一瞬だけ、彼女に彼を取られてしまうかもと思ってしまった私がいた。


 海「木下さん...初めまして。お友達ですか?」


 美華「そおなんですよ〜!昨日から唯愛が家に泊まりに来てて、一緒にランニングしよって誘ってくれたんです!それに海さんの話は聞いてます!」


 海「そっそおなんですか。家この辺なんですか?」


 美華「私の実家がねっ!私自体は今県外の大学に行ってて一人暮らししてるんですよ。それで今学校が休みだから帰ってきてて」


 海「あっ!二人共、大学生だったんですね」


 美華「そおなんですよぉ!まだ最近高校卒業したてですっ!海さんは何歳ですかぁ?」


 海「僕は36歳です」


 美華「え?めっちゃ若くないですか?全然見えませんよ!」


 海「そっ...そおですか。ありがとうございます」


........


全く会話に入れない私...。


美華のコミュ力の高さに圧倒された。

でも一つだけ嬉しかった事がある。


そう。


彼は美華と話す時はタメ口を使っていないのだ。

心の中でそればかり気にしていた私。

私のとき不意に言ってきたように、彼女との会話の中でも急にタメ口になってしまうんじゃないかと。



 だが、彼は、それからの彼女との会話の中でも終始敬語だった。


 

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