第4話 プレゼントの中身
ミッションを決行することになった私達は、準備の為トンカツ屋さんをでて、まず駅ビルにあるスポーツ用品店に足を運ばせた。
美華のランニング用品を集める為である。
思えば、彼女とこうしてデートをするのも久しぶりなのだ。
店に向かって行く時の事。
以前なら毎回、彼女の方から積極的に手を繋いできたり、腕を組んだりしていた。
なのにトンカツ屋を出てからは久しぶりだからなのか、手を繋ぎたい雰囲気は出してくるものの、いっこうに繋いでこない。
先ほど改札口の時は勢いで手を繋いできて、いつも通りの彼女だったのに...。
どこかソワソワしている美華を見て、私は彼女の手を握った。
唯愛「あっちだよっ!早く行こっ!」
美華「うっ...うん!」
その返事の感じで私は気づく。
私が泊まりに行くってなったからかと。
だからトンカツ屋でも少し顔が赤くなっていたのだ。
そういうギャップのある彼女が今は本当に愛おしくてしょうがない。
そして手を繋ぎあった私達は、目当ての店に辿り着いた。
美華「このお店、いっぱい服の種類あるねー。どれにしようか迷っちゃうなぁー...」
そう。
彼女はこう見えて、服選びに関してはものすごく優柔不断。
これは私だけが知ってる特権である。
彼女は首をゆっくりと傾げ、1枚取って自分に合わせてみてはまた戻し、またその隣の服を見ながら首を傾げ、また自分に合わせてみる。
そしていつもこう言うのだ。
美華「どれが私に似合う服なのっ!」
頬を膨らまし、服に怒っている彼女。
この姿も本当に、自分の未来の子供を見ているようだった。
怒っている様子を見て、私は彼女の頭を撫でながら言う。
唯愛「今日は私が選んであげるよっ!」
美華「えっ?いいの?」
こうして、上目遣いを公共の場所でしてきたのは初めてだった。
彼女の甘えたモードはさらに続く。
唯愛「うん!一緒にランニングしたいって言ってくれたし、すごーく嬉しかったんだよっ!」
美華「ありがとぉぉ〜唯愛」
そう。
私は彼女にずっとお返しをしてあげたかった。
なにか物をもらったわけではないが、もし高校の時彼女がいなかったら、果たして私は無事卒業することが出来ただろうか。
どれだけ彼女に助けられてきた事だろうか。
服を選ぶだけでは到底返しきれないが、できることはなんでもしてあげたかった。
"選んであげる"の言葉に、嬉しそうにしてくれる美華。
彼女が私にいつも言うように、私も美華の笑顔が見れたらそれだけで幸せ。
そう思っていた。
そして真剣に服を探す私。
美華は意外と原色が似合う。
ピンクのシャツに黒の膝上の短パンを選び、試着室まで連れて行った。
美華「めっちゃいいじゃんこれ~!サイズもドンピシャっ!」
試着室の中から、外にいる私に話しかけてくる彼女。
唯愛「よかった。着替えて出ておいでっ!」
美華「うんっ!」
本当。
彼女といるだけで一つ一つの出来事が本当に楽しい。
高校の時は本当にいろいろあり、数え切れないほど支えてもらった。
二人で泣いた時もあれば、ちょっとした喧嘩をしたときもある。
だが、喧嘩をした後でも私の身に何かあれば必ず、彼女は助けにきてくれた。
私が"あの男”を好きだったことも、本当は凄く嫌だったかもしれない。
それに今思えば、"あの男”はどこか信じがたい人だった。
しかし彼はあの時、本当に私の事をかばって、あのような事をしたのかもしれない。
でも真実はよくわからない。
もしかしたら、真実は美華が知っているのかもしれない。
今こうして彼女が私のそばにいてくれてるって事は...
過去の事を思い出していた私に、試着室から出てきた彼女は私に言う。
「この唯愛が選んでくれた服め~っちゃよかったぁ!会計してくるねっ」
嬉しそうにしている美華。
そして私は彼女に言う。
「その服、プレゼントさせてっ!」
彼女が手に持っている服一式を取った。
美華「そんなの悪いよ~!」
唯愛「大丈夫っ!だって今日から美華んちにお世話になるわけだし、"よろしくお願いします"の意味も込めてだよっ!」
美華「うぅ~。ありがとぉ~」
"それだけじゃない。私と出会ってから今日までずっとありがとうだよ"
"そしてこれからもずっと大好きだよっ!美華”
そう心で思いながら私は、美華にその服をプレゼントした。
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