第3話 大人味のコーヒー

 美華「えー!その最上さんって人、それから来なくなったんだ」

二人のテーブルの上に、おろしトンカツ御前がとっくの昔に届いていたが、それに箸をつけることもなく二人は彼の事について話をし続けていた。


 美華「あの唯愛が久々のラインで男の人と話したって聞いたから楽しみにしてたけど、かなり年上の人だよね〜」


 唯愛「うん。でも私もそんなに多くの男の人と関わってきた事はないけど、悪い人ではなさそうだったよ。私もなぜか自然に話せたし」


 美華「大人って、本当に何考えてるかわからないからさぁ〜。結婚はしてる人?」


 唯愛「全く意識して見てないから指輪つけてるとか見てないけど、多分結婚してそうだよ」

私は彼に対し、確信はなかったがそう感じていた。


そして美華がようやく料理に手を付け言う。


 美華「ん~~美味しい!最高!ほらっ唯愛も食べて!」


 唯愛「うん!すっごく美味しいねっ!」

一口食べたと思ったら、また先程の話に戻る。


 美華「まぁその人がどんな人かわからないけど、男の人と二人で話をした事が、唯愛にとっての大きな第一歩だよ!」

そお言ってくれた。


美華はいつも本当に優しい。

彼女とは、過去に私と一度だけあんな事があり、本人だって複雑な気持ちなはずなのに...。


トラウマを抱えている私に対して、少しでも前に進ませようとしてくれていた。


 唯愛「美華。本当にありがと!」

私は笑顔でそう伝えた。


 美華「私は唯愛の、その笑顔を見る事が生きがいなの!」


 唯愛「もぉー!また、そんな恥ずかしい事言わないでよぉ〜!」

彼女は高校の時からいつもそおやって私に思いを直接伝えてくる。


人前にいる時の彼女はしっかり者のお姉さん。

だけど、二人だけの空間になると、突如甘えたになるところが限りなく可愛い。


私の親友。


いや。


それ以上に仲良しの二人だった。


 そして二人は料理を食べ終え、コーヒーを頼んだ。

高校生の時には苦くて全く飲めなかったけど、大学生になったということもあり、少し大人の女性に憧れていた私達。

運ばれてきたコーヒーを強がって何も入れずにまず一口飲む私達。


 美華、唯愛「ゔぇ〜」

やはりまだ私達は大人の女性にはなれなかった。二人はミルクとシロップを存分に入れ、再び飲み始め、またあの話に戻る。


 美華「まだ私しばらくこっちにいるからさぁ、一緒に私もランニングしようかな!」


 唯愛「えっ本当?嬉しい!うんっ!しよしよー!」


 美華「もしかしたら、その最上さんって人に会えるかもしれないし!」

彼女はニヤリとした。


 唯愛「ちょっと〜!でも最近全然見ないから会えないかもよ」


 美華「だからこそ!この私がいるんじゃない!」


 唯愛「どういうこと?」

私は首を傾げた。


 美華「その公園、私の実家から見えるでしょ!だから唯愛もウチに...しばらく泊まりにきて、他の時間に現れてないか確認するのっ!」

彼女は嬉しそうに、だけど少し顔を赤くしながら恥ずかしそうに言ってきた。


 唯愛「う〜ん。いいよっ!美華の家に泊まりに行くのはいいけど、ストーカーみたいになっちゃわない?」


 美華「大丈夫っ!私の家に泊まりに来て、もし彼がいたらラッキーぐらいな感じでいいじゃん!別に恋愛に発展してほしいとか思ってるわけではないけど、唯愛が男の人と自然に話したって言うから、どんな人か興味があってね。私が見極めてあげるっ!」


 こうして私達は、そのミッションに向けて準備をすることになったのだ。

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