第41話 五味民雄の述懐 十七コマ目
問い質されても困ったろうな。俺はおまえの叔母さんに何て説明すればいいのか、まだ言葉が用意できてなかったからよ。ただ自分の内側では感情が言葉になってた。
ああ、そういうことかよ。やっとわかった。まったく、たいしたヤツだ。馬鹿野郎が、ってな。
「こういうときって、目の前がパッと開けたような感覚になるんでしょうか」
のぞき込む十文字茜の目に、五味は困ったような笑みを向けた。
「開けはしねえな。テストの問題やパズルが解けたときみたいな快感はない。慢性的な息苦しさの原因が、ポロッと落ちたような感じかな。確かに楽にはなるんだ。でもそこに気持ちよさや嬉しさがあるかっていうと、それはない。癖にもならない。そもそも真相なんてモノを俺が見つける必要なんぞ最初からない訳だからな。ある意味、罰ゲームをやらされたような気分だよ」
「罰ゲーム、ですか」
神妙な表情の十文字茜を横目に、五味は二杯目のコーヒーを飲み干す。壁に掛かった丸いアナログ時計の針が、カタン、と動いた。
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