約束というほどではなくても

第39話 寺桜院タイムズの切り抜き 四枚目

　学園七不思議をたずねて：初代理事長像

　当学園の設立は明治時代に遡（さかのぼ）ります。当時は裕福な家庭の子供を預かる、平たく言えばエリート養成機関のような学校だったようです。その設立に尽力した初代理事長の胸像が校庭に設置されているのは、みなさんご承知の通り。

　いつの頃からか、この胸像の前に立って背中を向けると、背後から首を絞めてくるという噂が広がりました。いまは亡き初代理事長にはちょっと可哀想な話ですよね。そもそも胸像ですので手は彫られていません。いったいどうやって首を絞めるのか理解に苦しむのですが、怪談に整合性を求めても仕方ないのでしょう。

　図書室には過去の卒業アルバムが置いてあります。その中には初代理事長像の前で撮られた写真もたくさん。みんな像に背中を向けているのに、首を絞められた人は誰もいません。もしそんな人がいたら、当時の新聞部が放ってはおかなかったはずです。

　みなさんもいつか卒業するとき、初代理事長像の前で写真を撮りたいと思うかも知れません。そのときは安心して撮影してください。初代理事長も喜ばれると思いますよ。

（寺桜院タイムズ編集部）