第36話 乗り物好きには気になることもある ~とじまりをするアニメの聖地観光へ~



 何作もアニメ映画をヒットさせるなんて、天才なんだろうと思う。


 特に『君の名は。』は最高。大好き。


 そして、もちろん、とじまりも見に行った訳だ。


 映画について語るのは、このエッセイの本筋ではないので、とっても良かったよ、とだけ言っておく。あれから10年以上経った今だから、私たちは見るべきなのかもしれない。


 でも、途中で……それも割と序盤で、ものすごく気になることがあった。


 様々な情報から、おそらくそこは九州だろうと相生は認識していて、いすを持った少女はフェリーに乗り込んだ。


 それで、そのフェリーは一晩かけて四国へとやってきたのだ。


 ……関西ではなく、四国? それも一晩かけてのフェリー? 徳島行きならあるような。そんな記憶もあるんだけれど。


 知らない航路があるかもしれない。上映中には調べられないので、頭の中で検索するにとどめて、上映終了後は余韻に浸りながらも、即、検索した。


 モデルになったフェリーはあるけれど、実際は一晩かけて九州から四国の愛媛へと渡るようなフェリーはないとのこと。納得。架空のフェリーだったのだ。


 ただし、重要なのは、モデルになったフェリーが存在するということ。


 乗り物にして、聖地でもある。相生、これは大好物だ。聖地も好きだし、乗り物も好き。






 という訳で行ってきました、九四オレンジフェリー。


 小倉からはソニックで、しかもこれ、佐伯行き。大分止まりではないやつ。そして、青じゃなくて、白のソニック。ていうか、今はかもめだよな? リレーかもめ。


 小倉では、博多から入線すると、大分方面へは折り返すので、博多方面からの乗客が降りて、車内へと乗り込むと、ちょうどみなさん、座席を回転させてました。そこにずばっと割り込んで、自由席を確保した。しかも、幸運なことに、電源用ソケットもある座席。ラッキー。


 仕事は休めず、夕方からのお出かけで、土日のみ。こういう旅はなかなかタイトだ。


 工場地帯の車窓を過ぎると、もう暗くなってきたので、タブレットで時間を確認して、目を閉じる。日本ってこういう時、マジで色々と安全だからすごいと思う。


 ガサガサとお隣が立てた音で目を覚ますと、別府だった。ごっそり、車内から人が消えていく。さすがは西日本の有名観光地。東の草津と並ぶ温泉地でもある。私は何度も来ているので、気持ち的にはスルーなんだけれど。


 そこからはぼんやりと暗い窓の外を見つめつつ、鏡のようにそこに映った、疲れ切った自分の顔を確認した。相変わらずのブラック勤務で、これでもかという疲労の残る顔だ。


 ……旅で仕事を忘れたいのに、この疲れた顔が仕事を忘れさせてくれないのか。


 夜の車窓は鏡と同じ。なかなか、自分を見つめてもいい気分にはならないものだ。






 到着したのは臼杵。色々と見所はあるんだが、今は目的がフェリーなので、それは置いておく。


 ただし、もう真っ暗で、まともに観光とかはどのみちできないんだけれどね。


 とりあえず、フェリーにはシャワーしかないらしいから、事前に調べておいた駅チカのホテルでお風呂を頂くことにする。


 なんと! 400円という格安料金!


 ここのフェリーを利用する人はこのホテルのお風呂を使うべきだと思う。


 疲れた身体に、全身を伸ばせる大きなお風呂はとても優しい。癒される。いや、マジで。


 久しぶりにゆっくりとできた入浴だと思う。こうやって心と身体を回復させることが大事なんだろう。






 真っ暗で不案内な街というのは、なかなか難しい。地図で分かったと思ってもよく見えないからどうしようもなかったりする。


 ホテルのフロントのお姉さんに地図を広げて色々と教えてもらって、まずはコンビニへ。ローソンだ。あの方の映画はだいたいローソンがスポンサーで入ってる。もちろん、映画の中にも。こういうのも、時代なんだろう。カリオスト〇の城にローソンは出てこないはず。


 でも、『天気の子』の時のコラボ商品で、レンチンしてくれるフローズンドリンクにはハマった。あれは良かった……。


 ここ最近はローソンのカヌレにハマっているので、家から徒歩130歩のセブイレさんを毎日のように裏切っている……。


 夕食はおにぎりでおしまい。こんなもんだ。節約、節約。あと、カヌレは買った。お許しを。


 コンビニからはまっすぐで、橋を渡って、しばらくしてから左へ。


 そうすると、港の灯りが見えてくる。フェリーもそこにいる。


 フェリー乗り場の中に入って驚いた。下調べでは気づいてなかったんだけれど、船会社がふたつあるのだ。びっくり。確かに、本州を経由せずに四国へ行くショートカットルートだけれど、船会社がふたつもあって、夜通し運行できるって、すごい。


 しかし、相生、ここで自身の失敗に気づく。


 深夜便に乗ったとしても、ろくに写真も撮れないではないか……。


 時刻表を確認したら朝の7時台の便がある。これなら、綺麗に写真も撮れるし、じっくり船内の探検で聖地も確認可能なはず。


 そうすると、朝まで……野宿的な……いや、ここのフェリー乗り場のベンチで寝るという手もある。タブレットがあるし、時間は潰せ……ああ、充電の問題があるのか……写真を撮りたい時に充電がギリギリというのは避けたい……。


 結論として、相生はコンビニに戻った。


 おにぎりで済ませたはずの夕食は、お弁当を買って追加で食べる代わりに、イートインの一角を占領する。お弁当で支払ったのは電気代のようなもの。そもそも、イートインにきっちり充電用のコンセントが用意されているのだ。なんとありがたいことか。やるな、臼杵のローソン様。


 夜中のコンビニには、色々な人がやってくる。本当に色々な人、だ。


 中でも印象深かったのは、イートインに横並びで座ったカップルさん。ずっと。ずーっと、いちゃいちゃしとる。もう、ずーっと。コンビニとラブホを勘違いしてませんかね? 中からも、ガラス張りだから外からも丸見えですけれど、大丈夫?


 このカップル、フェリーで一緒になった時は苦笑した……しかも、フェリーではとじまりの映画の話、してたから、同類だという事実に打ちのめされる……リア充がすることではない……。






 まあ、色々あったが、翌朝のフェリーに相生は乗り込んだ。


 確かに、映画で見たフェリーと同型船だ。なるほど、この船を九州から四国まで、一晩かけて……って、実際は3時間もかからないという……。


 映画で見た階段の下とかも探してみたけれど、どこも微妙だ。最終的にはごろっと横になりつつ、窓の外の海を見る。


 八幡浜の景色も聖地観光としてはアリなんだろうけれど、徹夜の疲れもあって、私は数分後に出港する別府行きの別の船会社のフェリーへと飛び乗った。まさにギリギリの乗船だったらしく、人が乗る方はもう封鎖済みで、車を入れる方から歩いて船内へ入り、エレベーターで客室へ。


 フェリーのはしご。たぶん、フツーはやらないと思う。


 しかも、流石は国内有数の観光地、別府行き。超満員で座れるところがない。カーペットも色々と割り込むのが難しい。


 しょうがないから小銭を投入して、15分に1度くらいで、マッサージチェアを起動させ続けるという裏技で座席を確保した。ある意味では有料の特等席と言えるのかもしれない……でも、意外と疲労回復には良かったり。


 なんとこの船、2022年6月デビューの新造船! どうりで綺麗だと思った!


 四国滞在時間はおよそ3分で折り返して、約3時間でおんせん県へと折り返した私は、もうバス路線を確認するのは面倒になってて、迷わずタクシーに乗り込んだ。


 そのまま別府駅からソニックで小倉へ。またしても白ソニック。しかも、別府行きでのフェリーでのトラウマのせいか、自由席ではなく、指定席で切符を買ってしまった……。


 今度は海側の車窓を堪能して、小倉までは過ごした。






 いや、マジで、何しに行ったのと言われるような聖地観光でした。


 私的には、映画と同じフェリーに乗ったから大満足なんですけれどね?





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