第34話 豪華な鉄道というものも、なかなか…… ~食べ歩きなのか、食べまくりなのか、悩みどころ~



 観光列車を友人に勧められたので、乗ってみることにした。


 ネットで予約しないとダメらしくて、情弱の相生も挑戦してみた。


 ……で、なんか、支払の後に、エラー表示が!?


 長文の、そこまでの流れを書いたメールをインフォメーションに送りつけ、ネット上でカード情報を盗むフィッシングではないのか、と静かな怒りも伝えて、翌日。


 朝から謝罪の連絡が入った。無事に申し込みはできていたらしく、支払も問題ないとのこと。


 ……だったらなんで、ああいうことになるんだろうね? やっぱりネット怖い。






 ま、前日に博多入りして、地下鉄で天神に移動する。ホテルにチェックインしてから、いつものお店でホルモンみそ炒めとラーメン、そして、替え玉。これは外せない。


 翌朝、西鉄福岡(天神)へと行って、まず、今回の観光列車とセットで買える1日乗車券を購入。これがないと、行くだけ行って、帰ってこれないからね。


 だけど相生は、その乗車券でさっそく西鉄に乗り込む。緑の……というか、クリーム色を混ぜたような緑というか……西鉄カラーの車両に乗り込む。


 西鉄福岡(天神)駅は、大阪なら阪急梅田、近鉄上本町、南海なんば、などと同じ、スタートターミナル。行き止まりの複数のホームがずらっと並んでる。関東と関西以外だとほとんど見かけないと思う。


 やっぱり福岡は大都市なんだよな。


 さて、乗り込んだ西鉄グリーン(グリーン車ではなく、なんとも表現しづらい緑色のこと)はぐんぐん進む。残念ながら、1日乗車券には謎の一文がある。


 1日乗車券という題の下に、『西鉄天神大牟田線・大宰府線・甘木線』と書いてあるんだけれど、ご利用案内のところには『発売日の当日限り、西鉄電車天神大牟田線が乗り降り自由となります。』って、書いてある。


 ……大宰府線と甘木線の駅では降りられるのか、降りられないのか、どっち?


 大宰府線は九州国立博物館があるから、何度も利用しているのでいいとして、甘木線はまだ利用したことがない。行ってみたいけれど、行ってからダメとか言われるのは絶対に嫌だ。


 相生は素直に、大牟田線を制覇することにした。大牟田線を最後まで乗ったことはないから。くくく、これで家に帰れば、また一本、地図の路線を塗り潰せるぜ……。


 という訳で、途中、全然降りることなく、乗り換えもなく、終点まで。一部、単線区間があるというのは面白い。


 大牟田駅は、西鉄とJRの駅が隣り合ってる。でも、全然近くなくて不便。こういうの、改善すべきだと思う。相互利用が増えにくいと思うけれど、他に路線がないから、殿様商売なのだろうか? 京都の山科駅も不便だと思ったけれど、あれ以上かも。


 西鉄大牟田駅の駅前広場で、かつての路面電車がカフェ化している!?


 鉄ちゃん心をくすぐるんだけれど、相生にはなんちゃらチーノは似合わないので、外から見たり、撮影したりするだけ。


 あとは、西鉄、JR、どっちの駅もしっかりと撮影して、また西鉄グリーンに乗り込んで、西鉄福岡(天神)へと戻る。


 私鉄ではよくあるパターンなんだけれど、特急料金なしの特急だ。ボックスシートでもないので、特急というのは停車駅が少ない、という意味を持つんだろうと思う。阪急とかでもよく見る。


 西鉄福岡(天神)は、いわゆる都会的な駅だから、駅ビルに色んなお店がある。だんご、シュークリーム、ワッフル、カヌレと、スイーツを食べまくって時間を潰した。


 そして、集合時刻に改札を抜けて、ホームへ。




 本日の観光列車は『THE RAIL KITCHEN CHIKUGO』である。




 相生、初のレストラン系観光列車となる。


 ……気にはなってた、色々と。レストラン系も。でも、なんか、勇気が出なかった。だって、お高いんだもの。


 今回は、まだ頂いていないのだが、新人コンの佳作の賞金が出るというので、それを使うことにしたのだ。


 3両編成で、中央はキッチンカー。前後にレストラン車両がある。4人席か、2人席か、ひょっとしたら他にもあるのかも。


 車両そのものも素敵だし、内装もいい感じ。JR九州にも負けてない。


 もちろん、キッチンカーでがんがん火を使って調理ってワケじゃないんだけれど、提供されるお食事は適温で、とても美味しい。


 前菜はおっしゃれ。もうおっしゃれ。相生には似合わない。ガラスの小鉢と白い陶器の小鉢がみっつずつあって、それぞれにちょびっとずつ前菜が入ってる。まるで会席料理みたい。


 なすとネギのみそ田楽が相生には最高だった。


 で、魚料理と肉料理が続く。もちろん肉料理も美味しいんだけれど、ここは魚の方が推しかも。めっちゃ美味しかった。ブイヤベースにチョリソーバターがちょっと辛味を楽しませてくれる。うーん、うまし。パンのおかわりができないのはホテルなんかのフルコースとは違って残念……。パンがあればソースを一滴も余さず食べ尽くすのに。


 デザートもばっちり。コース料理を鉄道の車内で頂くというのは、確かに面白さはあると思う。


 沿線の各地で、色々と手を振ってくれる人がいる。保育園の子どもたちとか、駅員さんとか。中には、駅での職業体験か何かだと思われるJKもいた。


 二毛作の麦畑が広がる車窓は九州らしい平野の姿。北陸や東北、北海道の単作地帯とは全然違う。


 西鉄福岡(天神)から、柳川または大牟田までのコース。私は柳川で降りる方を選んでいた。


 ……って、ほとんどの人が柳川で降りるんかい!?


 これ、大牟田まで走らせる意味、あるんだろうか? まあ、私が気にするところではない。


 初のレストラン系観光列車だったが、なかなか楽しめた。






 さて、乗り放題の1日乗車券は本日のみなので、折り返しにはなるけれど、ここまでやってきて、うなぎを食べない理由がない。


 まずは水郷柳川で船を……と思ったら、なんと、バスで向こうに行って、駅方面に戻るパターンしかないという。


 あっち側のうなぎ屋に行きたいので、それはない。私はお堀の優雅な舟遊びは即座にあきらめた。


 その代わり、お堀に沿って、できるだけ歩く。柳川の街を歩くのだ。


 古文書館の向こうの水門のところの橋で、なんか、着物で撮影してる人たちを発見。観光パンフか何かだろうか。流石は有名観光地だ。


 お堀のほとんどに遊歩道がセットなのは、車が来ないから安心でいい。何度も、川下りの舟とすれ違う。あっちは目線が低い。ふふふ、私に見下ろされるがいい……。


 途中、テニスコートの横に出た。硬式テニスだ。めつちゃうまい男子生徒が練習している。おそらく柳川高校テニス部だろう。あの、日本一熱い男の出身校ではないか!?


 おー……とちょっとだけ見惚れていた。どれだけ強いとかは知らないし。


 そのまま歩き続けて、目的の若松屋に到着。


 昼はとっくに過ぎてて、夕食にはまだ早いという、中途半端な時間のため、待つことなく、奥へと案内してもらう。ラッキー。


 頼んだのは鰻蒸篭蒸し、肝吸付。


 窓の外の庭園も素敵。


 鰻の脂とたれがしみた蒸しご飯も美味しい。ただ、一粒、一粒が粘りが出過ぎて、箸から逃げる。掴めない。頑張れ、私。お残し厳禁だ。最後の一粒まで食べるんだ。


 とりあえず、食べる前に撮影した写真と、食べ終わった写真、それとお店の写真を妹に送信して、母に見せるように伝えた。


 ……うなぎ、食べたいって言ってたから、親孝行やろ。


 ふふふ。羨ましがるといいのだ。


 めっちゃ、美味しかったです。


 帰りはタクシーで駅まで戻って、折り返す。


 ふと、トータルでいくらかなぁ、と思ったら、6万円オーバー……。




 賞金全部消えとるやないかい!?




 そんなオチもつきましたとさ。


 レストラン系観光列車は高い! って話でした。







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