第31話 親孝行したい時には親はなし。歩くのもたまには面白きこともなき世を ~まあ、歩いたよって、話~



 壁に貼ったりする世界地図とか、日本地図とか、って、見たことあります? まじまじと。


 私、ああいう日本地図を見ると、本州と九州って、本当に離れてんのかな、って思うんですよね。


 本州と四国は間違いなく離れてるし、本州と北海道も間違いなく離れてます。四国と九州も離れてるのは間違いないです。


 試しに、グーグルマップで地図のサイズを変えていって、プサンとかウルサンが入るくらいのサイズにしてみると、ほら。


 もう、本州と九州の間に海とかないですよ? 私の目が老眼だから見えないんですかね? そんなはずはないと思うんですよ? 北九州と下関がまとめて北九州な感じがします。まるで下関が北九州の植民地のようですねー。






 まあ、何が言いたいのかというと。


 関門海峡って、マジ、狭い。


 そういうことです。


 こういう地形が自然に成立しているっていうのは、本当に奇跡的なことだと思うんですよね。


 くっついてるレベル。しかもくいっと曲がった感じで。


 いやもう、関門海峡、マジ、狭い。


 だって、歩けるし。


 そう。歩けるんですよ。ご存知でした? 本州と九州の間は、歩いて行けるんです。近くまで来ていたので、寄り道しました。






 そんなこんなでやってきました。




 関門トンネル人道。




 赤十字っぽい人道的な、とか、そういう言葉ではなく、マジで、人、が歩く、道、という意味での人道。心の問題ではなく、肉体的な人道です。


 バスがここまで来ます。公共交通機関に感謝です。


 下関側には、ずらーっっと大砲が並んでます。海峡の狭いところですから、大砲でここを通る船が狙える。


 いわゆる「下関砲撃事件」ですね。尊王攘夷運動の攘夷の実行。幕末と明治維新の流れの中で起きた事件のひとつ。これも、国内の別の場所じゃなくて下関のここで起きたのは、関門海峡が狭いからなんでしょうね。もちろん、他にも様々な要因はありますけれども。


 薩英戦争での薩摩と比べて、長州がこの後、苦しむことになるのは、政治力とか、外交力とかの差、なんですかね?

 それでいて、現代に至るまで、長州がもっとも多く内閣総理大臣を輩出しているのは、その反省で政治力を磨いた、ということでしょうか? 国葬どうのこうのはともかくとして、いち国民としてご冥福をお祈りします。テロはダメです。

 思えば、関ヶ原の後も、薩摩の島津と比べて長州の毛利はがっつりやられましたね……中国の覇者はウザかったんでしょうね、徳川には。


 でも、かの有名な先の副将軍が日本の歴史をまとめさせたことで、巡り巡って尊王攘夷運動から幕府が倒されるなんて、物語として考えたら、なんとも壮大な伏線ではあるかも。


 閑話休題。


 あと、武蔵と小次郎。巌流島の戦いですね。戦ってる像があります。バガボンドは本当に名作だと思います。


 横断歩道を戻って、エレベーターで下へ。なんと、これ、無料です。


 で、地下世界。


 残念ながら一本道ですから、ダンジョン感はないです。うん。無念。ダンジョン感がほしかった。


 ……ていうか、めっちゃウォーキングしてる人がいる。スポーティーな格好で。


 え? 日常的に本州と九州を歩いて行き来してるとか? なんか、すんげぇかっこいい!?


 確認してみたらだいたい800メートル。一往復すれば、確かにいい感じのウォーキングだし、二往復すればもう3キロコースだ。しかも無料。うん、納得。ちょうどいいウォーキングコースで、車とかいないんで安全も確保できる。


 体は子どもで中身は高校生な探偵がいる。そういうキャンペーンですな。関門海峡で謎解きするらしい。やらないけれど。


 私も歩き始めます。微妙に下っているような、そうでもないような……。


 で、およその中間地点。


 海の底に、県境が!


 確かにこれは、右足で福岡県、左足で山口県を踏みたくなるな!?


 なんか楽しい!?


 でも、他の方の邪魔になるのはよろしくないので、ほどほどにして。


 さらに進むと、広いスペースに到着。もちろんエレベーターに乗って、地上へ。


 じゃじゃーん! 門司側に到着しました!


 近くに和布刈神社がありますけれど、なんか、工事中。


 でも、下関側よりも、海峡を間近で、海を間近で見ることができる感じ。


 ……ていうか、何、この潮の流れ。めっちゃ速いし。やばい、落ちたら死ぬかも? 階段で下まで来たから、その気になったら足を流れに突っ込めるけれど? いや、やらないよ? 押すな、押すなよ?


 流れに逆らう船がめちゃくちゃ踏ん張ってるように見えてくる。思わず頑張れと言いそうになる。


 ……こんなすごい流れなら、壇ノ浦の戦いで流れを味方に付けて勝つって話も、本当にそうなのかもしれない。むしろ圧勝なのでは?


 トロッコで門司、というのも悪くはないが、今はあんまり時間がない。


 再びエレベーターで下へ。歩いて県境を越え、反対側のエレベーターで下関側に戻る。


 いい感じで汗が出る。確かに、ウォーキングコースとして、いいかも。


 地上からは見上げると関門橋がある。


 併設されてるお店で、『関門TOPPA!記念証』というはがきサイズの証明書がもらえる。やったね!


 帰りに日清講和記念館に立ち寄った。まあ、下関条約って地名で名付けられてるし。日本側が伊藤博文と陸奥宗光、清側は、李鴻章。浅田大先生のあの物語だと、めっちゃかっこいいんだよな。あと、ラストであの子が処女だとわかる描写は童貞ハーツに突き刺さるぜ……NTRれてなかったんだ……泣く……。


 平安末期の源平の合戦から、幕末明治の尊王攘夷、維新、そして、日清戦争……。


 下関って、色々と歴史が錯綜していて面白きこともなき世を面白くしてくれる。






 ま、とにかく、たまには歩いてみるもんだね、って話でした。






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