第27話 九州旅。それは親孝行(?)である その2 ~めざせ竜宮城! まあ、埋められるけれど~



 あら鍋を食べて満腹状態で寝た。でも、翌朝のホテルの朝食。バイキング。


 ……目の前でシェフがオムレツ焼いてくれるって何?


 相生には初めての経験である。どんなバイキング?


 パンに付けるものも、バターやジャム関係はもちろん、そこにはちみつまであるし!? いや、はちみつとかいる!?


 食パンのちっさいヤツがめっちゃカラフルで何種類もあるし!? どれを食べれば!?


「ここで食べたらお昼いらんなぁ」

「あー、そーかも」


 そんなこんなで満腹まで食べて、ホテルをチェックアウト。鹿児島でラーメンと思ってたけれど、ま、いっか。


 地下鉄で博多へ出て、新幹線に乗る。この先は九州新幹線だ。目指すは鹿児島中央。かつて、西鹿児島と呼ばれた、ブルートレインの聖地。「はやぶさ」「富士」「なは」「あかつき」など、徐々に西鹿児島発着ではなくなっていったものの、西鹿児島から東京、西鹿児島から大阪や京都という長距離運行の始発・終着駅だった。


 今はひとつも走ってないけれど!


 さて、西鹿児島……ではなく、鹿児島中央に到着。切符はもちろんハンコもらってキープで。


 乗り換えまでは1時間以上、時間がある。


「鹿児島、初めてやわぁ」


 そうか。私は何度も来てる。だから、お土産屋さんの中のさつま揚げのコーンのヤツとか大好きだし、必ず食べる。今も食べるつもり。帰りも食べるつもり。


「でも、なんか、鹿児島って感じはあるのん?」


 ……新幹線の駅とその改札で、地元の雰囲気を出せとはこれまた難題を。そんなもんは新大阪にもないと思う。エキナカは最近すごいけどな!


 でも、思いついたものはある。


「……なら、白くまでも食べるか?」

「なんや、白くまて? お腹いっぱいやで」

「まー、かき氷みたいなもんやから、どうにかなるやろ」

「かき氷? 2月やで、アンタ、アホやなぁ……ああ、でも、そう言うたら、なんか、ここ、ちょっとぬくいわぁ」

「うちの実家が山の住宅団地で寒いからな」

「ほんま、温暖化の効果があの家には届かんのや……」


 とりあえず、駅ビルの地下へ行って、白くまを食べる。ハーフサイズのやつで。


「ほんまや。白くまの顔してんで」


 母も気に入ったらしい。おんぼろなケータイで写真撮ってた。誰に送るつもりなんだ? あと、その後で頭痛そうにしてたけど。冷たいから。氷やし。






 それからお土産屋をぶらぶらして、さつま揚げをつまんで、本日の第一メインイベントへ!


 くくく……このために1か月前、朝9時半から時間休で駅まで行って、みどりの窓口で10時ジャストに切符を買ったのだ! いわゆる十時打ち!

 既にこれまで車で2度、鉄道で2度、その温泉には訪れているが、その4回とも、切符が取れずに諦めたという……まるでプラチナチケットのような……。


 白と黒で半身を縦に分かたれた車両。


 海側の車窓は桜島や錦江湾を眺める絶景。


 車内もおしゃれで、案内役のお姉さんがふたりも旅をサポート!


 入線時にミストを発して、玉手箱を演出!


 い・ぶ・た・ま!


 鹿児島中央~指宿間を走るJR九州のデザイントレインにして、日本最南端の特急でもある、『指宿のたまて箱』だ。もちろんザ・MITOOKAデザイン。天才か!? 天才だったわ!

https://discordapp.com/channels/1211498324264357888/1252642655091818567/1254836207066546217


 全席指定なので、出入り口に並ぶ必要はない。母はホームベンチでのんびりしてる。


 私はタブレットを構えてホームの前方へ行き、撮影の準備をする。まずは動画で、近付いて静止画、さらにミストの瞬間は動画だ。これは絶対。


 そして、入線してきたいぶたまを私は撮影する!


 で、到着したいぶたまが玉手箱っぽくミストを出すんだけど……。


 なぜか、タブレットを構えてる私を発見した母が、こっちに手を振りながら近づいてきた。動画に映り込むにもほどがある。


 そして、こっちに向かってくる母の背後でミストがしゅーっと放出された。母、気づかず。


 ……いや、ミストの動画は撮れたんだけどな。なんか、間抜けな母動画になってしまった。全然気づいてない。それはもう、全然気づいてない。驚くほどに気づいてないな?


「ちゃんと撮ってや?」

「何を?」

「この電車と一緒に写ってんのやろ?」


 ……電車ではないが、それはまあいいとして。


「いや、おかん、さっき、一番大事な場面を見逃しとる」

「は?」

「これはな『指宿のたまて箱』っていう特急で、たまて箱みたいに煙を出すんや」

「どこに煙があんねん?」

「……さっき、消えたわ」

「そんなん、なんで先に教えてくれへんの?」

「いや、知りたいとか思ってなかったし。あのまま座っとったら見れたし」


 まあ、面白い動画になったと、そう思うことにする。


 で、母はその動画を見て「うわぁ、これ、すごいなぁ。なんか、もったいないことしたわぁ」って言ってました。それよりも、自分の間抜けさが動画に残されてしまったことに気づけ、母よ。


 もちろん、いぶたまは満喫した。撮影しまくり。


 残念ながら海側の座席ではなかったので、私が窓側、母が通路側だ。その方が桜島とか、見えるし。


「アンタ、なんぼ電車が好きや言うても、親を窓側に座らせへんのはちゃうやろ?」

「いや、こっちが山側で、そっちが海側やから、見応えがあるのはあっちの窓やし」

「そうなん? ほんならええわ」


 約1時間の車内、車窓、JRのおねえさんなど、色々と楽しみました(おねえさんに変なことをした訳ではありません。おさわり厳禁です)。


 いぶたま、ぜひ、乗ってみて! 楽しいから!






 指宿駅でも撮影しまくってから、改札ではハンコもらって切符をキープ。なんか「切符をキープ」は気に入った。これからも使おう。


 タクシーでホテルに移動。指宿でも有名などでかいホテルだ。

 でっかいホテルとか、でっかい旅館とかって、なんかダンジョン的じゃないですかね? 意味不明に通路がどこかにリンクしてたりとか。ついつい探検したくなるというか。


 も・ち・ろ・ん!


 指宿と言えば!? アレですよ!


 砂むし風呂! 南九州と言えばコレ! コレですよ! みんな知ってる砂むし風呂!


 ……母が熱さで死なないことを祈ろう。


「これ、アレやろ? 有名なやつやろ?」

「そうそう」

「行くで、すぐに行くで」


 もう、マジで80とは思えん動きをする人やな……。


 私は初めてではないので、特にコメントはない。母は初めてでかなり楽しめたらしく、「お姉ちゃんも連れてきたげたら良かったわぁ」とか言い出した。千葉の伯母さんまで私に世話させるつもりか!? それは従兄の仕事やし!? 姉やから母より年上やった! 何歳? 指宿とか行けるの? マジで死ぬんでは?


 それから、私は砂むし風呂だけでなく、別のところにある大浴場の方も楽しみました。母は、流石に疲れたというのもあって、それと大浴場がめちゃくちゃ遠いということもあって、部屋でのんびり。


 ホテルがでか過ぎる問題!? しかも築50年くらいみたい。1972年にできたらしい。高度経済成長からオイルショックのタイミングて。それでよう潰れんかったな……。しかも、色々な設備から考えたらバブル的な匂いがぷんぷんするし……ゴルフ場とか……美術館とか……。


 で、夕食。


 もちろん、贅沢に『鹿児島の食材を使ったフレンチフルコース』です!


 ……私、死んだら地獄で贖罪を求められるかも。マジで贅沢。


 おごりで旅行に行ける上に、その計画を全部任されるって最高! ビバ! 親孝行!






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