第26話 九州旅。それは親孝行(?)である その1 ~博多の夜はおさかナイト!~
リアリア(相生の連載小説『RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~』)が生徒会長の発言によって行き詰まるまで書いて、10月頃から溢れ出んばかりだった書く意欲を完全に消化して賢者モードに入った相生は、お正月のために実家を目指した。
ただし、ちょっとした奈良旅をはさんで。
で、大晦日。実家で紅白を見ていたら、突然、母が意味不明なことを言い出した。
「五島列島、行きたいわぁ」
……正直、だから何? という状態である。
それに、相生は既に五島列島は経験済みである。しかも、あの島でのレンタカーの運転で疲れ切った記憶も残っていた。あの時よりも年齢を重ねた相生にとって、おそらく五島列島でのドライブは苦行に違いない。
ゆえに、相生は……。
「ふーん」
……ごくごくシンプルに聞き流したのである。誰にも相生を責めることはできないはずだ。
すると、さまざまな歌手のみなさまが交代でテレビから響かせる歌声をBGMとして、母はどうして五島列島に行きたいのかを長々と語り出したのである。
長いので割愛するが、要するに、一緒に行こうと約束してた人が介護を受けるようになって、もう旅行とかできそうにない。でも、約束は果たしたいから、行ったら話して聞かせたい。まあ、そんな話。
でも、それは別に相生には全然関係ないのだ。
「ふーん」
もちろん相生は聞き流した。
「なぁ、五島、連れてってぇや」
「は? なんで?」
「ええやろ、親孝行やん」
「は? 知らんし?」
「なぁなぁ、連れてって」
「いや、五島列島とか完全にレンタカーやし、運転めっちゃ大変やし、絶対に行かん」
「はぁ~……親孝行のチャンスやで? 最期のチャンスやで? もうすぐ死ぬで?」
……確かに、80を過ぎたから、それは真実ではある。
「だが断る」
相生は拒絶した。
「……じゃあ、九州やったらどないなん? 五島やのうて、電車も走ってるやろ?」
必ずしも電車という訳ではないが、まあ、鉄道は……九州はある意味で最高峰では、ある。JR九州の特急はどれも魅力に溢れているし、路面電車が走る都市もたくさんある。
母は相生の動揺を見抜いていた。実家の私の部屋には大量のNゲージがある。甥っ子が小さい頃に無茶をして動かなくなったものもあるが、大量に飾ってある。それを母が知らないはずがない。
「九州、連れてって」
「……」
「九州はほとんど行ってないねんな。だから行ってみたいわぁ」
「……」
「連れてってくれるんやったら、お金は全部出すわ」
「……しゃーないな。こっちが全部計画すんで? で、九州のどこに行ったことあるん? そこ以外でプラン立てるから。あ、日程は絶対に1か月半は先やからな? 切符の関係で」
「あー、嬉しいわぁー。いい息子やなぁー(究極の超絶ウルトラ棒読みで)」
相生は、もうすぐ死ぬかもしれない母に、親孝行することにした。やはり、親子の縁(円?)は大切だ。
そんなこんなで、九州旅だ。
博多で集合。新幹線の切符は郵送した。
で、博多駅の新幹線口。やってきた母は、私ではなく、全然別方向を向いて、手を振りながらそっちへ進んで行く。なんか面白そうだからほっといた。
相手の人もびっくりしていたけれど、勘違いだと分かって、お互いぺこぺこしてた。
そこに私が近づいた。
「何やってんの」
「アンタぁ、おるんやったらはよ声かけやぁ。恥、かいたわ」
いや、面白かったけれど、息子を見間違える方が悪いと思う。
とりあえず合流はできた。地下鉄で赤阪へ。割と高い航空会社のホテルだけれど、今回、私のサイフは痛まない。いつもなら絶対に泊まらないクラスだ。
チェックインして、荷物を置いて、しばらくしたら、母は散歩してくると言い出した。
とりあえず放置した。80なのにめっちゃ歩くな……。
しばらくして戻ってきた母は、なんか、フルーツ大福のお店とか、見つけたらしい。全然知らなかったので、夕食の前に確認してみたら、名古屋の方に本店があるお店だった。福岡関係ないし。相生は長崎の中華街のフルーツ大福が好き。
さて、大福はともかくとして、博多の夕食。お金が全部そっち持ちなら、これだ!
あら鍋フルコース!
かの有名な料理対決マンガで、おすもうさんが食べたいと言って、新聞社のお偉いさんが捌いた魚の余りだと勘違いするという……いや、そのくらいの社会的な地位にあって知らないってどうなん? しかも知識の集積する新聞社って……。
この場合の「あら」とは「クエ」のことである。魚の王様だ!
博多と言えばあら鍋!
……まあ、赤坂駅近辺だからむしろ天神……というより大名か。博多と言うには離れてるけれど。
とにかく、あら鍋だ。これには母も喜んだ。しかもフルコース。
まずは昆布〆の押し寿司と薄造りのお刺身。お刺身はふぐっぽい食べ方だった。
それから茶碗蒸しと煮付け。煮付けは味付けが濃い……。美味しいけれどとにかく濃い……。
そして唐揚げ。これもまた面白い……。ぷにぷにやん。本当に魚なんかな……?
でーんっと大きな鍋が運ばれてきたら、メインのあら鍋。ここで母、大暴れ。絶好調の鍋奉行ぶりを発揮。味付けにめっちゃこだわる。めっちゃこだわる。塩の量とか、正直どうでもいい。年寄りってめんどくさい。言わないけれど。
いや~、ヒレとか、コラーゲンたっぷりやし。母の鍋奉行さえ聞き流しといたら、あら鍋、最高。
雑炊も食べて、デザートも頂いて。
大満足でホテルへ戻りました。
おごりで食べる高級料理はめっちゃ美味しいです! 色々な意味で! 親孝行っていいなあ!
そして、九州旅は続く!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます