第4話 ネネの休日と新魔導書

 黒鉄鳥から、精霊のスキルの話しをきいてから、少し経った。


 まいは、少しずつ異空間の宝石ノートを開くことに慣れてきた。

 夜に、ネネが寝ている間に、開くこともあれば、仕事の日の休憩しているときもある。


 移動や仕事の最中は、姉さまの様子やエネルギー体たちの様子など、景色が気になるため、落ち着いたときに、まいは開くようになった。



 休日の前の夜。

 姉さまは、疲れからか、帰ってから少し寝てしまい、夜に目を覚まして、それから動いて、夜中になって再び寝てしまった。



 姉さまが寝てしまったあとは、ネックレスは、ベッドサイドのフックにかけられるため、景色は変化しなくなる。


「寝てしまったわ。やっぱり、夜からが、退屈になってしまうわ。ヒトだった頃は、夜には眠くって、すぐに寝てしまったけど、いまは、まだ平気なのよね」


 夜中、考えごとをしながら、また宝石ノートを開く。


「スキルかぁ。どうすれば、もっと役にたつスキルにできるかな」


 まいは、せっかくならと、欲しい魔法や便利なスキルを考えるようになった。


「一番は、わたしの身体が動かせれば、いいのだけど」

「あとは、うーん」


 考えごとをしていると、いくつか気になるところもあった。


「魔導書。わたし、読めるのかな。スキルは、あるにしても、宝石になったときに、魔力が蓄えられて、それを使うのよね」

「この前の呪縛されているエネルギー体の子ども、どうなったかな」

「この前、みたのって、天使だよね。悪魔もいるから、天使もいるんだろうなぁ、て想ってたけど。でも、姉さまのほうが素敵なんだよね」



 いくつかのメモしていきたいことがらがでてくるのに、なにもできない。


「はぁ。黒鉄鳥さんに、もっと聴けばよかったかな。いえそれより、わたしヒトのときに、悪魔とか精霊とか召喚とか、もっと図書館で読むんだったなぁぁぁぁ」


 姉さまが、羽を動かしたり、ゴロンとなる。


 夜は、とても長く感じる。



 わたしが、ヒトの小学生だったころは、何をしていただろう。

 ただ、眠ってしまっただろうか。

 夜中に起きてしまったときには、何かしていたような気もするのだけど。


 考えごとをしていると、少しずつ眠くなってきた、ような気がする。


「そういえば、前も考えていたら、眠るようになってたかも。こういうのでも、魔力使うのかなぁ」



 徐々に、意識を途絶えさせながら、

 姉さまの寝顔をみて眠り、そして、次の朝、姉さまの起きる顔をみるのだろう。




 朝、姉さまは、バタバタしている。


 余裕をもってバタバタしている。


 とにかくバタバタしていた。



 あぁ、休日なんだなぁ、てわたしは想う。



 仕事の日の姉さまは、けっこう落ち着いている。

 余裕もあるし、ときどき寝過ぎる以外は、

 しっかりしている。


 ときどきは、わたしにも話しかけてくれる。

 話しといっても、姉さまには、まいの話しは聴こえていないから、おはよとか、さ、いこっか、とかそういうの。


 でも、休日のときは、

 ほら、バタバタしている。


 可愛いなぁ、ていうのと、

 ときどき危ないっていうのと、

 笑っちゃうのとがある。


 "姉さま、もっと、気持ちを落ち着けないと"


「あぁ、もう。髪決まらない」

「服装変じゃないかな」

「まい、どう想う」

「あぁ、バックの中身、もう一回確認しよ」



 どうやら、悪魔のメディナナタリアに私服や休日モードの自分を観られるのが、緊張するらしく、朝早くから、部屋のなかをいったり来たり、飛んだり跳ねたりしている。


 こういうときは、ピンク模様の翼までパタパタさせている。



 そのたびに、わたしは、


 "うん。変じゃないよ"

 "ほら、危ない"

 "中身忘れないようにね"

 "可愛い"


 とか、伝わらないけど、話すようにしている。


「あっ。じゃ、いこっか」


 姉さまは、わたしをつけて、でかける。




 メディとミレイとの待ちあわせは、この辺り数は少ないけど、音楽ショップみたいだ。

 姉さまの推しの闇病みファンタジーVというグループの新譜がでていて、それをみにいくと言ったところ、ミレイもついてくることになり、メディとも待ち合わせることになった。


「ミレイは、自分の推しのが探したいんだろうなぁ。メディは、どんな曲がいいんだろう」


 ネネは空中で移動し、少し早飛びをしながら、待ち合わせとなる、ショップ前に急ぐ。


「あ、もう来てる」


 フワッと着地して、メディとミレイに合流した。


「おはよぅ」

「あ、ネネ、少し髪がた違うね」

「え、うん。そう。ふふっ」


 姉さまは、とても嬉しそう。

 わたしは、会ったとき、先にわたしが言いたい言葉をメディから聴くことで、少し気分が落ちこむ。


 まだ、三名で会話していると、

 そこに、透明化した黒鉄鳥が降りてきた。


「おはよう。まい」

「あ、おはよう。黒鉄鳥さん」

「さん? 悪魔とかは、名前そのまま呼びかけだよ」

「あ、えと、黒鉄鳥のお名前、教えてもらっても」

「あぁ。そもそも名前ないか」

「えっ。ないの?」

「喚ばれるときは、陣を使うし、くろがねとか、こい、とかかな」

「えー。えと、灰色に青が入ってるから、あおにはいにくろだから」

「まいの好きなように」

「わかった。考える」

「はい。悪魔中央図書館に、いってきたよ。新魔導書」

「ありがとう。重かったでしょ」

「鳥たちには、重力をなくすゼロビディシェルが使えるから、問題ない」

「スキル。そう。新魔導書、せっかくだけど、わたしどうやったら、読めるのかな?」


 ネネたちは、ショップに入るようだ。

 黒鉄鳥は、飛ぶ仕草をするが、それは羽を動かしただけだった。


「あぁ。いま、まいの宝石のなかに、新魔導書を移すよ」


 透明化されているその書物の周りに、淡い文字の列ができていき、まいの空間にある宝石ノートの一ページが開く。


 すると、いままで、宝石ノートしかなかった、まいの異空間に、新魔導書がコピーされていく。


「この本は、図書館のだからね。司書にも聴いてきたら、データならよさそう。データ版を宝石のなかにコピーしたよ。これで、宝石ノートのように、中身がみられるはず」

「そうなの?」


 まいは驚く。


「はい」

「あ、あと聴きたいことが、宝石ノートにメモがかきたいの」

「そしたら、新魔導書の基礎魔法をみてね。今度、伝えられるときには、練習もしよう」

「はい。練習?」

「練習」

「魔法の?」

「魔法ともスキルともいうけどね」


 まいは、はしゃぐ。


「そっかぁ! スキル、魔法だぁ!」


 ネネたちが、ショップに入る寸前で、黒鉄鳥は、翼を振ってあいさつをする。


「じゃ、またあとでね。まい」


 扉がしまる。

 店内のBGMが流れるなか、

 まいの空間には、宝石ノートと新魔導書の二つが、浮かんでいる。


「わたし、これでスキルが増やせるのか」


「わたし、宝石で精霊で、魔法使いだわぁ」

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