エピローグ

 グランドに落ちてきた奏介。自殺を図り地面へとたたきつけられた彼には意識はなく目を覚まさない。


「……また、助けられなかった」


「この手でもダメかよ」


奏介の周りをぐるりと囲い死んだはずの優紀が悲しげな顔で呟く。海が複雑な表情で頭をかくとちらりと皆へと視線を向ける。


「いろいろな手を尽くしてきたが、いつも助けられなかったな」


「他に良い方法がないか思案してみる、か」


畔柳が頭を抱えて話すと晃が顎に手を宛がい呟く。


「謎を全て説き明かせなければならない。謎が解き明かされたならば俺達はここから解放される。だが、謎が説き明かされなければ奏介は生きてここから出られない」


「その未来を変えるために私達はあらゆる手を尽くして彼を助けようとしてきた」


亮人が悲しげな眼差しで話す言葉に恵弥が涙を流しなら続ける。


「奏介君自身の手で抉ったあの黒板の文字。そして彼は死の道を選んだ。そして私達は解放された。でも……」


「それでは意味がないの。奏介君がいない「生きていない未来」なんて何の意味も持たないんだよ」


腕を組み瑠璃が言うと彩夏も瞳を曇らせすすり泣く。


「もう一度、遣り直そう。奏介が助かる道を……今度こそ僕達の手でつかみ取るんだ」


「このイカレタ世界で、ただ一人だけの”希望の光”を今度こそ……俺達の手で救って見せるんだ」


朱が言うと暉も揺るがぬ決意でそう宣言する。


「奏介君が目を覚ました時、今度こそ、彼を皆で助けて見せようね」


鈴の言葉に皆力強く頷く。


「うっ……いてて……」


「あ、目が覚めたみたい」


「奏介、大丈夫か?」


小さくうめき声をあげ頭を押さえながら起き上る奏介へと優紀と海が優しい温かな笑顔で尋ねた。


終焉が廻る世界で今度こそ本当の”終わり”を皆で迎えよう。全ては優しくて愛おしい希望の光であるただ一人心から尊敬し、信頼できる友人”奏介”の為に。

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希望の光 水竜寺葵 @kuonnkanata

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