揺蕩うシエン

夏艸 春賀

声劇台本

《諸注意》

※なるべくなら性別変更不可。

※ツイキャス等で声劇で演じる場合、連絡は要りません。

※金銭が発生する場合は必ず連絡をお願いします。

※作者名【夏艸なつくさ 春賀はるか】とタイトルとURLの記載をお願いします。

※録画・公開OK、無断転載を禁止。

※雰囲気を壊さない程度のアドリブ可能。

※所要時間25分。女3の三人台本です。



【役紹介】

安藤 佳美(あんどう よしみ)

タバコ嫌い。172cm。

モデル体型で、綺麗系の服装を好む。割と世話好きで家庭的。


馬場 絵理子(ばば えりこ)

喫煙者。ヘビースモーカー。163cm。

カジュアルな服装を好む。生活能力は皆無。クリエイター。バイ・セクシャル。


狭山 純(さやま すみ)

馬場の後輩。159cm。

可愛らしい服装を好む。一人暮らし歴が長いので家事は得意な方。



【配役表】

安藤(女):

馬場(女):

狭山(女):




↓以下本編↓

────────────────────




《回想・3年前、馬場の自宅》


安藤

「あたし、煙草って嫌いなのよね」


馬場

「え、なんで?」


安藤

「だって、キスする時苦いんだもの」


馬場

「ふ〜ん」


安藤

「やめないの?」


馬場

「何を?」


安藤

「煙草」


馬場

「やめられな〜い、まらな〜い」


安藤

「……あらそう。じゃ、あたし帰るわ」


馬場M

「夜が明けて。アタシはひとりになった」


《回想終了》




【間】



《現在・閉店間近の居酒屋店内》


狭山

「せーんぱーい! そろそろ閉店ですよー! 起きてくださーい!」


馬場

「う。……ん〜……まだ飲める〜……」


狭山

「さっきまで寝てたのに何言ってるんですか!」


馬場

「んぇ?……寝てたぁ?」


狭山

「はい、それはもう見事に突っ伏してました。他の人達はみんな帰っちゃいましたよ」


馬場

「薄情者め……」


狭山

「仕方ないですよ、明日もあるんですから! ほら、歩けますか?」


馬場

「……ん〜……帰りたくない……」


狭山

「そういう事は私じゃなくて、彼氏とかに言ってあげてください。喜ばれますよ」


馬場

「いないも〜ん」


狭山

「店員さんも困ってますから! 手は貸します、お店出ましょ」


馬場

「……は〜い」


《居酒屋店前》


狭山

「一人で帰れますか?」


馬場

「ん〜……まあ、少し休めば平気〜」


狭山

「タクシー呼びます? 家近いんですか?」


馬場

「なになに、こんな酔っ払いの世話押し付けられてるのに優しいじゃん、後輩ちゃ〜ん」


狭山

「やっぱり押し付けられてますよねぇ、あはは。でも慣れてますから」


馬場

「ふふ、優しくされるとちょっと、嬉しくなる〜」


狭山

「何言ってるんですか、全く。とりあえずタクシー乗り場までは歩きましょう。少しは酔いも冷めるんじゃないですかね?」


馬場

「どうかな〜……あ〜、でも。大丈夫。歩ける」


狭山

「そうですか? なら、行きましょうか」


馬場

「あなた、なんで残ったの?」(ゆっくりと歩き始める。)


狭山

「残ったと言いますか、残されたと言いますか」


馬場

「……あ〜、うん。みんな薄情だからね〜」


狭山

「声は掛けていたみたいですけど、先輩全然起きなくて」


馬場

「そんなに飲んでなかったのにな〜」


狭山

「いえ、めちゃくちゃ飲んでましたよ。それに先輩、お酒弱いって言ってませんでした?」


馬場

「え? 言ったっけ?」


狭山

「私が入社した頃の飲み会で言ってました」


馬場

「あは〜、覚えてないわ〜」


狭山

「けど今日は無礼講だーとか言って率先して飲んでた気がします。……何かあったんですか?」


馬場

「う〜ん……何もないはずなんだけど」


狭山

「そうですか?」


馬場

「うん……」


狭山

「……」


馬場

「……まあ……」


狭山

「?」


馬場

「強いて言うなら、多分、自棄酒やけざけ?」


狭山

「先輩でも自棄になることあるんですね」


馬場

「どういう意味?」


狭山

「……先輩は、仕事をバリバリこなすキャリアウーマンで、カッコイイなぁって、他の人達は言ってますから」


安藤M

『……ねぇ、アナタ……息詰まらないの?』


馬場

「……、……」


狭山

「この人は弱い所とか見せないんだろうなぁとか」


安藤M

『弱音吐いても良いのよ、あたしには』


馬場

「……っ」


狭山

「見せたとしてもこう、完璧なパートナーがいて支えてあげてるのかなぁとか」


安藤M

『ちゃんと呼吸しなきゃダメじゃない』


馬場

「……かん、ぺきな?」


狭山

「そうですよぉ。だって、先輩みたいなキレイな人、誰も放っておかないんじゃないかなぁと、勝手に思ってます」


安藤M

『あたしにアナタを救えるとは思わないわ。けれど……』


狭山

「皆さん、先輩みたいな綺麗な顔が好きなんじゃないですか?」


安藤M

『あたし、アナタの顔だけは好きなのよ』


馬場

「……っ!」


狭山

「あ、すみません! 変な事言ってしまいましたよね」


馬場

「え?……あ〜…いや……前にも同じような事、言われて……」


狭山

「それはそうだと思いますよ。人間、見た目が八割ですから」


馬場

「うん、まあ……そうなんだろうけどね?」


狭山

「嫌な思い出……とかですか?」


馬場

「う〜ん。どうだろ。いい思い出のはず」


狭山

「酔うと感傷に浸るタイプですか?」


馬場

「……ん〜、分かんない」


狭山

「いいですけどね。あ、タクシー来ましたよ。真っ直ぐ帰ってくださいね!」



【間】



馬場

「たっだいま〜ってね。化粧、落とすのも、面倒くさ……もう、いっか〜……うん……打ち合わせ、いつ、だっ…け…………」


《回想・3年前、馬場の自宅》


安藤

「うんわ、ヤニ臭い」


馬場

「え?……あ〜ごめんね〜、今ちょっと煮詰まってて〜」


安藤

「いい加減本数減らしなさいよ。そんな害にしかならない物」


馬場

「ダメダメ、気づくと火〜付けちゃってる〜」


安藤

「あっそ」


馬場

「……キスしてくれたら減るかも〜」


安藤

「は?」


馬場

「なんちゃって〜……て、え?」


安藤

「(リップ音)……にっが」


馬場

「……」


安藤

「口寂しくなったら言いなさいよ。塞いであげる」


馬場

「……うん……、ねえ」


安藤

「なによ」


馬場

「もっかい、して?」


安藤

「……アナタ、馬鹿なの?」


《回想終了・現在、馬場の自宅》


馬場

「……ん……あれ……夢か。……ひっどい顔。ずいぶん懐かし……ッあ〜、あは。懐かしい、だなんて……思うようになっちゃってるんだ……アタシ……」



【間】



《とある喫茶店内》


狭山

「はい、OKですね。お疲れ様です、先輩」


馬場

「あ〜、お疲れ〜。や〜っと終わった〜!! もう飲んでもいいよね?!」


狭山

「ここ、喫茶店ですよ? それに、一週間後には祝賀会もありますから。そこでお好きなだけどうぞ」


馬場

「ケチ〜」


狭山

「ケチじゃありません。こんな昼間から先輩の介抱出来ません。それにしても、今回は長かったですねぇ。でも締切には間に合いましたし、バッチリです」


馬場

「ホント、こんなにグダグダなアタシのペースでもりずに付き合ってくれるの、後輩ちゃんくらいじゃない?」


狭山

「そんなことないですよ。他の人達も先輩の作品を待ってますから」


馬場

「そうかな〜」


狭山

「皆さんは先輩の事、好きですから」


馬場

「……う〜ん」


狭山

「どうか、しました?」


馬場

「いや〜、なんで後輩ちゃんはアタシのこと、先輩って呼んでるの? アタシはノリで言ってるけど」


狭山

「あー、それは……」


馬場

「うん」


狭山

「……大学が、一緒だったんです」


馬場

「え〜、マジ?」


狭山

「はい。でも専攻は違ってましたし、年数も違いましたから。けど、構内で何度か姿は見かけたりしてたんですよ」


馬場

「へ〜、全然気づかなかった」


狭山

「こうして一緒に仕事出来るようになるとは、思ってませんでしたよ」


馬場

「偶然って、あるもんなんだね〜」


狭山

「……えぇ、本当に。それじゃあ、私は戻りますね、他の人達に報告しないといけないので」


馬場

「あ〜うん、ご苦労さま〜。……なんか、どっかで聞いたような……」


安藤M

『……あら。アナタ、あたしの後輩なのね』


馬場

「……ぁ……」


安藤M

『専攻も同じなの? 偶然ってあるのねぇ』


馬場

「……」


安藤M

『まぁ、あたしは違う道見つけたけれど。貫いて仕事に出来てるって、素敵ね』


馬場

「……あ〜……そっか……」


安藤M

『これからはあたしが担当になるから。よろしくね、後輩ちゃん。……なんてね』


馬場

「……先輩……」



【間】



《回想・3年前、馬場の自宅》


安藤

「全く。煙草吸いすぎ」


馬場

「あ〜、も〜! ホンット嫌!!」


安藤

「……何がよ?」


馬場

「元カレ! 別れてるってのにしつこくって」


安藤

「なるほど。いいじゃない、男に好かれて。普通のことでしょ?」


馬場

「世間一般では普通かもしんないけどさ〜、今は違うし!」


安藤

「あらそう」


馬場

「今は! 先輩がいるので」


安藤

「……あっそ」


馬場

「あれ、照れた?」


安藤

「照れてないわよ」


馬場

「うそ〜、顔少し赤い」


安藤

「見間違いじゃない?」


馬場

「もう〜。拗ねないでって〜」


安藤

「……」


馬場

「大好きよ? 佳美よしみのことが」


安藤

「……全く、恥ずかしげもなく言うものねぇ」


馬場

「ふふ。ご褒美、ちょ〜だい?」


安藤

「(リップ音)……満足?」


馬場

「……ん。や〜だ、もっとして」


安藤

「……アナタって、ほんと。馬鹿ね」



《回想終了・現在、狭山の自宅》


馬場

「……ぅ、んん……」


狭山

「あ、先輩? 起きました?」


馬場

「え……あれ? ここ……」


狭山

「私の部屋です。祝賀会で飲み潰れてしまったんですよ、先輩。自宅に連れていこうとも思ったんですけど、心配だったので家に」


馬場

「……あ〜……そっか……はしゃぎすぎてた?」


狭山

「みたいです。他の人達にも連れ帰れって言われて」


馬場

「ありがと〜……うぅ、頭いた……」


狭山

「水、飲みます?」


馬場

「うん……っは〜……」


狭山

「終電はまだあるみたいですよ。帰れます?」


馬場

「ん〜……動くのしんどいかも〜」


狭山

「なら、そのまま寝ちゃっていいですよ。私ソファで寝るので」


馬場

「ごめん」


狭山

「大丈夫ですよ。何か他に欲しい物があったら言ってくださいね」


馬場

「……ねえ」


狭山

「はい?」


馬場

「なんでアタシに良くしてくれるの?」


狭山

「え? だって、頼まれましたし」


馬場

「ホテルとかに連れて行けば良かったじゃん。そもそも祝賀会場だってホテルのホールだったでしょ?」


狭山

「……まぁ、そうですね」


馬場

「なんで、後輩ちゃんの自宅に?」


狭山

「……」


馬場

「アタシ、女だよ」


狭山

「……」


馬場

「後輩ちゃんも女だよね?」


狭山

「……私……」


馬場

「うん」


狭山

「先輩のことが」


馬場

「……うん」


狭山

「……とっても……」


馬場

「……」


狭山

「……憎いんです」


馬場

「……え?」


狭山

「先輩。安藤あんどう 佳美よしみって人、知ってますか? もしくは、覚えてますか?」


馬場

「……えっと……え?」


狭山

「私。彼女の事を愛してたんです。世界中の誰よりも」


馬場

「え、どういう……」


狭山

「先輩。覚えてますか? 彼女を」


馬場

「……覚えてる、っていうか……」


狭山

「付き合ってましたよね、先輩」


馬場

「……」


狭山

「私、知ってるんです。先輩が佳美よしみ先輩と付き合う前にしつこい男と付き合ってた事も。その男が暴力的だった事も、そいつが佳美先輩を襲った事も」


馬場

「……え……」


狭山

「先輩。なんであの夜、佳美よしみ先輩と一緒にいなかったんですか」


馬場

「……あの、え? どういう、こと……」


狭山

「私は、めに行きました。でも、男の取り巻きに囲まれてしまって」


安藤M

『離しなさい! 離し、て!!』


狭山

佳美よしみ先輩も、私も、車に押し込められて」


安藤M

『嫌、いや!! 触らない、で!!……ッイヤァァア!!』


狭山

「抵抗しても、何度も、何人も。殴られて、汚されました。私も、佳美よしみ先輩も」


馬場

「……うそ……」


狭山

「嘘だと思いますか? 先輩。死因、覚えてます?」


馬場

「……ぁ……」


狭山

「今でも佳美よしみ先輩の悲鳴が聞こえるんです。目の前で同じ事をされている私を見て、彼女は言ったんです」


安藤M

『離し、て……離しなさいよ……!!……ッ、ぐ。ァ、アンタから絵里子えりこを奪ったのは!……あたし!……その子を、離しなさい!!』


馬場

「……先輩……」


狭山

佳美よしみ先輩の綺麗な顔が、殴られてどんどんいびつになっていくのを、見てる事しか出来ませんでした」


馬場

「……あなた、だって……」


狭山

「えぇ、私もなぶられていて動けなかったので仕方ないんですけどね。でも、そもそも、先輩があの夜、一人にしなければ起こらなかったんですよ」


馬場

「……ごめん……」


狭山

「今更謝らないでください」


馬場

「でも……あなたの愛してる人、奪って……」


狭山

「私の完全な片思いです」


馬場

「……え?」


狭山

「私は、彼女には気持ちを伝えてません。それに、彼女は私を知りません」


馬場

「え……? じゃあ、なんで……」


狭山

「私は、彼女のストーカーでしたから」


馬場

「は?」


狭山

「だから、先輩の事も知ってるんです。彼女がいた会社だから入ったんです。彼女が担当したのが先輩だったから、近づいたんです」


馬場

「……あなた、は……アタシに何を、したい、の?」


狭山

「……分かりません。憎いのと、大嫌いな事ははっきりしてます。最初に担当になった時には、復讐しようと思ってました。でも、先輩の担当を続けていて、気づいた事があるんです」


馬場

「え、なに……」


狭山

「それは、教えません」


馬場

「……え、ケチ……」


狭山

「ケチ、とかではないですよ。ただ、教えたくないんです」


馬場

「そう……んで、アタシに復讐しないってことは……え、今全部言ったのはなんで?」


狭山

「なんででしょうね。ただ、先輩がなにか勘違いを起こすのは気持ち悪いなと思ったんで」


馬場

「え、どういうこと?」


狭山

「ある意味告白ですけど」


馬場

「あ〜、まあね。すっごいビックリ」


安藤M

『ねぇ、絵里子えりこ


狭山

「ねぇ、先輩」


馬場

「ん、え?」


安藤M

『あたしに抱かれてみない?』


狭山

「私に抱かれてみませんか?」


馬場

「……は?」


安藤M

『……ふふ、すんごい顔』


狭山

「なんて、冗談ですよ。もう夜も遅いですし、終電も終わってしまいましたから。心配なんで泊まって行ってください。私は、一人にはしませんから」


狭山

「……ずっとね」









END




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揺蕩うシエン 夏艸 春賀 @jps_cy729

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