第2話 アイス

 おばさんがとんでもないことを言いだした。

 司が風呂上がりに報道ステーションをアイスを食べながら観ていたときだった。


 「司くん」


 「何ですか?」


 「あんた夏休みこっち(大阪)おんねんな」


 「はい、夏休みの期間は大阪にいようと思います」


 「う〜ん…」


 「えっ?いたらだめなんですか?」


 「いや、それは全然ええねんけどな。でも夏休みの間ずっと家におるっちゅうのはあかんやろ?」


 「えっ、家にいたらいけないんですか?」


 「あんな、実はな、おばちゃんちょっと考えてんけどな…」


 「はい、なんですか?なにを考えたんですか?」


 「司くん、あんた、アルバイト申し込んどいたで」


 「えっ、申し込んだ?アルバイトに?」


 「おん」


 「えっ〜!!」


 「あかんかった?」


 「めっちゃいきなりですね」


 「びっくりした?」


 「まじでびっくりしました、っていうかなんで勝手にアルバイト申し込むんですか!」


 「日中にこの家にいてもらったらあかん事情があんねん…」

 

 「なんで昼に家にいたらだめなんですか?」


 「いや、それはちょっと言われへんねんけど…、まあいろいろあんねん。この歳なっても…」


 「あっわかった!誰か来るんだ!」


 「まあそういうこっちゃ。あたし独り身やろ?」


 「ボーイフレンドですか?」


 「そんなたいそうなもんやあらへんで」


 「えー、誰ですか?誰が来るんですか?」


 「近所のオッチャンや…、もういやっ、恥ずかしいなぁ、あんた、からかったあかんでな」


 「涼子おばちゃんも恋してるんですね」


 「若いときは仕事ばっかやったしな。あたしキャリアウーマンやったから」


 「おばちゃんめっちゃ働いていてましたもんね」

 

 「あぁ、ブイブイいわしとったでな」


 「で、バイトは何のバイトなんですか?」


 「プールの監視員や!」


 「えっキツそう」


 「若いから大丈夫やろ、あんたやったらいける」


 「バイトはいつからですか?」


 「明日の朝からや。10時に堺プールや。ガンバレヨ」


 どうやら、この夏休みは忙しくなりそうだ。


 明日、プールの監視員のバイトで、司はある女の子に出逢うことになる。

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