第035話 プレゼント
今日は12月17日の日曜日。
この日はニャー子と社長と共にファミレスではなく、とあるショッピングモールに来ていた。
「チヒロっちは?」
僕はこの場にいないチヒロっちのことを聞く。
「テストは終わったらしいが、今日はその打ち上げらしいぞ。死んだ声で今日は行けないって電話がかかってきた」
お疲れ様……
チヒロっち、あまり勉強が得意じゃないって言ってたし、大変だったんだろう。
「そっかー、まあ仕方がないね。あ、来週は僕が無理だからね」
「知ってる」
「というか、来週の24日のためにタマ達が付き合わされてるにゃ」
来週は12月24日である。
つまり恋人達の聖夜。
僕とカナちゃんにとっては最初のクリスマスだ。
なお、クリスマスに女子と2人で過ごすのは中学の時に親が仕事でおらず、妹とホームア○ーンを見た悲しいクリスマス以来だ。
「君達はファミレスで過ごしてくれたまえ」
「いや、タマ達は社長の家で豪勢に過ごすにゃ」
ちょっと羨ましい……
でも、カナちゃんとは比べ物にならない。
「七面鳥でも焼く?」
「さすがにそこまではせんが、適当に焼く」
絶対に高い肉だろうな。
「プレゼント交換会でもやったら? せっかくショッピングモールに来たんだし、何か買いなよ」
「この歳になって男同士が集まってすることじゃないにゃ」
「というか、チヒロがいるからそういうはやめた方がいい」
それもそうか。
お金もないのに変に頑張られても困る。
「金持ちの2人に釣り合うプレゼントを考え、お金を工面するためにパパ活に走るチヒロっちになっちゃうね」
短期で大金を得るにはそれしかない。
「チヒロっちはしないと思うにゃ」
「あってもせいぜい親に借りるくらいだろ。チヒロや親御さんに迷惑になる」
ただでさえ、自分の娘がよくわからないメンツとつるんでいるのにこれ以上親御さんに迷惑をかけるとマズいか……
「それもそうだね。じゃあ、僕のプレゼント選びに付き合ってね」
来週のクリスマスプレゼントを選ばないといけないが、僕だけでは不安だったのだ。
なお、今日はカナちゃんも出かけている。
多分、クリスマスに向けての準備だろう。
僕達は翌日も仕事なこともあって、家で過ごすことにしたのだが、カナちゃんが料理やケーキを作ってくれるそうだ。
色々と準備がいると思う。
「暇だし、それはいいんだが、自分で選べよ」
「わかってるよ。ちょっと意見が欲しいだけだから」
「何かこれっていう候補はあるのかにゃ?」
ニャー子が聞いてくる。
「最初はエッチなものを考えたんだけど、やっぱり真面目な方がいいかなって思った」
「正解にゃ」
「さすがにな……」
上級者すぎるよね。
僕とカナちゃんはクリスマス初心者同士なんだから。
「そういうわけで指輪を考えたんだけど、時期尚早かなって」
「時期尚早にゃ」
「時期尚早すぎるな」
だよね。
「でもまあ、アクセ路線は良いと思うんだ。僕、彼女に自分の物を身に着けてもらいたいタイプだから」
「それっぽいにゃ。束縛男にゃ」
「だろうなとし思えん。ご主人様を取られたくない犬だな」
ひっで。
まあいいか。
「よし、じゃあ、ネックレスを買うからついてきて」
「もう買うものが決まってるにゃ……」
「俺ら、いるか?」
いるよ!
僕達はアクセサリーショップに行き、ネックレスを見ていく。
「どういうのにするにゃ?」
「あまり目立つのはよくないと思う。それ以上に目立つものがあるし」
巨乳ね。
「まあ、あまりそういうのを好まなさそうな子だったしな」
「そうそう。小さいおしゃれをする子なんだ」
奥ゆかしい子なんだよ。
「しかし、いっぱいあるにゃ。予算はどれくらいにゃ?」
「そんなものはない。カナちゃんに似合うならいくらでも出す。僕は無趣味でお金を貯めているから大丈夫」
値段は見ない。
「といっても、これとか30万するぞ」
「それはカナちゃんには似合わない…………これかこれだな」
僕は二つのネックレスを見比べる。
「早っ!」
「んー? 3万円と5万円か……値段的にはそんなもんだろ」
じゃあ、3万だな……でも、ここはケチるところではない気がする……
冬のボーナスも出たし……
「5万……まあ、5万か。良いものは高い。良いものはカナちゃんへ…………すみませーん、これください」
買うものを決めると、すぐに店員さんを呼ぶ。
「だから早いにゃ!」
「少しは迷えよ……」
僕はカナちゃんに対しては迷わないことにしている。
もし、あの時、迷っていたら告白していなかっただろうし。
恋愛は勢いが大事なのだ。
僕はネックレスをクリスマスっぽい赤い包装紙に包んでもらうと、カードで購入し、店をあとにする。
「これからどうする?」
「まだ午前中にゃ」
「というか、ここに来て30分も経ってないぞ」
「よし、コーヒーでも飲んで決めよう」
僕達はコーヒーショップで一休みすることにした。
◆◇◆
僕はコーヒーショップにやってくると、ご機嫌気分でコーヒーを飲む。
「いやー、来週が楽しみだなー」
「よかったにゃ」
「浮かれてるなー」
そりゃ浮かれもするさ。
初めての恋人と過ごす聖夜だもん。
叶うなら男に戻っているといいけど。
「それよりかさ、社長、小学校に聞いてみた?」
「ああ、それな。今日、話そうと思っていた。30日の午前中ならいいそうだ」
あ、いいんだ。
「許可取れたんだね」
「ああ。結構簡単に取れた。ただ、やはり校内は入ったらダメだそうだ。まあ、鍵がかかってるから入れないだろうがな」
まあ、そこは仕方がない。
校庭に入れるだけでも十分だ。
「じゃあ、その辺に実家に帰ろうかな。28日が仕事納めだし」
「俺もだな」
「タマはそういうのがないから適当に過ごすにゃ。社長、チヒロっちに連絡よろしく」
「ああ。チヒロは家族と帰るだろうが、俺らはどうする? 車で送っていくぞ?」
さすがは社長。
ベンツ乗りは違うぜ。
「じゃあ、お願い」
「タマもにゃ」
「じゃあ、30日の朝に迎えにいくからな。チヒロにも伝えておく」
よろしくー。
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