第032話 帰宅


 僕達はくだらない雑談を終えると、いい時間だったので就寝した。

 そして、目が覚めると、目の前には横になったニャー子が目を開け、こちらを見ていた。


「カナちゃーん……」


 僕はそーっと顔をを近づける。


「キスしようとするにゃ。タマはカナちゃんじゃないにゃ」

「……なんでお前が僕の布団にいるんだ?」


 僕は目が覚めたらカナちゃんに抱きついて、もふもふするのが習慣なのだ。


「ここはタマの陣地にゃ。侵入してきたのはお前にゃ」


 ニャー子にそう言われて、後ろを見ると空になった布団が見えた。


「ホントだ……」


 いつの間に?


「お前、寝相が悪いにゃ」

「よし、このままチヒロっちの布団に侵入しよう。よいっしょっと!」


 僕はコロコロと転がり、ニャー子を越える。


「重いにゃー」


 文句を言うニャー子を無視して、ニャー子の隣の布団に行くと、金髪の少女がスヤスヤと寝ていた。


「ギャルが寝ている」

「よく寝る子だにゃ。社長の家に泊まった時も中々起きなかったにゃ」


 ふーん……


 僕はそーっとチヒロっちの布団を広げると、中に入る。


「この子、温かい」

「すごい変態発言にゃ。そして、未成年の布団に侵入する26歳の絵にゃ」


 確かに……


「キスしたら怒るかな?」

「パニックだと思うにゃ。あと、お前、そいつ男だぞ」


 今は女の子ー。


 僕はチヒロっちをギューッと抱きしめる。


「んっ…………あれ?」


 チヒロっちが目を覚ました。


「おはよう」

「おはよう……ございます……あれ?」

「どうしたの?」

「なんでエロミ姉さんが俺の布団に……?」


 チヒロっちが寝ぼけた目で聞いてくる。


「覚えてないの? ゆうべ、レクチャーしてあげたんだけど」

「レクチャー…………何の!?」

「チヒロっちは若いねー。ガンガン来すぎて、お姉さん、大変だったよ」

「何が!?」


 チヒロっちはパニックだ。


「エロミ、その辺にしとくにゃ。チヒロっちが可哀想にゃ」


 それもそうだな。

 からかうのはこの辺にしとこう。


「よし、次は社長だ。よいっしょっと!」


 僕は再び、コロコロと転がり、チヒロっちを越える。


「重いっす。あと、さりげにおっぱいを触らないでください」


 文句を言うチヒロっちを無視して、チヒロっちの隣の布団に行くと、茶髪のお姉さんがスヤスヤと寝て……おらず、上半身を起こして、呆れた目で僕を見ていた。


「社長、空気を読んで寝ててよ」

「いや、騒ぎすぎ。というか、俺はお前とタマのやりとりの時から起きてたわ」


 年を取ると、眠りが浅いな……


「チヒロっちー」


 僕は後ろを向き、再び、チヒロっちの布団に侵入する。


「もういいっすよ……起きましょう」

「寒いよー」

「そんだけ動けば温まったでしょ。というか、朝風呂に行きましょうよ」


 それもそうだな。


「チヒロっちはエロいなー。そんなに女風呂に行きたい?」

「正直なことを言えば、修学旅行もプールの授業もない高校を選んだことを心底後悔していますよ」


 あー……

 気持ちはわからないでもない。

 知らない女の人の裸より、同級生の裸を見たいだろう。


「それは残念だったにゃ」

「俺も高校に戻りたいわ」


 僕も……

 修学旅行あったし。

 どうにかして女子風呂を覗けないかなーっと友達とキャッキャした思い出が……


「そういう雑念は捨てて、温泉でデトックスしよう」

「お前はそうした方がいいにゃ」


 僕達は温泉に行くことにした。


 温泉に入り、朝食を食べに行き、朝から豪華な食事を食べる。

 そして、食事を食べ終え、おみやげを買うと、部屋に戻り、着替えを始めた。


「良い旅館だったね」

「そうだにゃー。普段の疲れやストレスが取れた気がするにゃ」


 ホント、ホント。


「社長、ありがとうございます」


 チヒロっちが礼を言う。


「俺は招待されただけだけどな。まあ、知り合いには喜んでいたって伝えておくわ」


 社長って人脈が本当にすごいな。

 さすがは社長。


「ありがとうございましたって伝えておいて。すごく楽しかったよ」

「ああ。それにしても、お前、本当に穿かずに帰るんだな……」


 僕が白のニットワンピースを着ると、着替えを見ていた社長が呆れる。


「そもそも普通のパンツを持ってきてないからね」

「そして、太ももにエロバンドを装着しているにゃ」


 おしゃれだっての。


「エロミ姉さん、さすがに短すぎません。階段の下から見えますよ」


 ったく、エロ野郎どもめ。


「はいはい。穿けばいいんでしょ」


 僕はカバンからパンツを取り出し、穿く。


「Tバック……」

「どこまでもエロいな……」

「エロミ、ちょっと、ケツを出すにゃ」

「こう?」


 僕は後ろを向いて、ワンピースをたくし上げる。


「おー、エロいっすね」

「良い尻してるな」

「カナちゃんが叩きたくなる気持ちもわかるにゃ」


 カナちゃんの方がエロいお尻をしているけどね。


「もういい? 温泉で十分に見たでしょ」


 僕も3人の裸は十分に見た。


「全裸より服をたくし上げる感じがエロいんですけどね」

「そうだにゃ」

「わかる」


 それはわかるけども……


「どうでもいいけど、皆も着替えなよ。いつまで半裸で頷いてんの?」


 僕はとっくの前に着替え終わったっての。


「そうっすね」

「着替えて帰るにゃ」

「タバコ吸いたいしな」


 そういや、社長、タバコ吸ってなかったな。

 僕らがいるから遠慮したのかね?

 気にしなくていいのに。


 僕達は着替え終えると、チェックアウトし、家に帰ることにした。




 ◆◇◆




「ただいまー」


 僕は社長に家まで送ってもらうと、玄関を開けながら奥にいるカナちゃんに声をかける。

 すると、カナちゃんが出迎えてくれた。


「おかえりなさい。どうでした?」

「良かったよー。あ、これ、おみやげ」


 まんじゅうをカナちゃんに渡す。


「ありがとうございます。でも、私も行きたかったなー」

「行こうよ。友達と行くのも楽しかったけど、僕もやっぱりカナちゃんと行きたい」


 浴衣のカナちゃんを見たい。

 そして、2人でゆっくりしたい。

 えっちしたい。


「仕事がもう少し落ち着いたら行きましょうか」

「そうだね」

「あ、先輩、お疲れでしょ。洗濯しておくので休んでください」


 カナちゃんはそう言うと、僕のコロコロを取った。


「ありがとー」

「それと今日はカレーです」

「わーい」


 ええ子や。

 絶対に逃がさないし、一緒のお墓に入ろう。


 僕は強く決意した。

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