第031話 共通点


 僕達は豪華な晩御飯を食べ終えると、お酒を飲みながらまったりする。


「エロミ、飲みすぎるにゃよ」

「わかってるよ。今日は軽く飲む程度」


 さすがに社長の家では飲みすぎたし、はっちゃけすぎた。


「エロミが自重してくれたところでお前らに話がある」


 社長が改まって言う。


「なーに?」

「前に話した俺達の来歴をまとめるっていう話だ」


 あー、あったね。

 社長が書類を作ってみるって言ってたやつ。


「作ったの?」

「ああ。ちょっと待ってろ」


 社長はそう言うと、立ち上がり、部屋の隅に置いてあるカバンのところに向かう。

 そして、自分のカバンから紙束とペンを取りだすと、戻ってきて、テーブルに置いた。


「今、書くんだ……」

「いい機会だと思ってな。昨日、残っていた作業を終わらせて持ってきた」


 まあいいけど。


「ほら」


 社長は僕達にペンと書類を配る。

 僕は書類を受け取ると、ざらっと内容を見てみた。


「結構、項目があるね」


 名前や年齢まである。

 ん?


「社長、さすがに性別はいらないんじゃない?」

「あ、それはネタ。ウケるかなと思って」


 微妙……


「社長、これ書いてた時、シャンパンを飲んでたでしょ」

「まあな……書いてる時はニヤニヤしてたんだが……」


 やっぱりか。


「まあいいにゃ。とりあえず、書いてみるにゃ」

「そうですね」


 僕達は書類の項目を書くことにし、黙々とペンを走らせる。


「趣味っている?」


 この前、話したじゃん。


「何が共通点になるかわからないから一通り書いたんだ。とりあえず、書いてくれ」


 うーん、趣味ねー。

 ××××っと。


 僕達はその後も書き続け、ついにはすべての項目を埋めた。


「できたよ」

「タマもにゃ」

「俺もです」


 皆も書けたようだ。


「くれ」


 僕達が社長に書類を渡すと、社長は読みだす。


「性感帯っていう項目があったよね?」


 社長、飲みすぎ。


「え? なかったにゃ」


 はい?


「俺もなかったっすよ」


 おい! 社長!


「すまん。でも、素直に✕✕✕✕✕って書くお前もどうかと思うぞ」

「そこを優しく焦らすように撫でられるのが好きなんだよ」

「はいはい……えーと、まずなんだが、やはり趣味嗜好はバラバラだ」


 社長は僕を流すと、結果を言い始める。


「でしょうね」

「それはこれまでの駄弁りでわかっていたにゃ」

「職業も違いますしね。俺は学生っすけど」


 しかも、年齢もバラバラ。


「それにしても、エロミ、お前、妹がいるんだな」


 家族構成を書く欄があったから素直に書いた。


「にゃに!? 何歳にゃ?」

「19歳。大学生だな」

「エロミ、紹介するにゃ」


 こいつ、怖いな……


「あいつ、僕と同じくらいの胸のサイズだよ? 顔もかわいくない」

「タマはお前と違ってそこには興味ないにゃ。それに兄の評価は信用ならないにゃ」


 ニャー子、うざい。


「社長、ニャー子は無視するけど、他にないの?」

「ああ、そうだな。だが、ものすごいわかりやすいところで共通点があったわ」


 え? あったの?


「何?」

「俺ら、出身地が同じだ」


 え? マジ?


「僕、千葉の木更津」

「ニャー子もそこ」

「俺のじいちゃんばあちゃんの家があるところはそこっすね」


 マジ?


「社長は?」

「俺も木更津だ」


 は?


「そうなの? マジでびっくりなんだけど」

「タマもにゃ……」

「俺も皆、東京の人だと思ってました……」


 すごいな、おい。


「これ、偶然?」

「偶然とは思いにくいな」

「確かににゃ」

「同じ出身地の4人が同時期に女になる……ありえます?」


 ありえない。

 まあ、男から女になること自体がありえないんだが……


「社長、出身地の項目の他にはない?」

「ないな……だが、さらに気になることがある」

「それは?」

「俺達の出身地は同じだが、具体的に言うと、チヒロは違う」


 あー……高校は東京だもんな。


「祖父母の家だっけ?」

「ですね。年末とかにたまに帰る家です」


 微妙に共通点と言えないような……


「だがな、来歴を見ると、チヒロは中学高校は東京だが、小学校は木更津だ」

「あー、そうですね。小学校の時は両親が仕事で海外に行っちゃったんで2、3年は姉貴と一緒にじいちゃんばあちゃんの家で過ごしてました。だから小学校は木更津っすね」

「そして、チヒロが通っていた小学校には俺達も通っている」


 マジ?

 ん?


「ということは僕が1年生の時に社長が4年生?」

「そうなるな……」

「タマが1年生の時にエロミが3年生で社長が6年生にゃ」


 あ、ニャー子って僕の2個下なのか。

 ニャー子はアイドルだからっていう理由で年齢を教えてくれなかったが、さすがにこういう状況になったら言うようだ。


「チヒロのことを考えると、同時期に同じ学校に通っていたというより、同じ学校、もしくは、同じ地域出身ということがファクターだと思う」


 ファクター……

 ファクター?


「ぼ、僕もそう思うな」

「タマもにゃ」

「すみません。ファクターって何です?」


 チヒロっち、今度、パフェを奢ってあげるよ。


「要因だ。要は俺らが女になった理由がそこにあるんじゃないかってこと」

「なるほどー」


 なるほどー。


「出身地にファクターがあることはわかったけどさ。でも、そんな人いっぱいいない?」


 東京にいる木更津出身の男なんていっぱいいる。

 関東圏内でそこまで遠くないし。


「そうだな。だが、他に俺らの共通点はない。他に手がかりがないんだからそこを攻めるしかない」


 それもそうか。


「どうする? 行ってみる?」


 皆に聞いてみる。


「タマはあまり近づきたくないけど、こうなったら仕方がないし、別にいいにゃ」

「俺も問題ない」


 タマと社長は問題ないようだ。


「すみません。俺、もうすぐで期末があります」


 あー、そんな時期か。


「チヒロっちはそっち優先ね」

「そうにゃ」

「当然だな」

「すみません」


 いや、いいんだよ。

 チヒロっちにはテスト勉強という地獄が待っているんだから誰も責めない。


「どうする? 俺らだけで行くか?」


 社長が聞いてきた。


「もう12月でしょ? どうせ年末に実家に帰るし、その時で良くない? やっぱりチヒロっちもいた方がいいと思うし」

「それもそうだな……チヒロは特に俺らと年齢が離れているし、共通点を探すにはいた方がいい。タマ、どうだ?」


 あ、そういえば、ニャー子は親と縁を切ってたわ。


「別に問題ないにゃ。適当にホテルでも泊まるにゃ」

「そうか……じゃあ、年末に木更津で会うことにしよう、それまでに小学校の記憶を掘り起こしてくれ」


 覚えてるかなー……


「頑張ってみる」

「やってみるにゃ」

「わかりました」


 僕達は今後の方針を決めると、頷き合った。


「よし! じゃあ、気分転換に僕のエロ話をしてあげよう」

「尽きないにゃー……」

「すごいっすね」

「エロミ、どんなのだ?」


 社長が聞いてくる。


「さっき性感帯の話をしたでしょ? 僕の××××を見せてあげよう」


 勉強したまへ。


「やめるにゃ」

「お酒を飲んでなくてもこれ……」

「こいつ、すごいな……」


 あ、でも、カナちゃんの服がない……

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