第026話 コスプレ


 僕は取引先の人と会うために一人でとある会社に向かい、協議を行った。

 そして、協議を終えると、会社を出て、時計を見る。


「もう昼か……」


 会社に戻る前にどこかで昼ご飯を食べよう思い、周囲を見渡すと、見覚えのある黒いベン〇が路肩に停まっている見えた。

 社長かなと思いつつ、危ない人だったら怖いので何食わぬ顔で近づき、チラッと運転席を確認する。

 すると、社長がタバコを咥えながらスマホを弄っているのが見えた。


「社長」

「ん?」


 僕が声をかけると、社長が見上げる。


「やっほー」

「おー、エロミか。奇遇だな」

「そうだね。仕事中?」

「いや、付き合いのある社長さんと話をし終えたところだ。お前は仕事……だろうな」


 社長が僕のスーツ姿を見て、頷いた。


「まあね。協議が終わってご飯でも食べようかと思っていたところ」

「俺もそんな感じだな。この辺の店を探し中。一緒に食うか?」

「せっかくだし、そうしよう」

「ん。乗れ」


 社長のそう言われたので助手席側に回ると、ドアを開け、乗り込む。


「ちょっと待ってろ。今、探しているから。しかし、お前のスーツ姿を見るのは初めてのような気がするな」

「そうかもね。仕事できそう?」


 キャリアウーマン?


「いや、ロリ」

「ロリのふとももを見ながら興奮する社長さん」

「目が行くだけだ」

「まあね。自然とそういうところに目が行くよね」


 僕も社長の足や胸に目が行くもん。

 こればっかりは仕方がない。

 男の性というものだ。


「だよなー……しかし、この辺はロクな店がないな」

「ラーメンとかでいいよ。最近は行ってないし」

「それもそうだなー……ホント、行かなくなったわ」


 この前話した食の趣向に関連するが、一人でラーメン屋になんとなく行きづらくなったのだ。


「何かあった?」

「ない。ラーメン屋にするか」

「そうしよう」


 場所を決めると、社長が車を走らせ、近くのラーメン屋に向かった。

 車を停めると、店に入り、食券を購入する。

 そして、店員さんに食券を渡すと、テーブルについた。


「社長は何にしたの?」

「俺は味噌ラーメン。お前は?」

「僕は醤油。セットはもう頼めない」

「わかるなー。前は唐揚げセットやチャーハンセットがデフォだったのにもう無理」


 やはり社長もそうらしい。

 もちろん、年のせいではなく、性別が変わったから。


「入らないよね」

「ああ。お前は特にそうかもな。ロリだし」


 僕達が話しながら待っていると、すぐにラーメンが来たので食べだす。


「うん、美味しい」

「だな。それに久しぶりだわ」

「家とかで食べないの?」


 カップラーメンでもいいし、作ってもいい。


「ラーメンは家では食わんな、お前は?」

「最近はカナちゃんがご飯を作ってくれるからねー。ラーメンは食べないね」


 一人の時はよく食べてた。


「昼はどうしてんだ?」

「カナちゃんがお弁当を作ってくれる。今日は出先だからないけど」

「いい彼女だな。大事にしろよ」

「大事にしすぎて処女を失ったけどね」


 別にいいけど。


「何も言えんな……この前見た時は清楚そうなロリ2人だったんだけどなー」

「社長、地味にロリが好きだよね」


 よくロリロリ言ってるし。


「そうでもないんだがな。まあ、年下の方が好きだが……」

「制服が好きなんだっけ?」

「言い方がよくないな」


 微妙に隠す人だな……


「僕の写真を見て、興奮したでしょ」


 前にセーラー服を着た写真を見せた。


「かわいいとは思ったな」


 こいつ、本当に隠すなー。

 よーし!


 僕はある計画を練りながらラーメンをすする。

 そして、社長に会社まで送ってもらい、仕事に戻った。




 ◆◇◆




「皆さー、コスプレだったら何が好き?」


 僕は遅れていつものファミレスにやってくると、席に着きながら聞く。


「いや、待て!」

「待つにゃ!」

「いきなり会話を始めないでください」


 3人が止めてきた。


「何?」

「えーっと、タマ」

「タマさん、お願いします」


 社長とチヒロっちがニャー子に任せる。


「にゃんでタマが…………まあいいにゃ。エロミ、その格好は何にゃ?」

「高校の時の制服。かわいいでしょ。正直、セーラー服が好きだったからこの高校を選んだと言っても過言ではないね」


 本当は学力。


「にゃんで26歳のお前がセーラー服を着ているのかを聞いてるのにゃ」

「さっきの議題のため」


 皆の好きなコスプレを聞こうと思ったのだ。

 それなら社長も流れで真実を言うだろう。


「…………お前、それをどこから着てきた? さっきトイレで着替えてきたんだよにゃ?」

「家から着てきたよ」

「お前、頭が狂ってるにゃ」

「ニャー子だって、似たようなのを着てたじゃん」


 ニャー子の家に飾ってあった。


「あれは仕事用にゃ。お前、恥ずかしくないのか?」

「別に。ここまで誰も気にしなかったよ」


 歩いて、電車にも乗ってきたが、誰も気にしていなかった。


「こいつ、感性がぶっ壊れているにゃ。お前のどこに平凡要素があるのにゃ」

「普通のJKじゃん」

「26歳にゃ。10年遅いにゃ」


 10年前に着た覚えはないんだけどね。


「僕のことは別にいいじゃん。TS僕っ娘ロリJK(26歳)と思っててよ」

「後、鬼畜なドMと調教済み非処女があるにゃ。属性が多いにゃ」


 お前も大概だけどな。


「ほっとけ。それより皆が好きなコスプレね。僕、浴衣が好き」

「セーラー服じゃないんかい……」


 ニャー子が素で呆れる。


「夏が好きなんだよ。ニャー子は?」

「タマは水着が好きにゃ。下着姿じゃなくて水着にゃ」


 わかるわー。


「社長は?」

「うーん、制服かなー」


 ほら見ろ。

 素直になったぞ。


「僕の姿を見て、興奮する?」

「すまんが、それ以上に呆れながら引いている。俺には絶対に無理なことをしている」


 情けない!

 それでも社長か!


「チヒロっちはー?」

「あんまり考えたことがないですねー。うーん……」


 まだ高校生だしなー。


「というか、チヒロっちってギャル好きだから普通に制服で良いんじゃないかにゃ? 自分も制服を着ているし、微妙なところだとは思うけど」


 というか、年相応というか、学生なんだから変ではない。


「あー、そうかもー……?」


 チヒロっちが微妙に納得している顔になった。


「チヒロっちー、マジまんじー」


 いえーい。


「なんか違う気がします……」

「親父臭いにゃ」

「デリヘル嬢だな」


 うっさいわ!

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