第027話 エロ漫画のようなシチュエーションでエロ漫画のようなセリフ


「ただいまー」


 僕はファミレスを出て、家に帰ると、先に帰っていたカナちゃんに挨拶をする。

 カナちゃんは晩御飯を用意していたようでリビングにいい匂いが漂っていた。


「おかえりなさい。もうすぐで…………」


 キッチンにいるカナちゃんと目が合うと、カナちゃんが固まった。


「どうしたの?」


 僕はコートを脱ぎ、マフラーを取りながらカナちゃんに聞く。


「えっと、先輩ってどこに行ってたんです?」

「友達とファミレスで駄弁ってたよ。いつものやつ」


 カナちゃんには毎週日曜にファミレスで友達と会っていることは伝えてある。


「はい……その格好で? なんでセーラー?」


 皆の好きなコスプレを確認するため……というのはマズいだろうな。


「この前、まだ通じるかどうかの議論になったから着ていった。街中を歩いたけど、変な目では見られなかったよ」

「そ、そうですか……まあ、先輩は似合いますし、まだいけると思います……」

「でしょー。カナちゃんもいけるよ。今度、一緒に出掛けようよ」


 制服デート!


「私は遠慮しておきます」


 あれ?

 きっぱり断られた。

 まあ、変な目で見られることはないだろうけど、カナちゃんの制服姿を見るのは僕だけでいいか。


「もうご飯?」

「あ、そうですね。もうすぐでできますよ」

「じゃあ、着替えてくるよ」


 僕はそう言って、寝室に向かうと、制服を脱いだ。


 あ、癖でパンツを穿いてなかったわ。

 まあ、いいや。


 僕は部屋着に着替えると、リビングに戻り、カナちゃんと一緒に晩御飯を食べる。

 そして、この日の休日を終えると、翌日からまた仕事が始まり、早く週末にならないかなと思いながら仕事をする日々となった。


 そんなある日、仕事も終わり、晩御飯も食べ終え、ソファーでカナちゃんとまったり過ごしていると、電話が鳴る。


「んっ……あ、電話だ」

「誰です?」


 カナちゃんが聞いてきたのでスマホを手に取ると、画面には【社長】と表示されていた。


「社長だね……っ……ほら、この前の人」

「出てもいいですよ」

「え……でも……」

「出てください」


 うん……


 僕は通話ボタンを押すと、スマホを耳に当てる。


「もしもし?」

『エロミか? 今、大丈夫か?』


 大丈夫じゃない。


「う、うん……なーに?」

『実はな、俺の知り合いに実家が温泉旅行を経営しているところがあるんだよ』

「すごっ……社長の知り合い、んっ!」

『どうした?』


 社長が不審そうに聞いてきた。


「いや、さっき、カラオケに行っててね。ちょっと喉が……んんっ!」

『平日なのにハッスルだなー……』

「ごめん、ごめん。社長って、そういう知り合いが多そうだね」

『まあ、色んな付き合いがあるからな。それで泊まりに来ないかと誘われたんだが、1人で温泉に行ってもつまらないし、お前らでも誘おうと思って電話した』

「いいねー……っん。行きたいかもー」


 すごくいきたい。

 色んな意味で。


『…………そうか。土日がいいと思うが、ダメな日とかあるか?』

「特にないよ……んんっ! ごほん、ごほん!」

『わざとらしい咳で笑えてくるな……お前は忙しそうだし、こっちでタマとチヒロに連絡してみる。決まったら連絡するわ』

「そうだね。うんっ! それがいいよ、んっ……あれー? 風邪かなー?」


 おかしいなー?


『うん……エロ漫画のようなシチュエーションでエロ漫画のようなセリフを言わせて悪いな。俺はお前の彼氏でも夫でもないが……』

「何のこと? それよりもありがとうね」

『ああ……じゃあな。ブーンっていう微弱な振動音が聞こえてきたから切るな』


 ホントだ!

 カナちゃんがすごい笑顔だ!


「あ、うん……おやすみなさいぃ!! そこ、ダメッ……!」




 ◆◇◆




「社長、この前はごめんね」


 僕はベン○の後部座席から顔を出し、運転している社長に謝る。


「いや、いい。楽しそうなカップルだなって思っただけだ」

「あの後、僕の痴態を想像して抜いた?」

「抜くものがないっての」


 まあね。


「何があったにゃ?」

「どうしたんです?」


 ニャー子とチヒロっちが聞いてくる。


「君らも社長から今回の旅行の誘いの電話があったと思うんだけど、僕はその時にカナちゃんとソファーに座っててね。そしたらカナちゃんが攻めてきた」

「あー、エロ漫画で見たことあるにゃ」

「NTRものですね」


 社長と同じことを思ったらしい。

 まあ、僕もそう思った。


「風邪引いたとかそれっぽい言い訳をしてたな……」

「完全にそれにゃ」

「エロミ姉さんに電話をする時は気を付けないとプレイに巻き込まれるわけか……」


 ちなみに、ちょっと興奮した。

 てへっ。


「しかも、最後はバイブかローターかは知らないが、振動音がする何かを出してたな。そこまでするか?」


 社長が呆れる。


「あー、それは僕がずっとカナちゃんのおっぱいを触っていたからだね」


 完全に火が着いちゃった。


「お前もしてたんかい……」


 というか、イチャイチャしてて、これからって時に電話がかかってきたんだよ。


「そういえば、カナちゃんは旅行のことを何て言ってたにゃ?」

「いいなーって言ってた。今度、2人でも行こうって話したくらいかな」


 できたらその時までに男に戻ってるといいな。


「ふーん、やっぱり常識改変が起きてるにゃ」

「どういうこと?」

「もし、お前らがガチレズだとしたら女友達と泊まりの温泉旅行に行くという話を聞いて、嫉妬の1つがあってもおかしくないにゃ。でも、カナちゃんはお前が普通に友達と旅行に行く程度としか捉えてないにゃ」


 な、なるほどー。


「もし、これが男だったらどういう反応するのかな?」

「わからないにゃ。試してみるかにゃ?」

「いや、やめとく。何か怖い」

「それがいいにゃ。正直、この常識改変で一番怖いのはカナちゃんにゃ。お前らのその関係が一番歪んでいて、一番危ないにゃ」


 僕もそう思う……

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