第023話 出張
平日の夜、今日もカナちゃんは僕の家に泊まるということだったので一緒に家に帰ると、ご飯を食べ、お風呂に入った。
そして、一緒にテレビを見ながら話をし、いい時間になったのでベッドに行く。
「先輩、ちょっといいですか?」
2人でベッドに入ると、カナちゃんが改まって聞いてきた。
「どうしたの?」
えっちしたい?
「仕事の話なんですけど、実は大阪である講習会に参加したいんですけど、大丈夫ですかね?」
真面目な話だった……
エロミでごめんね。
「講習会? どんなの?」
「えっと…………これです」
カナちゃんがスマホを操作して見せてくれたのは僕達の仕事に関係する講習会だった。
「これは僕も前に行ったね。行きたいの?」
「はい。勉強しようと思って」
偉い子だ……
僕は部長に命じられて渋々行き、タコ焼き食って帰っただけだというのに……
「なるほどねー。じゃあ、明日、部長に聞いてみるよ」
「いいんですか?」
「うん。先輩だし、そのくらいはするよ。あと、まあ、大丈夫だと思うよ。こういうのは積極的な上司だし」
「ありがとうございます。私も勉強して早く仕事を頑張りたいんです」
この子、僕を浄化しにきた天使じゃないよね?
「任せておいてよ」
「先輩、頼りになるー」
カナちゃんがそう言って抱きついてきたので僕も抱き返した。
もちろん、寝るのはちょっと遅れた。
翌日、僕は会社に着くと、部長のもとに向かう。
「部長、ちょっといいですか?」
「ん? どうした?」
まだ始業前なので部長はスポーツ新聞を読んでいたが、顔を上げる。
「明浦さんのことでちょっと……」
「んー? 何かあったか?」
部長が新聞を畳んだ。
「明浦さんがこの講習に参加したいと言っています」
僕はそう言って、さっき印刷した紙を渡す。
「あー、これか……お前はどう思う?」
「明浦さんはやる気もありますし、行ってもいいと思います。1泊になりますが、せっかくやる気を出しているんですからそれを止めるのは……」
よくないぞ!
「そうだな……仕事は空けても大丈夫か?」
「そこは問題ありません。最近は少し落ち着いていますから」
1日、2日かと言わず、1週間でも大丈夫だ。
僕がフォローする。
カナちゃんのためならいくらでもやる。
「うーん……そうか……」
部長が悩みだす。
「何か問題でも?」
「女性社員を1人で行かすのはどうだ?」
いや、子供じゃないんだから……
でも、部長の気持ちはわからないでもない。
この部署に女性社員が入るのは本当に久しぶりらしいのだ。
もちろん、僕を除いてね。
「明浦さんはしっかりしてるから大丈夫だと思います」
「うーん……お前も行くか?」
「僕ですか? 2年前に行ってますけど……」
「どうせ寝てただろ」
ひどい!
合ってるけど!
「付き添いですか?」
「まあ、そんな感じ。お前ももう一回勉強してこい」
心配性なおっさんだなー。
まあ、いいや。
カナちゃんとタコ焼き食べよ。
「じゃあ、僕も行きましょう」
「ん。おみやげよろしく」
部長はそう言って、財布を開くと、五千円をくれる。
「万札では?」
「出張代は出るんだからそれでいいだろ。明浦もだが、お前も後で復命書を出せよ」
「僕もですか?」
「むしろ、お前だ。2年前に【勉強になりました】という一言だけで済ませた西野。ちゃんと書け」
覚えてやがった……
◆◇◆
「僕さー、今度、大阪に行くことになったんだけど、皆、行ったことある?」
いつものファミレス、いつも3人。
そして、いつもドリンクバーとポテトだ。
僕はそのいつもの日曜の日常と化した皆に聞いてみる。
「俺は仕事で何回か行ったな」
「俺も修学旅行で行きましたね」
「タマはないにゃ」
ニャー子はないらしい。
「ニャー子はないの?」
「中学の時の修学旅行が京都、大阪だったけど、タマは風邪を引いて行けなかったにゃ。あの絶望は忘れないにゃ」
そりゃ、悲しいわ。
中学の最大のイベントと言っても過言ではないのに。
「災難だったねー」
「一番の災難は皆が帰ってからにゃ。修学旅行の翌日は皆、その話題だし、疎外感というか孤独感で病そうだったにゃ」
きっつ。
「まさか、それで大人になっても大阪に行ってないの?」
「そうにゃ。京都も大阪も行かないにゃ」
めっちゃ引きずってる……
「エロミはなんで大阪に行くんだ? 出張か? それともカナさんと旅行か?」
暗くなってきたので社長が話を変えるというか、戻す。
「両方、正解。カナちゃんと仕事というか、講習会に参加してくる。まあ、ほぼ遊びに行く」
といっても観光するほどの時間はない。
せいぜいご飯を食べに行くくらいだ。
「それは遊びでいいのか?」
「僕は一度行ってるしね。まあ、カナちゃんが行きたいって言って行くことになったからカナちゃんは真面目に勉強するんだろうけどね」
「お前は?」
「カナちゃんの邪魔にならないように寝てる」
もしくは、スマホ弄り。
「不真面目な奴だなー」
「僕、勉強嫌いだもん」
「まあ、そんな感じはするな……」
でしょー。
「泊まりですか? それとも日帰り?」
チヒロっちが聞いてくる。
「泊まりだね。と言っても朝早くに出て、夕方まで講習。翌日も朝から夕方まで講習で夜に帰る感じ」
「次の日は休みです?」
「うんにゃ。普通に仕事」
「ハードスケジュールっすね……」
いや、社会人はこれが普通。
可哀想だから夢見るJKには言わないけど。
「カナちゃんと一緒のホテルにゃ?」
「2人分の出張代を請求し、一部屋借りる」
大阪の夜を一緒に過ごす。
「それ、大丈夫にゃ?」
「ウチは一律1万円出るから問題ない」
それを超える場合は領収書がいる。
「社長、こういう社員もいるにゃ」
「だろうなとしか言えんな……」
1万円浮くし、部長が5千円くれたからちょっと贅沢をしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます