第018話 二日酔い
「頭痛い……」
僕は社長の家に泊まった翌日、テーブルで頭を抱えていた。
「ほら、水飲め」
社長は水をくれたので飲み干す。
「飲みすぎにゃ」
「騒ぎすぎっすね。あと、エロミ姉さん、いい加減に服を着てください」
言われてみると、僕はマッパだった。
「なんで僕、全裸なの? 誰か剥いた? 犯した?」
「お前が勝手に脱いだにゃ」
「なんで?」
アホじゃん。
「お前が急にエロ話をし始めて、この前、カナちゃんに剃られたって言って、下半身を露出し始めたんだよ」
アホじゃん……
「確かにそんなこともあったね。だから男に戻ったら絶対にカナちゃんのも剃ってやるって思ったんだ」
「それも聞いたにゃ。剃って、鏡の前で背面座〇をして、繋がっているところを見せつけてやるって言ってたにゃ。ドン引きだにゃ。お前、ドMなのかドSなのかはっきりするにゃ」
うーん、これは本当に言ったな……
そう思ってたもん。
「上を脱いでるのは?」
「それはタマさんとどっちが大きいかを言い争っていた時でしたね。Bの柔らかさを教えてやるって言って脱ぎました」
チヒロっちが呆れながら言う。
「アホじゃん」
「アホにゃ。しかも、タマを脱がそうとしていたにゃ。セクハラを通り越して、レ○プにゃ」
レ○プではないだろ。
「社長、僕の下着と服は?」
「ソファーに散らかっているだろ」
そう言われてソファーの方を見ると、僕の服よりもローテーブルに置いてある空き瓶の数が目に入る。
「飲みすぎじゃね?」
「お前がな。最低だったのは空き瓶をタマに挿れようとしたことだ」
「何それ……?」
引くわ。
「お前がタマの処女を奪ってやるって言ったんだよ! お前、鬼畜すぎにゃ! 人畜無害なぽわぽわ系ロリのくせに極悪にゃ!」
そら、怒るわ。
「うーん、覚えがない……」
僕はそう言いながら立ち上がり、ソファーに行くと、下着を着け、服を着だす。
「ひどいにゃ」
「まあ、ニャー子ならいいか……」
ニャー子は優しいから許してくれる。
「ひどいにゃ! よくないにゃ!」
「あー、頭痛い」
「無視!?」
僕は服を着終えると、再び、テーブルに向かう。
「チヒロっち、ごめんね。よろしくないものを見せてしまった」
未成年には毒だっただろう。
「いえ、いつものエロミ姉さんでしたよ」
どういうこと?
「それよりもファミレスに行くにゃ」
ファミレス?
「なんで?」
ここでいいじゃん。
「お前がそろそろ真面目に元に戻る方法を話し合おうって言ったにゃ」
「キチ〇イだったのに?」
「キチ〇イだったのに急に復活してまともなことをしゃべりだしたにゃ。ちなみに、その時にお前が持っていたものはバイブにゃ」
ほんまもんのキチ〇イじゃん。
「どういう状況?」
「これが僕の中に入るんだぞーってアホなことを言っていたら急に真顔になって、さっきの言葉を言ったにゃ」
「シャンパンにシャ〇でも入ってた?」
すげーやばい奴としか思えないんだけど……
もしくは、話を作ってない?
「そんなもん入っているわけないだろ。いいから行くぞ。そろそろハウスキーパーが来る時間なんだ」
社長が腕時計を見ながら急かしてくる。
「金持ちすごい」
僕達は社長の家を出ると、社長のベン〇に乗り、ファミレスに向かった。
◆◇◆
「それで元に戻るにはどうすればいいの?」
ファミレスに着き、ドリンクバーでりんごジュースを入れ終え、戻ってくると、聞いてみた。
「それを話し合うわけだ。やはりなんだが、俺らには何かの共通点があるんだと思う」
「タマもそう思うにゃ。まったく同じ時期に女になったわけだし」
「実はあれからもSNSで同様なケースがないかを調べているんだが、見当たらない。やはりこの現象が起きたのは俺達だけだろう」
社長とニャー子が話を進めている。
「共通点ねー。年齢も仕事もバラバラじゃん」
「最初に自己紹介をした時に気付いたのは苗字に東西南北が入っていて、名前が男女どっちでも通じるでしたよね?」
僕とチヒロっちも話に加わった。
「そうだな。他には何か特殊なことをしていないか?」
「僕はあるけどね。彼女ができた」
「そうだな。だが、それは俺達にはない」
これは確認済みである。
「彼女じゃなくても、良いこととかなかったの?」
「俺は特にないと思う……普通の日だったはずだ。しいて言うなら金曜だったから明日休みだなって思ったくらいだ」
「俺もっすね。明日は土曜で学校が休みだなーって思ってたくらいです。当然ですけど、そんなのは毎週のことです」
金曜の夜に喜び、日曜の夜に絶望するのは皆、一緒だろう。
「ニャー子は?」
「タマは不定期だから特にそういうことは思わなかったにゃ。その日も暇だったくらいで特にいい日ではなかったにゃ」
そうなると、この線は違うか……
「皆に聞きたいっすけど、女になりたいと思ったことはあります?」
チヒロっちが聞いてくる。
「女に?」
「はい。俺は姉貴がいるっすけど、姉貴は良いなーって思うことが多々あったんで。それでどうかなーって思って」
なるほど。
願望が叶った説か。
「タマはあるにゃ。前にも言ったけど、学校の男の先生が好きだったから女だったら良かったと思ったにゃ」
それだったらニャー子は告白したんだろうか?
微妙に引きずってそうだから聞かないけど。
「俺は特に感じたことないな……エロミはどうだ?」
社長が聞いてくる。
「あるわけないじゃん。✕✕✕✕できないんだよ? というか、彼女ができたのにそんなことを思うわけがない」
「あー、エロミ姉さんはそうっすね。そうなると、これも違うか……」
チヒロっちが悩みだした。
「なあ、一度、全員のプロフィールというか来歴をまとめないか? それで見えてくることがあるかもしれない」
社長が提案してくる。
「良いんじゃない?」
「タマも良いと思うにゃ」
「俺も賛成っすけど、どうします? 一人ずつ話していきますか?」
「いや、俺が書類を作ってみるからそれに書き込もう。すまんが、少し時間をくれ」
まあ、作ってもらえるならいくらでも待つけど……
「大丈夫? 忙しくない?」
社長って忙しいでしょ。
「問題ない。こういう資料をまとめるのは得意というか好きなんだ」
「じゃあ、お願い」
僕達は社長に頭を下げる。
「よし。じゃあ、次の議題な。エロミの酒癖の悪さについてだ」
いや、いいよ、それは……
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