第017話 タワマン


 土曜日の昼間、僕は部屋で一人でAVを見ていた。

 せっかくの休みだが、カナちゃんが法事で実家に帰ってしまったので暇だったからだ。


「うーん……別に男の裸には興奮しないな……」


 やっぱり女の子がいい。


「しかし、カナちゃんと付き合ってから性癖が微妙に変わってしまっている」


 昔は巨乳だったら何でもよかったが、今はそこに低身長が加わらないといけなくなってしまっていた。


「あんまりそういうのは少ないんだけどなー……やはりカナちゃんの写真と私物で抜くか……」


 抜くという表現もおかしいけど……


 僕はカナちゃんの服を嗅ぎながら✕✕✕✕をし終えると、暇なのでソファーでぼーっとする。

 すると、スマホの着信音が鳴り響いたため、スマホを手に取る。

 スマホ画面には【社長】と表示されていた。


「もしもしー?」


 僕は着信ボタンをタップすると、電話に出る。


『エロミか? 今大丈夫か?』

「大丈夫だよー。✕✕✕✕も終わったし」

『お前な…………カナさんは?』

「法事で実家に帰った。寂しいからカナちゃんの服の匂いを嗅ぎながらしてた」


 すごくいい匂いがした。


『いらん報告だな……』

「別にいいじゃん。僕の痴態を想像しながらしても良いよ。ところで何か用?」

『せんわ! あ、いや、実はもらい物で牛肉をもらったんだが、食べきれそうになくてな……いるなら渡そうと思って』


 マジ?

 社長、すげー!


「いるいる! ちょうだい」

『じゃあ、明日、持っていくわ』


 やったぜ!

 あ、でも、待てよ。


「社長さー、今日、仕事?」

『いや、今日も明日も休みだ』

「社長の家に遊びに行ってもいい? 牛肉パーティーしようよ」

『別にいいぞ。あー、そうなると、2人にも声をかけるか』


 確かに仲間外れは可哀想だ。


「そうしよう。僕はニャー子に声をかけるよ」

『じゃあ、俺はチヒロに声をかける。いつものファミレスに来てくれ。車を出すから』

「りょうかーい。あ、泊まってもいい?」


 社長の家って絶対にすごいでしょ。


『別にいいぞ』

「やった。じゃあ、準備していく」

『ん。わかった』


 僕は電話を切ると、すぐにニャー子に電話する。


「もしもし、ニャー子?」

『タマにゃ……もう訂正するも飽きたけど』


 というか、最近、まったく訂正してこないね。


「ニャー子は今日、暇? さっき社長から電話があって、牛肉をもらったからパーティーするって話になっているんけど、社長の豪邸に泊まりにいこうよ」

『牛肉!? すごいにゃ! 社長のもらい物は絶対にA5ランクにゃ!』


 確かに……


「食べに行こうよ。無理なら僕がもらうけど」

『行くにゃ! 食べるにゃ!』

「じゃあ、例のファミレスに集合ね」

『わかったにゃ! すぐに行くにゃ!』


 僕はニャー子との電話を終えると、準備をし、ファミレスに向かった。




 ◆◇◆




 ファミレスに行き、ニャー子と合流し、しばらく待っていると、社長がチヒロっちを助手席に乗せて、例のベン〇でやってきた。

 僕とニャー子が後部座席に乗ると、社長の家に向けて出発する。


「ニャー子、僕達、やくざのパーティーに連れていかれているよ」

「おい……」

「いけないパーティーにゃ。いけないブツを打たれて、乱〇パーティーにゃ」

「おい……」

「ロリ2人と未成年っすね」

「おい……」


 社長がいちいちツッコんでくる。


「チヒロっちも泊まるの?」

「そうっすね。親に許可をもらいました」

「豪邸だもんね」


 楽しみだなー。


「いや、ウチは豪邸じゃないぞ。一人なんだからそんな所に住んでも寂しいだけだろ」

「でも、アパートじゃないでしょ?」


 少なくとも4人が泊まれるくらいの広さはあるはずだ。


「まあ、マンションだな」

「タワマンにゃ」

「まあ………」


 すげー!

 タワマンなんて入ったことない!


 僕達がワクワクしながら社長のタワマンに向かった。

 そして、社長のタワマンに着くと、地下駐車場に車を停め、エレベーターで上がっていく。


「すごいにゃ。これが資本主義にゃ」

「お前は資本主義に逆らった勝ち組だけどな」


 宝くじはズルい。


「お前は彼女がいるからいいだろ」

「まあね!」


 がはは!

 巨乳だぞ!


「ほら、着いたぞ。部屋に入るまで騒ぐな」


 エレベーターで社長の部屋がある階層までやってきたのでエレベーターを降り、部屋に向かう。

 そして、社長の部屋に入ると、廊下を抜け、リビングに向かった。


「ひょえー、なんだこの部屋?」

「すごいにゃ。さすがは社長にゃ」

「見てくださいよ! すごい眺めです」


 チヒロっちが興奮しながら窓から外を眺めていたのでボクとニャー子も向かう。


「すごい!」

「ヤバいにゃ!」


 窓からは都会の街並みを一望でき、いつぞやに行ったなんちゃらツリーを思い出す風景だった。


「見るにゃ、人がゴミのようにゃ」


 ニャー子がお決まりのセリフを言う。

 なお、僕も同じ事を思った。


「バ〇ス!」

「人のマンションを壊そうとするな」


 社長が苦笑いを浮かべながらツッコんでくる。


「社長、すごいね」

「すぐに飽きるがな……」


 言ってみたいセリフだわ……


「社長、いつもここに座っているの?」


 僕は窓から離れ、L字型のふかふかソファーに座りながら聞く。


「まあな」

「ニャー子、チヒロっち、隣に座って」


 僕がそう言うと、ニャー子とチヒロっちが左右に座った。

 僕は2人の肩を抱き寄せると、足を組む。


「こんな感じ?」

「両隣はいないな……」

「嘘だー。こうやって大人なお姉さん達を呼んで遊んでいるんでしょ。おら、ニャー子、しゃぶれ」

「しゃぶるものがないにゃ」


 なかったにゃ。


「そんなことしてないわ。大人しく待ってろ。肉はどうする?」


 社長が聞いてくる。


「焼きたまえ。レアで頼むよ。私は肉も女も生が好きだからね。ふはは!」

「タマもレアにゃ」

「よくわかんないので俺もそれで……」


 多分、肉はレアで食べる方が美味しいだろう。


「じゃあ、用意してくる。あと、エロミは正気に戻れ……」

「こいつはこれが平常運転にゃ」

「残念ながらそうだったな…………お前ら、何か飲むか?」


 飲み物……

 ウーロン茶じゃないだろうな……


「ロマネ・コンティーの100年ものを頼むよ」

「タマはシャトーなんちゃらの30年ものにゃ」

「えっと、じゃあ、ドンペリの50年もので……」

「お前らが何も知らないのはわかった。シャンパンでいいな? チヒロはダメだが」


 こういうのは気分なんだよ。


 社長は呆れながらキッチンに向かうと、グラスとシャンパンとチヒロっち用のジュースを持ってきた。


「エロミ、ケツを出すにゃ」

「何をする気!? シャンパンでの下半身攻撃はNGだよ!」

「まあ、やめとくにゃ。お前、ローターをカナちゃんに仕込まれている可能性があるにゃ」

「ねーわ」


 今は……


「いいから大人しく飲んでろ」


 僕は飲むことにし、シャンパンを開けると、グラスに注いでいく。

 なお、栓はどこかに飛んでいった。


「飲もう」

「乾杯にゃ」

「乾杯!」


 僕達は乾杯をすると、飲みだす。


「いやー、すごいね。昼間からタワマンでシャンパンを飲んでるよ」

「社長は資本主義に魂を売った女にゃ」

「よくわからなすぎてついていけません」


 僕もわかんない。


「これが格差社会だよ」

「とりあえず飲むにゃ」

「そうだね」


 僕達はどんどんとお酒を飲んでいく。

 そうやっていると、社長が焼いた肉をテーブルに置いたのでテーブルに向かった。

 そして、A5ランクと思わしきステーキを食べていく。


「美味しいね」

「美味いにゃ」

「ご飯が欲しいっすわ」


 さすがは学生。

 正直、僕も欲しいけど……


「しかし、美味しいは美味しいけど、量は食べられないね」


 脂が……

 口に入れた瞬間に溶けるぞ、これ。


「だろ? だからお前らに食べてほしかったんだわ。俺一人では無理」


 どんだけもらったんだろ……


 僕達はステーキを食べ終えると、ソファーに戻り、シャンパンを飲みながらまったりとする。


「いやー、すごいね。何もかも豪華」

「タマもこの生活みたいなことをしようと思ったけど、すぐにお金が無くなると思ってやめたにゃ」


 賢明だと思う。

 この生活に慣れたら戻れそうにない。


「一人だと何の面白みもないがな……」


 社長が自虐的な笑みを浮かべながらシャンパンを飲む。


「わかるにゃ」

「わかるの? そうか、ニャー子は寂しいのか……キスしてあげる」


 僕はニャー子を抱き寄せた。


「やめるにゃ! お前、飲みすぎにゃ! って、にゃーー!!」


 僕はニャー子にキスをしてあげた。


「やめんか」


 社長が止めてきたのでニャー子から離れる。

 しかし、ニャー子はソファーで仰向けになったまま、呆けていた。


「ど、どうしたんすか?」


 チヒロっちが声をかける。


「舌を入れられたにゃ……しかも、こいつ、めちゃくちゃ上手いにゃ」

「ご、ご愁傷さまです」

「非処女は違うな……」

「言っておくけど、僕は世界で一番上手いからね。何しろ、男の快感も女の快感も知っているから。自分が2人いたら✕✕✕して、自分を5秒でイカせる自信がある」


 ハイブリッド!


「こいつ、行くところまで行ってるにゃ……」

「というか、5秒って……早漏なだけでは?」


 社長、こらー!


「よし、ニャー子、こっち来い。僕のテクを見せてやる」

「お前、もう飲むにゃ。飲みすぎにゃ」


 いーや、まだ飲める!


「こいつ、酒癖悪いな……」

「告白したその日にカナさんを家に連れ込んで押し倒した人ですし……」

「そういえば、そうだった……お持ち帰りされる人間ではなく、お持ち帰りする人間だったな」


 社長とチヒロっちが僕の悪口を言っている。


「ニャー子、逃げるな、こっち来い!」

「逃げるに決まってるにゃ! こっちに来るにゃ! タマはAだぞ」


 あ、そうだった。


「つまらん……」


 僕はソファーの端に逃げたニャー子を放っておき、シャンパンを飲む。


「こいつ、死んだ方がいいにゃ……」

「うるさいなー。お前ら、もっと大きくなれよ。そうしたらセフレにしてやるのに」

「こいつは死んだ方がいいな」

「死んだ方がいいっすね」


 カナちゃんに✕✕✕✕してもらうまでは死なんわ!

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