第015話 皆の性
「お邪魔しまーす」
「どうぞにゃ」
僕は靴を脱ぐと部屋に上がった。
部屋は汚いというわけではないが、物が多く、ごちゃごちゃしていた。
今日はカナちゃんに用事があり、暇だったのでニャー子の家に遊びに来たのだ。
「1DK? 7億当たったじゃないの?」
普通の1人暮らし用の部屋で7億も持っている勝ち組の部屋には見えない。
「色々と計算をすると、すぐに消えそうなんだにゃ」
「マジ? 僕の生涯賃金の何倍って感じなんだけど、そんなにすぐに消えるの?」
具体的な数字はわからないが軽く2倍以上はありそう。
「いや、最初は働かなくていいにゃって思ったんだけど、暇すぎでお金を使うことが趣味になってきたのにゃ。そうしていると、あっという間に溶けそうだったのにゃ。だから無駄遣いはやめたし、いい部屋に住むのもやめたにゃ。よく考えたら一部屋で十分」
そんなもんかねー。
「しかし、物が多いね」
「アイドルだから仕事道具やもらい物が多いのにゃ。あ、お茶にゃ」
ニャー子がペットボトルのお茶をくれる。
「どうも。これももらい物?」
「イベントの時にもらった残りにゃ。消費してくれにゃ」
まあ、いいけど……
「色んな服があるね」
イベントで着る服もだろうが、私服も多い。
「まあにゃ。SNSにあげたりしないといけないし」
「この部屋で?」
「まあ、色んなところにゃ。まったく興味のないスイーツ店に行って、写真を撮ったこともあるにゃ」
「めんどくさいねー」
僕はカナちゃんと行くけど、1人では行かないと思う。
「あ、エロミ、一緒に写真を撮ってくれにゃいか?」
「僕? なんで?」
「実はマネージャーに友達との写真も上げるように言われたにゃ」
わかった!
百合営業だ!
「いいけど、他の2人はいいの?」
「未成年はマズいし、社長も迷惑がかかりそうにゃ」
それもそうだな。
「じゃあ、僕しかいないね。でも、そのまんま上げるなよ」
「わかってるにゃ。ちゃんと顔は隠すにゃ。タマより人気が出たらマズいにゃ」
いや、僕への配慮だよ。
「じゃあ、やろう」
僕はニャー子のもとに行くと顔を寄せる。
「別にこういうのじゃないにゃ」
「百合営業じゃないの?」
「まあ、それでもいいか……撮るにゃ」
「はいはい」
ニャー子はスマホで写真を撮ると、確認する。
「お前、前から思ってたけど、笑顔が上手いにゃ……」
「普通に笑うだけじゃん」
「裏表のない奴は楽でいいにゃ」
微妙にバカにしてないか?
「それより、ニャー子、面白いものないの?」
「お前が好きそうなのはAVしかないにゃ」
「ロリ系とイケメン系でしょ?」
「まあにゃ。後は同人誌にゃ」
それもロリとBLっぽいな。
「趣味が合わない……」
「お前は巨乳だったら何でもいいわけだしにゃ。でも、たまにはいいかもしれないにゃ。NTR物見るか?」
「彼女持ちにそれを見せようとする根性がすごいわ。見せて」
「見るのか……ほれにゃ」
ニャー子が渡してくるのでそれを読みだす。
「…………うーん、僕はどうしても寝取られる側より寝取る側に感情移入しちゃうんだよねー」
「お前は調教済みのドMのくせに、Sっぽいというか、鬼畜っぽいところがあるしにゃー……」
「そう?」
人畜無害で評判なんだけど……
「お前、内心はカナちゃんをいじめたいだろ」
「うん、男に戻ったらやられたことを全部やり返す予定」
まあ、まずはあのおっぱいで✕✕✕✕してもらうけど。
「Sっ気もMっ気も突き抜けてるにゃ。業が深いにゃ。お前は絶対にエロミにゃ」
エロミというあだ名を悪口に使うのはやめてくれ。
◆◇◆
「社長ってさー、童貞?」
いつものファミレスにいつもの4人が集まったので開口一番に聞いてみる。
「お前は急に何を言い出すんだ?」
「いや、気になっただけ」
「ふむ……彼女がいたことはないな」
でも、この言い方は童貞じゃないっぽいな。
「夜の店とかそういうプロフェッショナルな相手?」
「そうだな……」
「すごい?」
「付き合いで行く場合は高級店だからな」
すげー。
「社長はすごいなー。タマは?」
「お店ならあるにゃ。宝くじが当たった時に行ってみた。多分、もう行かないにゃ」
ハズレを引いたようだ。
「チヒロっちはないよね? まさか彼女がいたことがあって、実は童貞じゃないってことはないよね?」
「ないっすね。前に言いましけど、フラれたのでそれを引きずってます」
思ったより、傷は深かったようだ。
「そっかー……」
「エロミ姉さんは…………童貞どころか処女ですらありませんでしたね」
「童貞は怪しいけどね。多分、したんだと思うけど、記憶にないんだもん。これは脱童貞にカウントしていいの?」
早く戻りたいなー。
お返しに泣き言を言うまで突きまくってやるのに……
カナちゃん、やめてって言ってるのにやめてくれないんだもん。
「お前はもう童貞とかそういう次元にはいないにゃ」
「そうだな……」
「男としての性経験を遥かに凌駕してますもんね」
早く男に戻りたいなー。
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