第008話 性癖 ~side社長~
俺は昼になったので車に乗ると、タバコに火をつけながら出発する。
男だった時は身長も高かったが、今は170センチしかない。
女としては高い方だと思うが、男の時と比べてかなり小さくなっている。
だから車の運転も感覚が異なってしまったので一苦労だ。
俺がタバコを吸い終えると同時にいつものファミレスに到着した。
そして、車を駐車場に停め、車から降りると、ちょうどチヒロが自転車を駐輪場に停めているのが見えた。
「チヒロ」
俺はチヒロのもとに近づくと、声をかける。
なお、俺はチヒロっちとは呼ばない。
そんなキャラではないからだ。
「あ、社長。相変わらず、すげー車に乗ってますね」
チヒロが俺の車を見る。
「一応、社長だからな。見栄もある」
「今度、乗せてくださいよ」
こんなギャルを乗せるの?
パパ活に思われないか?
あ、いや、俺も今は女か……
俺も思わず、苦笑した。
「社長?」
「いや、すまん……車な。お前、自転車で来てるんだったな? 迎えにいってやるぞ」
「嬉しいですけど、いいんっすか?」
「これから寒くなるし、きついだろ」
もう11月になる。
俺達の性別が変わって5ヶ月になろうとしていた。
「きついっすねー。制服のスカートがきついです」
女子はなんであんなに足を出して過ごせるかまったくわからん。
「お前、制服以外でスカート穿いているか?」
「いや、無理っす。社長は?」
「俺も仕事のスーツ以外は無理だ」
正直、あのタイトスカートも抵抗がある。
「ですよねー。あ、入りますか。多分、スカートにまったく抵抗ない2人が待ってます」
「そうだな……」
あいつら、すごいわ。
◆◇◆
俺とチヒロがファミレスに入ると、いつものテーブルに向かう。
すると、並んで座っているスカートを穿いたエロミとタマがじゃれていた。
あの2人はたまにいがみ合うが、基本的には仲が良いのだ。
それにしても、エロミはロリにしか見えないが、同じような身長でツインテールにしているタマもロリにしか見えない。
そんな2人が並んで座っていると、微笑ましい気がしてくる。
まあ、会話の内容はゲスいんだろうけど。
「よう。何を話しているんだ?」
俺はチヒロと共に席につきながら尋ねる。
「エロミのエロ話にゃ」
やっぱり……
「昨日は何をしたんっすか?」
チヒロが呆れながら聞く。
「最近さ、カナちゃんがSっぽいんだよね」
お前がMなんだろ。
「具体的には?」
「昨日、一時間近くもローターで焦らされたよ。あんなエロ漫画でしか見たことないシチュエーションでエロ漫画でしか見たことないセリフを言わされるとは思わなかった」
エロミ……
こいつの恐ろしいところはこれを平然と話すところだ。
「エロ漫画、ですか……」
チヒロが呆れたようにつぶやく。
「そうそう。しかも、どちらかというと、カナちゃんに言わせたかったのに言わされる方とはね……早くデザートイーグルを取り戻したいよ。そうしたら立場が逆転するのに」
しないと思う。
「デザートイーグル? お前はどうせ水鉄砲にゃ」
「あー、見せてやりたい……! デザートイーグルだったのに!」
くだらん会話をしてるな……
小学生か。
「お前がドMのド変態なのはわかってるにゃ」
「違うっての。僕はカナちゃんを愛しているの。だからカナちゃんを受け入れているだけ」
エロミがドヤ顔をする。
「カナちゃんの一番好きなところはどこにゃ?」
「おっぱい」
エロミが即答した。
「それが愛にゃ?」
「愛だよ。皆だって性癖の一つや二つあるでしょ」
今日の議題は性癖か……
こいつ、本当に男に戻る気あるのか?
というか、男に戻る会議はどうなったんだろうか?
「性癖ねー……」
チヒロが考え出す。
「よし、1人ずつ言っていこう。大丈夫! 皆、良い人だから引かない」
皆、お前に引いてるぞ。
「せっかくだからクイズにするにゃ」
「クイズ?」
「性癖当てクイズにゃ。じゃあ、社長から」
俺からか……
俺の性癖ってなんだっけ?
「よし、ニャー子はどう思う?」
「タマにゃ。社長はどう見てもSにゃ。縛るのが好きだと思う」
「あー」
エロミ……
あー……って何だよ。
「チヒロっちはどう思う?」
「うーん、Sなのはなんとなくわかるっす。バックとか好きそう」
「わかるにゃ。お尻を叩いてそうにゃ」
「カナちゃんと一緒じゃん」
エロミ……
叩かれているのか……
「エロミはどう思うにゃ?」
「社長は初めて会った時から言動でわかっているんだよ。この人、処女好きだね」
うーん……
「社長、答えをどうぞにゃ」
タマが振ると、3人が俺を見てくる。
「Sなのは合っている気がする。というよりも主導権が向こうなのが嫌だ。処女は……どうだろう?」
わからん。
「概ね合ってたね」
「処女厨だにゃ」
「本当の性癖をオブラートに包んでいるのが丸わかりっす」
おい!
「次はチヒロっちにゃ。でも、こいつはわかりやすいにゃ」
「そうっすか?」
俺もわかる。
「ギャルでしょ」
「ギャル好きにゃ」
「だと思う」
だって、自分でそういうファッションをしてるし。
「あー、まあ、好きっすね」
「普通にゃ」
「まあ、高校生だし、これから色々と目覚めるんでしょ」
エロミは目覚めすぎだけどな。
「僕はー?」
「お前はいいにゃ。業が深すぎる」
「エロミさんは存在がエロですし」
「何でもやりそうなところがあるな……」
普段の言動がやばすぎる。
「ひっで……じゃあ、ニャー子は? アイドル好き?」
「タマにゃ。うーん、タマは当たんないと思うにゃ」
「そうなの? そんなにドン引き?」
エロミ以上なのはそういないと思うが……
「ドン引きにゃ」
「マジ? 怖いんだけど、皆言ったから聞こう。何?」
エロミは度胸があるな……
「うーん、性癖と言うより、タマは男でも女でもどっちでもいいにゃ」
マジか……
「えー……引くわー」
エロミが嫌な顔をする。
「エロミ、デリケートなところだぞ」
最近はそういうのがうるさい。
「えー……でもさー……ニャー子は男でもいいの?」
「タマにゃ。そうにゃ」
「男にはおっぱいないよ?」
こいつの基準はそれしかないのか?
「別に女でもあるとは限らないにゃ」
「まあ、ニャー子もないしね。僕、Eカップ以下の人には何の魅力もないと思っているから賛同できないや」
こいつ、ヤバい……
「お前、絶対に有名人になったら大炎上するにゃ。絶対にブログとかするなよ」
タマがドン引きしている。
「俺らもEカップもないっすよ」
この中で一番大きいのは俺だろうが、それでもDだ。
「うん、ないね。だから僕らは魅力ゼロ。あるのはカナちゃんだけ」
まあ、そもそもな話、俺ら、男だし。
「エロミ的にはこんなにかわいいタマでもダメかにゃ? アイドルにゃ」
「いや、そもそも彼女いるし」
「お前、Eカップの女が迫ってきたらどうするにゃ?」
タマがそう聞くと、エロミが腕を組んで悩み出す。
「………………」
こいつ、クズだ……
かわいい顔してドクズだ。
「お前、色んな意味で死んだ方がいいにゃ」
「あ、いや。浮気なんてしないよ。カナちゃん一筋!」
ロクな死に方せんな、こいつ……
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