第32話 駆け抜けろ
第六層に到着!
では、アプリでLIVE配信をスタート!
「くもくもです! 今日は昨日に引き続き、沖縄ダンジョンにいます。ただいま、第六層です。このダンジョンは第十階層まであるみたいなので、今日はそこまで目指したいと思っています」
第六階層は上の層に比べて、マグマが少ない。
細い通路が網の目のように張り巡らされている感じだ。
明かりはまずまず。点在するマグマによって照らされているからだ。
書き込みを見ると、アリスとクオンが挨拶してくれていた。
加えて、たくさんの視聴者たちが、待ってましたと言わんばかりに書き込んでいる。
沖縄ダンジョンは未開の地なので、視聴者たちにとっても魅力的なのだろう。
「下に進むごとに暑さがますと思っていましたが、第六階層は今までより涼しいです。あっ、そうだ! 今回のアイテムクラフトは、魔剣フランベルジュです。では進みながら、素材を集めていきます」
出発進行!
第六階層は、巨大な迷路のような構造をしているので、アプリのマッピング機能が大いに役に立ちそうだ。
モンスターは今のところいない。
他の階層は、たくさん湧いていたのに……。このことにも違いがあるな。
「おっ、いました! モンスターです」
見た目はアリだ。
それでも大きさは俺の二倍くらいある。真っ赤な体をしており、ところどころが刃のように尖っている。
突進されたら、細切れにされそうだ。細い通路だし、躱すことができないので、結構厄介なモンスターかも。
鑑定してステータスを確認する。
◆アサルトアント(ポーン) 種族:蟻
属性 :強酸、炎
弱点 :なし
力 :120
魔力 :20
体力 :100
素早さ:180
器用さ:100
硬度 :60
弱点なしか。炎属性なら、水や氷が弱点のモンスターが多かったのに、アサルトアント(ポーン)は違うようだ。
それにしても、ポーンという記述が気になる。
他にも種類がありそうな感じがする。
俺は突進してくるアサルトアント(ポーン)に向けて、アイシクルを放つ。
細い通路で逃げ場がないのはお互い様だった。
鋭い氷の刃によって、アサルトアント(ポーン)は四散した。
「よしっ、倒せました。ドロップ品は、アサルトアントの刃でした。これは今回のクラフトで求めている素材ではないですね。欲しいのはアサルトアントの王冠です」
戦いを聞きつけて、たくさんのモンスターが駆け寄ってくる音がこだましてきた。
この狭い通路で大渋滞を起こしてしまいそうだ。
戦っても良いのだが、もしポーンなら欲しいドロップ品ではないので避けて通りたいところ。
クラフトに必要なアサルトアントの王冠は、名前からおそらくアサルトアントの親玉だと思う。
通路を駆け回っている兵隊アリではなさそうだ。
俺は無駄な衝突を避けて、モンスターの気配のない通路を選んで進んでいく。
スマホのマッピングを確認しながら、最短ルートで大階段があると思われる大広場に出た。
「ああ……そうきたか」
大階段を塞ぐように巨大な蟻塚が作られていた。
あれを壊さないと、先に進めないようになっている。
「あの蟻塚の先に下への大階段があります。今から破壊して、道を開きます」
書き込みも、蟻塚の大きさに驚いているようだった。
数発のアイシクルを放って、蟻塚を貫通させようとするが……。
分厚すぎて駄目だった。
そして、攻撃でできた穴から、アサルトアント(ポーン)がワラワラと湧いて出てきた。
どんだけいるんだよ! と思うほど次々とアサルトアント(ポーン)が増えていく。更には、大広場に繋がら通路からも援軍がやってきた。
四方八方に囲まれてしまう。
もうダンジョンというより、アリの巣だな。
そんな時には、氷魔法ニブルヘイムの出番だ。
「ニブルヘイム! 極寒の領域で、大人しくしてもらいます」
熟練度が増してきたニブルヘイムは、アサルトアント(ポーン)をすべて凍らせた。それどころか、巨大な蟻塚までカチコチだ。
「蟻塚まで凍らせてしまったので、解凍したいと思います。新たに習得した炎魔法を使います」
横からアイシクルで駄目なら、下から吹き飛ばしてやる。
右手を蟻塚に向けて、
「ボルケーノ! ボルケーノ! ボルケーノ!」
念のための三連発攻撃だ。
一発目で瓦解した蟻塚は、二発目、三発目で完全に崩れ去った。
中にまだいたアサルトアント(ポーン)も一緒に倒せたようだ。
俺は周囲に散らばったドロップ品をせっせと回収する。
「炎魔法ボルケーノは敵の足元からマグマを噴出させます。炎属性のモンスターが多い沖縄ダンジョンでは、ダメージを与えにくいです。ですが、使いようによっては面白い魔法だと思います」
書き込みには「炎魔法スゲー」や「マグマ召喚だ」など称賛してくれるものが流れてくる。ふふふ……実はそれよりもヤバい上位魔法があるのだ。
威力がありすぎて、使う場所やタイミングを考慮しないといけないほどだ。
まだ温存している炎魔法メルト。蟻塚に使うのは、絶対にオーバーキルもいいところ。
それに熟練度が足りない状態でメルトのコントロールは難しい。広い空間だからといって、ミスをするとモンスターと一緒に焼かれてしまうかもしれない。
防火装備をしているのに、メルトを使うとめっちゃ熱いから……恐ろしい魔法だよ。
「では、第七階層へ降りていきます! ここも第六階層のように楽だったら良いのですが……」
順調! 順調!
第七階層も……上の層と同じ造りをしていた。
なるほど、構造からモンスターが予想できる。
「どうやら、アリの巣は続いているようです。あっ、早速アサルトアントが現れました」
真っ赤な体が特徴なのですぐにわかる。
ポーンの中に違う個体が混ざっているぞ。
顔が盾のような形をしており、ポーンより大きい。
鑑定して確認する。
◆アサルトアント(ルーク) 種族:蟻
属性 :炎
弱点 :なし
力 :100
魔力 :50
体力 :300
素早さ:40
器用さ:50
硬度 :550
硬度が高いぞ!
ミスリルソードの刃が欠けてしまいそうだ。
試しに氷魔法アイシクルを放って、硬度を実際に確かめてみる。
「アサルトアント(ルーク)はとても硬いです! アイシクルの攻撃を弾きました。すごい!」
アイシクルに耐えるモンスターは初めてだ。
大きな頭の盾は、鑑定した通りの性能をしていた。
狭い通路であのような盾を向けられながら突っ込まれたら逃げ場がない。
しかし、果たして体のすべてがあの硬度なのだろうか?
また試してみるか……。
俺はミスリルソードを鞘から引き抜く。
一気にダッシュして、アイシクルで覆ってミスリルソードを保護する。
そして、ミスリルソードを振り上げる。
アサルトアント(ルーク)の頭を思い切り、叩き込む。
軋むような轟音が鳴り響く。
ミスリルソードを保護していた氷が砕け散る。そしてアサルトアント(ルーク)の大きな頭は地面に深々と食い込んだ。
俺は顕になった胴体に、ミスリルソードで斬り込む。
「思った通り、体は柔らかいです」
盾のような顔を弾いて、胴体をさらけ出せば、難なく倒せる。
沖縄ダンジョンでは魔法ばかりだったから、剣術も鍛えておきたかったから丁度いい相手だ。
アリスに教わった動きを思い出しながら、ミスリルソードを振るう。
ポーンはアイシクルソードの前では、案山子に等しい。
それに比べて、ルークはどうやって盾のような顔の隙間から攻撃するかを考えるのは面白かった。
それと剣を使ったアクションは動画が映える。LIVE配信ではぜひやっておきたかった。
俺の見様見真似の剣術は、流れてくる書き込みを見るに好印象だったようだ。
アサルトアントの顎牙との押し合いは、圧倒的に俺のほうが上だった。
力のステータスが俺が上回っているからだろう。
それに合わせて、段々とステータスがうまくコントロールできる実感が湧いてきた。
剣を振るって実戦することで、日常生活で支障をきたすほどの力の加減が、自分でも驚くほどのスピードで身についていく。
ダンジョン探索は最高だな! 探索者としての力を鍛えるには、これ以上の場所はない。
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