第23話 未知へ探索

 第二階層にやってきた。

 むっとした熱気が強くなったように感じる。水炎魔の鎧を装備していても、ダンジョンの温度上昇がわかる。

 この鎧を装備せずに、第二階層に立っていたら燃えがっていたかも……。


 もしかして、下の層へ進むごとに熱さが増していくのだろうか。

 そうなると、最下層では水炎魔の鎧だけで無理じゃね!?


 よしっ、一旦帰還して、沖縄ダンジョンへ入り直そう。

 ふふふ……困ったときのクラフトアイテム。


「早速、一時退却」


 はぁ……納屋ってこんなに涼しかったんだ。いつも蒸し蒸しして、暑苦しいと思っていたのに。

 改めて納屋の居心地の良さに感動してしまう。

 いかんいかん。俺はまたあの灼熱地獄へ行かないといけないのだ。

 と思いつつ、その前に水分補給しよう。

 装備を解除して、家に戻る。両親は仕事なので、静かなリビングを通って冷蔵庫の前へ。


 やっぱり冷たい麦茶に限るぜ。

 ゴクゴク……ゴクッ!

 プッハー! 生き返る!!


 麦茶を水筒に入れて、アイテムボックスへ。

 時計を見れば、もう18時だ。夕飯まで後一時間。

 第二階層まで制覇しておきたい。


 善は急いで、納屋に戻って探索者に変身! そしてダンジョンポータルへダイブ!!

 戻ってきました。灼熱地獄へ。


 俺は一心不乱にスマホを見入っていた。

 まだかなまだかな……キター!


 新しいクラフトレシピだ。

 やっぱり神アプリだ! 沖縄ダンジョン探索にアプリも協力してくれているみたいだった。


◆烈火のブーツの素材

 ・ファイアスライムのコア ✕ 500

 ・フレイムタートルの甲羅 ✕ 100

 ・ミスリル ✕ 50


 烈火のブーツを鑑定してみる。

 『炎の精霊の加護により、熱さを吸収して体力を回復させるブーツ』


 おおっ!

 熱さを吸収! しかも体力を回復までしてくれるとはっ!

 早くクラフトするしかない。ファイアスライムのコアが500個は大変だけど、相手はスライムだから大したことない……ん!?


 俺は遠くで地面を這っているマグマの塊を見て、ミスリルソードを落としてしまった。


「デカッ! ファイアスライムでかいって」


 新宿ダンジョンにいたスライムなんて小粒と思えるくらい大きかった。

 あれを500匹倒すの? 

 ブルドーザーみたいなデカさのスライムと向かい合う。


「威圧感がすごいし、熱っ」


 ここは氷魔法のニブルヘイムだ。

 極寒の地へようこそ! ファイアスライムのカチンコチンだ……ん!?

 えっ、なにそれ!


「脱皮した!!」


 凍った表面を脱ぎ捨てて、燃え上がるマグマが顔を出した。

 少しだけ小さくなっているから、効果はあったと思う。

 ニブルヘイムで心まで凍らせられない!?

 熟練度が足りないせいだろうか……それともファイアスライムの熱量がそれ以上なのか。


 今のニブルヘイムでは決定打にならなかった。


「ボスモンスターじゃないのに強いぞ」


 ファイアスライムを鑑定してみる。


◆ファイアスライム 種族:無形

属性 :炎 

弱点 :水、氷

力  :10

魔力 :100

体力 :55

素早さ:5

器用さ:20

硬度 :10


 弱点の攻撃なのに……倒せないとは……。

 魔力が100あるから、魔法の耐性が高いのかもしれない。


 ふむふむと思っていると、ファイアスライムに変化があった。

 体を波打たせ始めた。そして、体から触手のようなものが無数に飛び出してきた。

 それらすべてが俺を狙っている!


「うああああ」


 右に躱して、左に躱して、ジャンプ……バク転!

 はぁはぁ……やばい。ファイアスライムの攻撃が止まらない。

 ずっと敵のターンだ。


 ミスリルソードで触手を断ち切る。しかし触手に触れた熱がミスリルソードに伝わり、手のひらが火傷しそうなほど熱くなった。


「あちちちちっ」


 魔ポーション(小)を飲んで、緊急ニブルヘイム!

 ファイアスライムに凍りついて、小休憩。

 まあ、すぐに脱皮するんだけどね。

 また少しだけ小さくなったファイアスライムの攻撃ターンが始まる。


 どうする? ニブルヘイムを連発してファイアスライムが無害化するまで小さくするか?

 それでは500匹倒すまで、途轍もない時間がかかってしまう。


 なにか……良い方法があれば。


 あっ、そうだ!!

 魔ポーション(小)を飲んで、魔力を全回復。

 そして、アイシクルを唱える。


 氷柱をファイアスライムに撃つためではない。どうせ、放ったところでファイアスライムのコアに当てるほどの腕は、今の俺にはない。


 ならば、氷柱をミスリルソードに合体させるのだ。

 ミスリルソードが凍りついて、鋭い氷に覆われる。

 身幅が倍になってしまうほどだ。


 ファイアスライムの触手をぶった斬りながら、詰め寄ってコアに狙いを定める。


「アイシクルソード」


 動画が映えるように名前を付けてみたが……安直すぎたかな。

 だが、威力は満点だった。


 分厚いファイアスライムの体ごとコアを両断する。

 さらに周囲に集まり出していたファイアスライムたちに向かって、横回転斬り!


 ミスリルソードに込めていた氷魔法の効力が消えて、氷の剣が砕け散る。

 その時には、ファイアスライムのコアが地面にたくさん転がっていた。


「やりました! ファイアスライムの攻略完了です! どんどん狩っていきます。500匹狩って、ファイアスライムのコアを集めます」


 第二階層にいるモンスターはファイアスライムがメインだ。フレイムタートルはちらほらいる感じだ。

 このままファイアスライムと一緒にフレイムタートルを狩っていれば、烈火のブーツに必要な素材が集まるだろう。

 よしっ、狩りまくるぞ!

 目指せ、夕食までに第二階層制覇と烈火のブーツをクラフトだ!

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