第22話 鑑定
フレイムタートルは硬い甲羅を持っていることで有名だ。
更に燃え盛るように高温になっているため、素手での攻撃は難しい。
倒したドロップ品は手で触れるくらいの温度になる。それでも長時間持っていると火傷しそうだ。
「フレイムタートルがどれくらい硬いのかをミスリルソードで試してみます」
氷魔法ニブルヘイムばかりでは動画の見応えがない。
ミスリルソードでモンスターと戦うかっこいいシーンがほしいところだ。
俺はミスリルソードを鞘から引き抜いて、フレイムタートルと向き合う。
エイ、ヤー!
思った以上に硬かった。
二段斬りでやっとフレイムタートルの甲羅を両断できた。今まで何でもバターのように斬れていたミスリルリードを持ってしても、この硬度だ。
生半可な剣では傷一つ付けられないかもしれない。
スタンダードソードをアイテムボックスから取り出して、他のフレイムタートルに攻撃してみるが……。
「ミスリルソードでないと、フレイムタートルに攻撃が通らないです。このモンスターを狩るにはやはり魔法がオススメです!」
物理攻撃だけでは、ダンジョンが暑くて大変だ。
氷魔法で冷やしながら、戦うのが一番。
「ニブルヘイム!」
あ~、めっちゃ寒い!
それでも灼熱よりは随分マシだ。
沖縄ダンジョンにおいてニブルヘイムは必須な魔法だと思う。
範囲魔法攻撃だし、フレイムタートルが一気にたくさん狩れる。
探索者もいないので、モンスターを独り占めだ。
ドロップ品を200個集めるのに時間がかかると予想していた。しかし、思いのほかサクッと集まってしまった。
「水炎魔の鎧をクラフトするための素材が集まりました! 早速、クラフトします!!」
動画が映えるように、アイテムボックスから必要な素材を地面に置く。
めっちゃ多い!
フレイムタートルの甲羅200個、ミスリル100個が混ざった山の上に、海獣の玉をシンボルのように乗せた。
アプリでクラフト開始!
素材が浮かび上がり、円を描きながら動き始めた。その速度が加速して光の粒子に変わっていく。
この光景はいつ見ても美しい。
光が収束したときには、水炎魔の鎧が完成していた。
「成功しました。水炎魔の鎧がクラフトできました!」
どのようなデザインの鎧なのかクラフトするまでわからなかった。
そんな多少の不安は、実物を目にして綺麗に吹き飛んでしまう。
かっこいい!
黒をベースとして所々にアクセントとして、青と赤があしらわれている。
そして動きやすさを念頭に置いた軽甲冑。早く性能を試したい!
すぐにアプリの装備をスタンダードアーマーから水炎魔の鎧に変更する。
脱いで着替える手間がないので、とっても楽だ。
装備が切り替わってすぐに感じたのは、
「まったく暑くないです! 26度くらいの部屋にいる感じです。試しに熱々のフレイムタートルに触ってみます」
のっしのっしと歩くフレイムタートルの後ろに回り込んでタッチ!
「熱くないです! 炎耐性があることが証明されました。次は氷魔法を使ってみます!」
熟練度が上がってきたニブルヘイムを発動!
俺が甲羅にタッチしたことに怒っていたフレイムタートルが一瞬にして凍りついた。
指先で触ると、粉々に砕け散った。
そんな極寒の地と化した場所でも、まったく寒くない!
これで氷魔法を使っても、寒くて震え上がることはなくなったぜ。
それに今後炎魔法を得たときでも、火傷の心配もない。
万能な鎧を手に入れてしまった!
ミスリルリード、氷魔法のリング、水炎魔の鎧……どんどん装備が充実していく。
この調子で沖縄ダンジョンの第二階層を目指そう。
水炎魔の鎧のおかげで、探索速度も上がった。ニブルヘイムで周囲の温度を下げながら、進む必要がなくなったからだ。
それでもニブルヘイムの熟練度を上げていきたいので、フレイムタートルの群れを見つけるたびに詠唱した。
500回くらいニブルヘイムしたところでやっと下の層へ続く大階段が見えてきた。
沖縄ダンジョンは不人気なだけあって、動画配信をする者はとても少ない。
汗だくになるため、女性配信者はとくに嫌がるようだった。
そのため、配信動画があっても第一階層までだ。
つまり、この下の階層からは情報がない。知っているとしたら、大手ギルドの幹部くらいだろう。
今まで事前情報をもとにして探索してきた。
ここからは未知の探索になる。
ちょっと緊張してきたなと思っていると、アプリから通知が来た。
『アプリに鑑定の機能が追加されました』
おっ、困ったときのアプリ様!
鑑定があれば、モンスターの強さもわかるし、クラフトしたアイテムも調べられる。
ずっとほしいと思っていた機能だ。
試しにフレイムタートルにスマホを向けて鑑定してみる。
◆フレイムタートル 種族:亀
属性 :炎
弱点 :水、氷
力 :18
魔力 :1
体力 :25
素早さ:1
器用さ:1
硬度 :90
硬度以外のステータスは大したことない。
硬度90は、ミスリルソードで二回攻撃することで倒せるから結構高いと考えたほうがいいだろう。
俺のステータスが上がれば、話は違ってくるかも知れないが。
ちなみに俺を鑑定するとこんな感じだ。
◆東雲八雲 種族:人間
力 :55
魔力 :30
体力 :40
素早さ:45
器用さ:45
魅力 :10
モンスターには魅力がない代わりに、硬度という項目があるようだ。
これからは、モンスターのステータスと自分のステータスを比較しながら、戦っていこう。
蘇生のペンダントがあるからといって、格上のモンスターの群れに飛び込んでしまえば、大変なことになる。
蘇っては倒されを繰り返すなんて……ごめんだ。
「それでは下の階層へ降りていきます。ここから先は、俺の知る限り配信動画は無いと思うので、乞うご期待ください」
新たな装備――水炎魔の鎧で強化もできた。
見知らぬモンスターが先に待っていたとしても鑑定で調べることができる。
一人で中級ダンジョンを攻略してやるぜ!
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