第4話 新人探索者
俺は息切れしながらも、高校から家に一直線で帰っていた。
授業中にダンジョンやアイテムクラフトばかり頭に浮かんできて消えなかった。
ちなみに初投稿した動画の再生数は、昨日から確認していない。
まだ1だったら吐血するかもしれないので、あえて見ないようにしていた。
当分の間は再生数を気にすることなく動画投稿して、アイテムクラフトに邁進するのだ。
俺は自分の部屋に入って、荷物を置く。すぐにスマホを持って納屋に直行した。
スマホのダンジョンアプリを起動する。
まずは装備だ。
『装備』を選んで、『装着』ボタンを押す。
「変身っ!」
全身が光に包まれる。収まったときには、昨日着ていた探索者の装備になっていた。
よしっ、バッチリだ。
今日はどこのダンジョンへ行こうかな。
高校の授業中にずっと考えていた。
初めは新宿ダンジョンから新たなダンジョンへの挑戦を検討していた。行ってみたいダンジョンがたくさんあって、かなり頭を悩ませたほどだ。
だがしかし、新宿ダンジョンを制覇したとは言えなかった。ゲート付近で、ブルースライムを狩っただけだ。
深く潜って強いモンスターと戦っていないし、最深層にいるボスモンスターも見ていない。
あれやこれやと、どのダンジョンに挑むのか頭を巡らせたが、結局は一周して新宿ダンジョンへ戻ってきた感じだ。
「問題は、新しいクラフトレシピが貰えるかどうか」
新宿ダンジョンには、ブルースライム以外のモンスターもいるので、初級ポーション以外のレシピが貰える可能性はある。もし、貰えなかったとしても、初級ポーションを量産してやる。
「今日も頑張るぞ」
アプリでダンジョンポーションを起動させる。
繋げるダンジョンを検索して決定!
『……接続中です』
『新宿ダンジョンへリンク完了』
ポータルの光が、青白い色から黄金色に変わった。
後は飛び込むだけだ。今日も新宿ダンジョンは人が多いだろうか?
混み具合によっては、すぐに下層を目指したほうがいいかもしれない。
「ここで考えるよりも、直接見たらわかるか」
気合を入れてポータルに飛び込むと、昨日と同じ光景が広がっていた。
ゲート付近は探索者でごった返していた。やっぱり、多いな。
人混みを掻き分けて進んでいると、右側から怒号が飛んできた。
「お前ら、撮影の邪魔なんだよ。どけっ」
二十歳後半くらいの体格の良い男が、初心者探索者たちを追い立てていた。
あの人……知っている人だ。迷惑系ダンジョン配信者として、最近よく動画投稿サイトで上位に上がってきていた。
闇短気という名前だったはず。バズった動画は【新人探索者を罠にかけてみた】だ。内容は虎挟みというトラップを使って、新人探索者を罠に嵌めていぶるものだった。
右も左もわからない新人探索者は助けを求めたり、怒ったりするが、それを面白可笑しく動画にしていた。
実力がかなりある探索者で、仕返ししようものなら返り討ちにあって、また動画のネタにされてしまう。
俺はそれを見て、気分が悪くなったのを覚えている。
ダンジョン配信者にとって、絶対に関わってはいけない人だった。
まさかと思うが……新宿ダンジョンのゲート付近に虎挟みを敷き詰めたりしないよな。
地獄絵図が簡単に想像できてしまう。
俺は怒号が聞こえないところへ、そそくさと走っていく。
「出だしから、ヤバい人を見てしまった」
あんな奴など放っておいて、俺のやりたい探索に専念しよう。
スマホを見ると、アプリ通知が届いていた。先程の迷惑系配信者のせいで気が付かなったようだ。
「おおっ、新しいレシピだ」
なになに……これは予想外だ。
◆販売ゴーレムの素材
・ブルースライムのコア ✕ 100
・ロックバードの石翼 ✕ 50
・ミニゴーレムの心臓 ✕ 10
ゴーレムをクラフトできる!
しかも販売ゴーレムって、もしかしたら俺の代わりにクラフトしたアイテムを売ってくれるのか?
ただクラフトに必要な素材の数が多い。
まずはブルースライムを狩って、コア100個を目指そう。
ロックバードとミニゴーレムは、今いるところよりも下の層にいるモンスターだったはず。
ブルースライムよりも強いから、初級ポーションも多めに持っていきたいな。
やることは決まった。
それでは、撮影開始だ!
アプリの『録画モード』を選んだ。バッチリ撮れている。
「どうも、くもくもです! 今日は昨日に引き続き、新宿ダンジョンに来ています。今回のクラフトは、なんと販売ゴーレムを作ろうと思います!」
ブルースライムを倒しながら、話をしていく。
「クラフトのための素材集めをしていきます。三種類の素材が必要で、まずはブルースライムのコアが100個です。どんどん狩っていきます!」
昨日、ブルースライムを50匹狩った経験が活かされていた。
サクサク狩れる! 剣の振り回し方も慣れてきた感じがする。
「このっ、えいっ、やぁー!」
連続三回斬り。
3匹のブルースライムを屠ってしまった。素材の回収も忘れずにっと。
もっとたくさんのブルースライムがいる場所を探して、どんどん奥に進んでいく。
群れを成している場所を発見!
俺はもうブルースライムを当分の間見たくないというほど狩ったところで、アイテムボックスを確認した。
「ブルースライムのコアが130個ゲットです! その内の30個は、初級ポーションにクラフトします」
これからロックバードとミニゴーレムとの戦いが待っている。
初級ポーションを素早くクラフトした。
◆初級ポーションの素材
・ブルースライムのコア ✕ 30
↓
・初級ポーション ✕ 6
手持ちの分を合わせると初級ポーションは13個になった。
戦いの疲れをとるため、その内の1個を使う。
元気モリモリ! 全回復だ!
これで12個になったが、この数でたぶん大丈夫だろう。
更にダンジョンを進んでいき、下の層への大階段にたどり着いた。
「この大階段を下りたら、2層目になります」
新宿ダンジョンは、ダンジョン配信で何度も観ているから、構造は頭の中に入っていた。
装備を確認する。
防具は破損なし。剣も刃こぼれなし。回復アイテムあり。
問題なし!!
「では、下りていきます!」
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