第33話:タカラブネファミリーの暗躍

 人質にされていた一族がロシアから戻って来た。

 合衆国の特殊部隊に助けられたそうだ。

 

 家族は今後の対策に忙しくしていたけれど、僕はそんな事には関係なく、舞洲ダンジョンに潜り続けている。


 お父さんとお母さんも、急いで地上に戻ろうとしたけれど、その前の一族の救出に成功したから、最深部を攻略するために再度潜り直したそうだ。


 叔父さんたちも同じで、ダンジョンで宝探しをしていた人たちは、1度地上に戻ろうとしたそうだが、少なくともロシアに着く前に人質が助けられた。


 一族が助けられたのなら、日常に戻るだけだ。

 我が家の日常と言えば、ダンジョンに限らず宝探し。

 ダンジョンに潜っていた者の半数は、再び潜ったそうだ。


 ただ、残る半数は地上に現れたお宝を狙う事になった。

 具体的には、ロシア政府要人とマフィアが残したお宝の事を手に入れる。


 誰かが犯罪で手に入れたお宝の中には、誰が本当の持ち主なのか決められない物があり、そんな物を誰よりも早くい手に入れるのもトレジャーハンターの仕事なのだ。

 

 ロシア政府要人やマフィアが不正に溜め込んだ金銀財宝は1000兆円を超える。

 それを誰が手に入れるのか、争奪戦になっている。

 合衆国の特殊部隊が我が家の味方したのも、そういう裏があるからだ。


 本当は僕もロシアのお宝争奪戦に加わりたい。

 でも、ダンジョン外の僕はまだまだ無力。

 小学6年生の12歳では体ができていないので、役にたてない。


 だから今やれる事をコツコツとやっていく。

 ダンジョンにある宝物を探し、お姉さんたちをレベルアップさせる。


 お姉さんたちはタカラブネファミリーではないけれど、将来はタカラブネファミリーになってくれるかもしれないし、協力要員になってくれるかもしれない。


 今回一族がロシアに連れ去られたけれど、彼が無事に戻ってこられたのも、各国にいる協力要員のお陰だから。


 協力要員を作るのに1番必要なのはお金だけれど、信頼信用を手に入れるのに必要なのは、長年の付き合いだとおばあちゃんが言っていた。


 お姉さんたちを、お金だけの協力要員にしてしまうのか、信頼信用のできる協力要員にするのかは、僕しだいだと言われてしまった。

 だから一生懸命お姉さんたちのレベル上げに協力する。


「竜也君、今度は地下61階に行ってみたい!」


 深雪お姉さんがまた無茶な事を言いだす。


「ワタシモイッテミタイ」


 ルナまで調子に乗って言いだす。


「ダメよ、今のままでは、私たち3人は足手まといよ」


 桜がルナをいさめてくれるけれど、言う事を聞いてくれないのがルナだ。


「フカイホウガツヨイモンスターガイル、ハヤクレベルガアガル」


「自分たちで倒せなくて、竜也君に手を足を切ってもらっては、倒した内に入らないの、分かっているの?」


「お姉ちゃん、桜に言われて恥かしくないの?」


 月奈お姉さんが珍しく深雪お姉さんを突き放すような言い方をする。

 何か特別な理由でもあるのかな?


「うっ、胸が痛い…‥‥」

「ソレハソウダケド……」


「竜也君にレベルアップさせてもらうのは、どうしても必要な時だけ。

 自分たちの力で強くならないとダメなの。

 今の私たちは、周りの人達からバカにされているのよ!」


 桜が更に追い討ちをかけるように厳しく言う。

 そうか、俺がレベル上げを手伝う事に、ネット上で批判が出ているのか。


「そうだよね、あまりにも竜也君に頼り切っていたら、歌って踊って戦う冒険者アイドルとしては失格だよね」


「年下の桜や葵の方が良く分かっているわ。

 私たちのファンが減っているのは、自分たちでガンバル姿がなくなったから。

 効率が良いからといって、人にレベルを上げてもらうのはアイドル失格よ!」


「分かったわよ、助けてもらわずにモンスターを倒すわよ」


「ワタシモガンバリマス」


 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画


Rafael:やったぞ、日本国籍をとれたぞ!


藤河太郎:おおおおお、おめでとう、難民申請が通ったのか?


雷伝五郎:おめでとう、今日からRafaelも日本人だな!


Benno:どこにいるのだ、オフ会をしようじゃないか。


藤河太郎:そうだな、初めてのオフ会をするには良い機会だ。


雷伝五郎:俺も賛成だ、オフ会をしよう?


Rafael:ありがとう、だが難民申請で日本人になったのではない。

  :まだゴタゴタしているから、オフ会には参加できない。


ノンバア:難民申請ではない日本人帰化だと?


Rafael:ああ、特例による集団日本人帰化だ。


ゆうご:めったに外国人の難民申請を認めない日本政府による集団帰化だと?!


Rafael:ああ、こんな状況でなければ絶対に認められなかった集団帰化だ。


Benno:あ、Rafaelは樺太か千島に住んでいたのか?


Rafael:住んではいなかったのだが、急いで樺太に移住して間に合わせた。


ゆうご:なるほど、領土併合による集団帰化か!


Rafael:中華が沿海州を併合しようとして時間がかかったお陰だ。

  :あれがなかったら、日本の千島樺太併合に間に合わなかった。


Benno:日本が樺太と千島、合衆国がカムチャッカ半島を併合したが……


ノンバア:ああ、中華を始めとした周辺国が猛烈に反対したからな。


Benno:ロシアの中央政府が認めた事に口出ししやがって、内政干渉だぞ!


Rafael:合衆国特殊部隊が立てさせた臨時革命政府だからな、普通は認めんよ。


ノンバア:確かにその通りだが、何もしなかった連中が領土を要求するな!


雷伝五郎:そうだぞ、実際の被害者と救援者は日本人だ。

    :合衆国人も命懸けで救援を支援してくれた。


Rafael:俺たちにとっては、もめて時間がかかった事が幸いした。

  :遠くモスクワにいたファンクラブメンバーも全員樺太に行けた。


雷伝五郎:そういう事なら、中華の介入も運がよかったのかもしれない。


Benno:そうだな、中華の沿海州併合要求は認められなかった。

  :ヨーロッパ方面でも併合は認められなかったから、良かったんじゃないか?

  :Rafaelだけでなく、ロシア国籍のファンクラブ会員全員でオフ会するか?


Rafael:樺太の政情が落ち着いたら頼む。


★★★★★★


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