第34話:突然のロシア遠征

「竜也、女の子たちとロシアに行ってもらうよ」


 二泊三日のレベルアップ合宿を終えて舞洲ダンジョンから戻ると、いきなりおばあちゃんからそう言われた。


「急にどうしたの?」


「ロシアのダンジョンが異常な変化を見せているそうなんだ。

 国際ダンジョン協会から家に指名の調査依頼が来てね。

 竜也しか行ける者がいないと言ったんだけど、それでも良いと言ってきたんで、国際デビューしてもらう事になったよ」


「……国際デビューはお父さんお母さんと一緒にと思っていたのだけど」


「竜也はおむつの取れない赤ちゃんじゃないんだろう?」


「当たり前だよ!」


「だったらタカラブネファミリーに来た指名依頼くらいやり遂げて見せな」


「分かったよ、だけど女の子たちに無理はさせられないよ。

 僕1人で行くから、それで良いよね?」


「パーティーメンバーなんだから、ちゃんと説明してからにしな。

 彼女たちにとっても、国際ダンジョン協会からの指名依頼は良い実績になる。

 参加するもしないも彼女たちの判断に任せな」


「深雪お姉さんと月奈お姉さんは良いけれど、他の3人は小学生だよ?」


「お前もだよ、竜也」


「それはそうかもしれないけど……」


「小学生だと文句を言う連中を潰して、彼女たちをC級冒険者にしたのだ。

 今さら小学生だからロシアに行かせられないとは言えない。

 多くの国際的な競技では、小学生も学校を休んで参加している」


 おばあちゃんの言う通りだ。

 夏冬の競技に関係なく、ジュニアの国際大会に小学生が参加している。

 参加している時期は夏休みや冬休みに限らない。


 体の事を考えて禁止されるまでは、小学生がフィギアスケートや体操のオリンピックや世界選手権に出ていた。


「それに、お前達も、いつの間にかもう直ぐ中学生だ。

 春休みまでのわずかな期間小学校を休んでも、出席日数はだいじょうぶだろう?」


「僕は問題ないけれど、あの子たちの出席日数までは知らないよ」


「だから本人たちに直接話して確かめな。

 3人も、ダンジョンに集中するために通信教育に切り替えるかもしれないし、中学校に通うにしても、ダンジョン科のある自由登校の学校に進学するかもしれない」


 おばあちゃんの言う通りなので、しかたなく週明けの月曜日に話した。

 深雪お姉さんと月奈お姉さんだけなら朝1番に話したのだけれど、3人が合流するのを待って午後に話した。


「そんな良い話、なんで今まで黙っていたの?

 朝合流した時に話してくれてもいいじゃない!」


 深雪お姉さんに文句を言われたが、2度も同じ事を話したくない。

 女の人達のように、いつもペラペラ話していられない。

 お父さんも男はあまり話過ぎない方が良いと言っていた!


「何時話しても同じだよ、お姉ちゃん」


 月奈お姉さんが深雪お姉さんを注意してくれる。


「そんな事ないよ、幸せな話を聞くのは早いほど良いんだよ!」


「私たちは必ず参加するから何時聞いても良いの。

 問題は学校と家の事情で参加できないかもしれない3人だよ」


「え、私はお姉ちゃんたちと参加できるよね?

 お父さんお母さんが反対しても、お姉ちゃんたちが説得してくれるよね?」


 葵が心配そうに質問している。


「任せなさい、必ず説得してあげるから!」


 深雪お姉さんが自信満々に答えている。


「国際ダンジョン協会からの依頼なら、ロシアマフィアの残党におそわれる事もないだろうから、説得してあげるわよ」


 慎重な月奈お姉さんまで葵を参加させる気だ。

 困った事に、鈴木三姉妹はやる気に満ちている。


「ワタシモサンカシマス、リョウシンガハンタイシタラ、イエデシテサンカシマス」


「家出の参加は絶対に認めない、必ず両親を説得しろ。

 両親が参加を認めたか、直接会いに行って確かめるからな!」


「オウ、カミサマ!」


「私も参加したいけれど、お父さんとお母さんが反対するかもしれない。

 説得できなかったら、絶対に連れて行ってくれないの?」


「月奈お姉さんは、ロシアマフィアのしゅうげきはないと言っていたけれど、旧政府や旧軍の残党、マフィアの生き残りがいる。

 そんな連中が、タカラブネファミリーの僕を狙ってくるかもしれない。

 この依頼自体が罠かもしれないんだ」


「分かりました、その事も両親に話して参加して良いか聞いてみます」


 4人が桜くらい慎重だったら、僕も楽ができるのに。

 桜だけでも日本に残ってくれるのなら、僕が守らなければいけない人が減る。

 何とかルナと葵も日本に残せないかな?


 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画


Rafael:マフィアの残党が潜伏している場所を突き止めたぞ!


藤河太郎:よくやった、臨時政府には伝えたのか?


Rafael:いや、まだだ、臨時政府に旧政府の残党が残っているかもしれない。

  :ここのみんなに相談してから伝えようと思った。


雷伝五郎:だったら止めておけ、こちらから国際ダンジョン協会に伝える。


Benno:みゆき姫にも正式に伝えておこう。


藤河太郎:そうだな、みゆき姫だと、この投稿を見逃すかもしれない。


雷伝五郎:俺からも日本政府にも伝えておく。

    :日本政府が無視できないように、複数のルートで伝えよう。


Rafael:ありがとう、臨時政府の誰が信用できるのか分からないんだ。

  :だが、国際ダンジョン協会や日本政府は信用できるのか?


ノンバア:今のロシアの状況では仕方のない事だ。

    :ただ、国際ダンジョン協会も日本政府も信用はできないよ。


Rafael:そうか、そうだな、誰は本当に信じられるなんて分からないよな。

  :実際問題、樺太に逃げ込んだ中にもスパイがいるかもしれない。


ゆうご:そうか、それでは気が休まらないな。


Rafael:それでも、樺太と千島には希望があるだけましだ。


Benno:そうだな、無政府状態になっている地域は大変なのか?


Rafael:ああ、合衆国と中華のけん制で、国連軍も入れていない地域がある。


ゆうご:腹立たしいな!


Rafael:ああ、はらわたが煮えくり返る想いだ!


Benno:両国共に民族独立をうたってロシアを分裂させる気だからな。


ノンバア:ああ、それも自分たちに都合のいい形でな。


Benno:合衆国も中華も、シベリアの資源を狙っているからな。


Rafael:故郷が喰い散らかされてしまう……


ノンバア:確かにその通りだが、この状態では仕方がないのかもしれない!


雷伝五郎:深雪ファンクラブで臨時政府を立ち上げられたらいいのだが……


Rafael:サイレントリュウヤが助けてくれたら不可能ではないと思う。


雷伝五郎:そうなれば良いな!


★★★★★★


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