第31話 旅立ち
「こ、腰が重い……」
「大丈夫か?」
『おかしいわねぇ。
房中術で身体は元気になってる筈なのに』
何を言ってるんだよ!
二人のせいじゃないか!
ふざけるなと心の中で突っ込む。
リリィと愛し合った翌日の夜から一週間。
毎晩毎晩アスモとルヴィアに求められた。
それはもう激しくて激しくて。
死ぬんじゃないかって命の危険を感じたよ。
そりゃ僕も気持ち良かったけどさ。
なんといえばいいのか。
生気を全て奪い取られた気がする。
そんな僕とは違いルヴィアは絶好調で。
肌がツヤツヤしていた。納得いかないんだけど。
「おい、落ちこぼれ!
いや、もう落ちこぼれとは呼べないんだぜ!」
「【勇者の子】、お前に伝令が届いている」
「グレンさん、クールさん」
ルヴィアと共に大聖堂に向かうと。
僕を待っていたかのように二人が声をかけてきた。
伝令って、いったい誰から?
クールから手渡された手紙を音読する。
「『ユーリ、ルヴィア。
此度の活躍、誠に大儀であった。
二名は聖女候補リリィと共に。
エルフの大森林に向かうべし。
ブレバーズ教官、ハラルド』」
教官からの手紙だったのか。
エルフの大森林に向かえって……。
いったいどういう事なんだろう。
しかもリリィを連れてってさ。
疑問を抱いていると、クールが詳しく説明してくれる。
「
「ダークエルフ……」
って確か、魔族に堕ちたエルフのことだよね。
『そうよ。
元々はエルフだったんだけどね。
自然と生きることをやめ、精霊に見放されたことで。
闇月神ルナサハによって魔族に堕ちた種族よ』
(そうなんだ……)
エルフからダークエルフ。
人族から魔族に堕ちるのって稀有な例だよね。
種族の垣根を越えてしまうんだから。
「だが、エルフは人間の協力を断っている筈だが?」
「そうなの?」
怪訝気味に告げるルヴィア。
それなら、僕達が行っても門前払いを喰らってしまうんじゃないだろうか。
「それがそうでもないらしい。
ダークエルフに強者が現れたのか。
劣勢に立たされているそうだ。
やむを得ず、エルフ側は国に協力を仰いできた」
「なるほど」
『都合の良い連中ねぇ』
やれやれとため息を吐くアスモ。
彼女の気持ちも分からなくもない。
今まで協力を拒んできたのに。
いざ不利になれば助けて欲しいと。
都合の良いことを言ってくるんだから。
でも、それほど状況が緊迫しているんだろう。
「わかりました。命令に従います。
お二人も一緒に行くんですか?」
「いや、俺達は行かないんだぜ!」
「俺達は大司教を聖陽教国に連行する。
そしてまた聖女候補の護衛につくそうだ」
「ロゼとグレイスが殺されちまったからな!」
「そうですか……」
てっきり二人も同行すると思ったけど。
二人には他の命令があるそうだ。
「おういっけね、これを渡しておくんだぜ!」
思い出すようにグレンから茶袋を手渡される。
「これは?」
「マジックバックだ。中には資金も入っている」
マジックバックだって!?
これだけで物が沢山入る超高級品の魔道具じゃないか!
作るのにも時間がかかるし。
限られた勇者しか支給されていない。
「今回の功績を認められてのことだろう。
粗末に扱うなよ」
「おいユーリ、すまなかったぜ!」
「えっ?」
グレンに突然謝れて戸惑う。
謝れるようなことされたっけ?
「落ちこぼれと言ったのは撤回するんだぜ!
お前は立派な勇者だったぜ!」
「俺も侮蔑したことを謝罪する。
【勇者の子】は落ちこぼれではなかった」
「グレンさん、クールさん……」
まさか二人に謝られるとは思わなかった。
そうか……僕は二人に勇者として認められたのか。
「俺達はもう出発する。
お前は仕度を整えて明日の朝に出発しろ」
「期待しているんだぜ!」
「はい! 頑張ります!」
大きく返事をすると、二人は笑顔を零し。
仲間達と共に旅立って行った。
「よかったな、ユーリ」
『よかったわね、ユーリ』
「うん」
勇者の子は落ちこぼれ。
その噂を拭い去ることは簡単ではない。
だったら、己の行動で示していくしかない。
それを二人から教えてもらった。
「さぁ、私達も旅の準備をしようか」
「うん」
◇◆◇
「う~ん、聖都とも今日でお別れか」
旅の仕度を終えた僕は。
ベッドに倒れながら身体を伸ばす。
「色々なことがあったな」
始まりはリリィに出会ったことだった。
リリィが聖女候補だと知って驚いて。
グレンとクールの先輩勇者に出会い。
リリィの訓練に付き合ったり。
突然魔族から襲撃を受けて。
日蝕とか色々あって。
大司教がロゼとグレイスを殺し。
リリィと一緒に魔族に転生しようとしたり。
混沌魔法でシャドウスピリットを倒したり。
二週間と短い間だけど。
凄く濃密な時間だった。
「それに、リリィともしちゃったんだよな」
ふと思い出してしまう。
リリィと重なった日のことを。
彼女の身体は気持ち良過ぎて。
珍しく僕から激しく求めてしまった。
「うう……恥ずかしい」
リリィ大丈夫かな。
彼女は初めてなのに、無理させちゃったかな。
あれから余り話してないんだよね。
なんというか、避けられている気がする。
「とりあえず謝ろう」
これからリリィとも旅をするんだし。
このまま気まずいのは嫌だ。
明日になる前に謝っておこう。
そう思ったその時、扉が叩かれる。
「はい」
「ユーリ、入っていいか?」
「いいよって、アスモも一緒だったんだ」
ルヴィアとアスモが部屋に入ってくる。
何の用だと首を傾げていると。
アスモが部屋の外に声をかけた。
「ほら、貴女もきなさい」
「……はい」
「リリィ」
驚いた。リリィも一緒だったのか。
でも何で三人が一緒なんだ?
ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。
「細かいことは言わないわ。
ヤるわよ、ユーリ」
「はぁ!?」
ヤるって、今から!?
何を言っているんだこの魔王!
今まで散々ヤってきたじゃないか!
「これからまた旅に出るんだもの。
今の内にヤり溜めておかないとね。
ねぇルヴィア?」
「ああ、私も同じ思いだ」
「ルヴィアまで……」
あぁ、ルヴィアがアスモに毒されている。
まぁ、するのはいいけどさ。
一つだけ気になることがある。
「何でリリィまで一緒にいるのさ」
「勿論、リリィも一緒にするからよ」
「はぁ!?」
何言ってるんだよ!
まさか四人でするってこと!?
頭おかしんじゃないのか!
「リリィだってしたくてたまらないのよ。
ねぇリリィ?」
「は、はぃ……」
「う、嘘でしょ?」
「嘘じゃないぞ。
リリィはこの一週間ずっと我慢していたそうだ」
「ユーリに会うと抑えが効かなくなる。
身体が疼いて疼いて仕方なかったのよ。
ねぇリリィ?」
「……はぃ」
「そんな……」
じゃあ僕を避けていたのは。
僕と会うと我慢できないからだったのか。
「そんな彼女を見かねて。
私とアスモがリリィを誘ったんだ」
「そういうこと。
だから四人でやるわよ、ユーリ」
「ちょ、ちょっと待って――」
よく考えようと告げる前に。
アスモにキスされて遮られてしまった。
「「んっ」」
アスモのキスは上手すぎて。
一瞬で身体が熱くなってしまう。
「男ならゴタゴタ言わない」
「はぁ……わかったよ――んん!?」
もう逃げられないと諦めていると。
今度はルヴィアからキスされてしまう。
それを見てアスモも横から入ってきて。
三人でキスをした。
「はわわわわわわ」
淫靡な光景を見て驚愕するリリィを。
アスモとルヴィアが手招きする。
「ほら、リリィも来なさい」
「ずっとしたかったんだろ?」
「は、はい……」
リリィは恐る恐る近づいてきて。
自分から僕にキスをしてきた。
アスモとルヴィアと違って初々しいけど。
それがまた男心を擽ってくる。
「はぁ……はぁ……ユーリ様」
「うわっ!?」
トンッと押し倒される。
ベッドに倒れる僕の上にリリィがまたがってきた。
彼女の目と顔は発情していて。
飢えた獣のようだった。
「ふふ、どうやらリリィが一番ヤバいかもね
今まで溜めていた分が解放されたみたい」
「ふっ、みたいだな」
「私達も負けてられないわよ、ルヴィア」
「ああ。ユーリ、頑張ってくれよ」
「頑張ってって……」
もしかして僕。
今度こそ死んじゃうんじゃないのかな?
そう思いながらも、三人の魅力に抗えず。
僕達は夜通し愛し合ったのだった。
◇◆◇
「さぁ、行くぞユーリ」
「ユーリ様、大丈夫ですか?」
『ちょっとユーリ。
しゃきっとしなさいよしゃきっと』
「あのさぁ~」
よく言うよ。
君達三人の相手をするこっちの身にもなって欲しい。
身体は凄く調子が良いけど。
精神はからっきしだよ。
でもまぁ、今日からこの三人。
いや四人の新たな旅立ちなんだし。
アスモの言う通りしゃきっとしようか。
「皆、行こう。
目的地はエルフの大森林だ」
最後までお読みいただきありがとうございました!!
運営様に怒られない塩梅のえっちな描写をしてみたのですが、中々難しかったです…笑
本当はもっとえっちな描写を描きたかったです!!
明日からの新作宣伝です!
タイトルは
『行き遅れの侯爵令嬢は初めての恋を知る』です!
初の女性主人公で、初の令嬢系のチャレンジとなりますが、お時間あればお読みいただけると嬉しいですm(_ _)m
勇者の子~落ちこぼれの僕は魔王のキスで覚醒した~(仮) モンチ02 @makoto007
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます