第207話 合流
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石動はフードの男に向けてFG42を構えると、ロサの援護のため発砲しようした。
その時、いつの間にかフードの男から放たれていた矢が二本、サーッという音と共に上空から降ってきた。
間一髪、気がついた石動が素早く矢盾の中を転がり、天井のドアを開けて馬車の室内に転がり込んだ時、トストスッという音がして矢が馬車の天井に突き立つ。
鋭い矢尻の先が分厚い馬車の天井を貫き、室内にその先端を覗かせていた。
そこはまさに先程まで石動がいた場所だ。
石動は馬車内から乗降口のドアを開けて、フードの男の姿を探すも既に樹の陰に隠れたのか見えなくなっていた。
先程までフードの男がいた大樹に向けてFG42の照準を合わせると、気配察知と索敵スキルを最大にしながら連射した。
セミオートで「ダンッダンッダンッダンッ」というテンポで、8ミリモーゼル弾を撃ち込んでいく。
スキルで探りながら見当をつけ、セミオートで連射していたが、10発を越えて撃ち込んだあたりから敵に動きがあった。
フードを被った男が、素早く別の大樹の裏へと移動するのを、石動の鋭い眼は見逃さなかった。
続けてフードの男が新たに隠れた大樹に向けて、石動は発砲を続ける。
マガジンが空になったので、マジックバッグからフル装填された20連マガジンを取り出すと、
その隙に、森の奥から数本の矢が樹々の間を縫って飛んできた。
素早く馬車の中に戻って、石動が盾にした馬車のドアに二本の矢がタタンッと突き立つ。
残り三本は正確にフィリップ騎士達に向かって飛んできたが、すでに剣を抜いて臨戦態勢だった三人の騎士は、剣で飛来した矢を難なく叩き落とす。
しかしそれは陽動で、視界の外から山なりに飛んできた矢が、スルスルと連続して三本、上空から降ってきた。
「グウッ!」
「クソッ!」
咄嗟に身体を捻って避けたフィリップ騎士の左二の腕に矢が刺さる。
サンデル騎士はフィリップ騎士に駆け寄ろうとして動いたおかげで、矢は身体を掠めて地面に突き刺さっただけで済んだ。
ヤコープス騎士は反射的に後退ろうとしたが間に合わず、右腿に矢を受けてしまう。
「皆、馬車の中に避難して!」
石動は騎士達に声を掛けつつ、FG42での銃撃を再開する。
フードの男が隠れている樹に向けてセミオートで間断なく撃ち込み、20連弾倉が空になった頃、ヤコープス騎士がふたりの騎士に両側から肩を借りるような形で馬車に運ばれてきた。
三人が馬車に乗り込んだのを確認すると、石動は前世界で使用していたファーストエイドキットが入ったタッパーウェアをマジックバッグから取り出す。
それを三人の騎士達に渡すと、FG42のマガジンを交換しながら言った。
「私はこれから森に入り、ロサと合流して、あのクソ野郎を何とかしようと思います。
貴方たちはここでまず矢傷の治療をしてから、まだ他にも残党が居るかもしれないので、この馬車の警護をお願いできますか。
必要なら別の場所に馬車ごと避難してくれても構いません。必ず追いつきますから。
心配しなくてもロサと一緒に戻りますので、すぐに出られるように準備しておいてくださいね」
心配そうに何か言いつのろうとする三人の騎士達に口を開く暇を与えず、石動はFG42を抱えると馬車を飛び出して森の中に駆けこんだ。
もう既にフードの男は、先程いた場所から別の場所へと移動しているだろう。
石動は男がいた方向に真っ直ぐ向かうことはせず、ロサが消えた藪の方へ潜り、やや迂回して接近することにした。
もちろん気配察知や索敵スキルはずっと最大にしてある。
フードの男が射る矢は樹を回り込んでくるし、上空から山なりに飛んで来る矢も厄介だ。
ただ、樹々が生い茂った森の中なら、樹々の枝葉が邪魔をするので、上空からの攻撃はあまり気にしなくていいかもしれない。
そう思いながら低い姿勢のまま藪の中を走り、時折大きな樹を盾にしながら進んでいた石動へ、突然、目の前の草藪を突き抜けて矢が飛んできた。
石動は肝を冷やしながら五体投地のような恰好で伏せて、矢をスレスレで躱す。
そのまま横にゴロゴロと転がって逃げる石動を追って、腐葉土と化した森の地面に矢が突き立っていく。
「今のはヤバかった・・・・・・」
なんとか逃げ切ったが、反撃する暇もなかった。
銃弾は弾頭が軽いと、葉っぱや木の枝に当たっただけで弾道が変わってしまう。
しかし質量が大きな矢は、少々の草叢など気にせず貫通してくるのだ。
そうなると、枝葉を貫通して空からの攻撃もあり得るのか・・・・・・と石動は考える。
石動のスキルでフードの男を「索敵」し「気配察知」しようとするが、朧気には感じられるものの、なかなか正確な所在が掴みにくい。
このままではこちらが狩られてしまうかもしれない、と石動が少し焦り始めた時、そっと石動の肩に手が置かれた。
「ツトム、大丈夫だった?」
静かに優しく置かれた手はロサのものだった。
「ロサ、君こそ怪我はないか?」
「私は大丈夫。それよりツトム、あそこを見て」
ロサが指さした方向を石動が目を凝らす。
「ここからだと太い樹が二本、重なって生えてるように見える場所、分かる? 今、ヤツはあの裏に隠れているわ」
「よく分かったな。・・・・・・回り込んで、挟み撃ちにするのは可能だろうか」
「そうなる前にヤツは別の場所に移動するでしょうね。どうにも所在が掴みにくいし、森の中の戦いに慣れているニオイがするのよ」
ロサは苦々しげに言う。
「どうしようかと思っていたところにツトムが来たから、協力してやっつけようと思って」
「・・・・・・ロサ、隠れているあの樹、どのくらいの太さだろうな?」
「そうね・・・・・・斜めに二本並んでいるうちの、奥の樹なら直径一メートルくらいはありそうかな。手前の樹はせいぜい直径70~80センチくらいかしら」
「ふむ、ならイケるかな」
「ツトム・・・・・・なにをやる気なの?」
石動はニヤリと笑うと、マジックバッグから新たにFG42の装填済弾倉を取り出す。
その弾倉に詰められた8ミリモーゼル弾の弾頭の先端は青く塗られていた。
「亜竜と同じ目にあわせてやろうかと思ってね。まあ、生木でも直径一メートルくらいなら、なんとかイケるとは思うんだけどな。亜竜の鱗より硬いってことは無いだろう?」
弾頭の先端を青く塗った8ミリモーゼル弾は、亜竜討伐の時にも使用した
3ミリの鉄板を2センチ間隔で10枚並べたものを軽々と貫通することが出来る、貫通力に特化した弾である。
亜竜のもつ、通常弾なら弾くような堅い鱗でも貫通して見せた優れものだ。
それを使った石動の作戦は実にシンプルだ。
ヤツは石動たちが大樹も貫通できる銃弾を持っていることを知らない。
だから徹甲弾で、樹の裏に隠れたフードの男を大樹ごと撃ち抜く。
または盾にしていた大樹が撃ち抜かれて、慌てて姿を見せたところを撃ち倒す。
以上。
それにロサが異を唱える。
相手はただでさえ気配を掴み難くて神出鬼没であり、さらには優れた弓の名手のようだ。
ここで逃げられたら、また所在を掴むまで大変だしその間に反撃を受ける可能性が高い。
それなら確実に仕留められるよう、ロサがある程度相手に近づいてヤツの姿を確認しながら撃った方が良くないか?
そうすれば、万一逃げられても追跡しやすいし、なんなら慌てて遮蔽物から出てきたところをロサが仕留めてもいい。
石動はここへきての単独行動は危険ではないか、と反対した。
「大丈夫だって! ツトムより私の方が森の中で動くなら上手いし速い。それに危なかったらツトムが助けてくれるんでしょ? そこは信じてもいいのよね」
「必ず守るよ。それは約束する」
「じゃあ、100数えたら撃ち始めて。もし万一、あの樹の裏からヤツが移動して、もういなかったらそれまでには何か合図するから」
ロサは石動を見てニコッと笑うと、それ以上石動が何か言う前に、マリーンM1895を抱えて草叢の中へと消えていった。
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