第196話 武装強化

 最近の酷暑のせいかどうかわかりませんが、私のポンコツエンジンの調子が悪く、伏せることが増えてしまいました。

 そのため、せっかくコメントを頂いているのに返事が出来ておらず、ホント申し訳ありません。

 全て読んでますし、皆さんからパワーを頂いていますからね!

 なんとか投稿だけは穴を開けないように頑張りますので、ご容赦くださいませ。


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 亡霊ファントムとの闘いに決着がついた日の翌日から、一週間が経過して・・・・・・。


 石動はその間、ほとんど離宮の作業部屋に引き籠っていた。


 亡霊ファントムの遺体を皇城に持ち帰ったマクシミリアン第三皇子は、それを帝国諜報部暗部が拉致監禁や殺人未遂などの重罪を犯した証拠として、ベルンハルト第二皇子や帝国諜報部ラファエル部長らの責任を厳しく追及している。

 石動も何度か証人喚問で呼ばれたが、いよいよヒートアップしてきた皇位争いの舞台には、石動当人が必要以上に出てこない方が良いとマクシミリアンが判断しての引き籠りだ。


 本来、石動の役目であるマクシミリアンの身辺警護についても、さすがの帝国諜報部暗部といえども、糾弾され疑いの目を向けられているさなかに刺客を放つような愚かな真似はしないだろうと免除されていた。

 もとより皇城内の警備は近衛師団が固めているし、人目も多いので暗殺には不向きだ。


 実際、帝国情報部は不気味に沈黙を守っている。

 ラファエル部長のみが表舞台に立ち、巧みな弁明と反論でベルンハルト皇子と共に、マクシミリアン皇子に対抗している。


 石動としても、生々しい皇族同士の争いや、貴族同士の派閥抗争のようなものは苦手なので、正直関わりたくない。

 そのため、離宮で武器開発に専念できるのは、石動にとって願っても無いことだった。


石動はこの機会に、今回の亡霊ファントムや帝国諜報部との戦いから学んだことを活かし、必要だと思われる武装を強化していくことに決めた。


 強化すべき課題はいくつかある。


 まず石動は、メインの小銃ライフルを自動化しようと考えている。

 今回鐘楼からの狙撃には、モーゼルKar98kライフルを使用したが、特にモーゼル小銃にとりたてて大きな不満があるわけではない。

 ただ狙撃銃としてみれば、0.5MOAの精度がある石動の愛銃レミントンM700カスタムなどに比べると、モーゼルは2~3MOAと命中精度がかなり劣るのだ。

 これは銃の工作精度や鋼材の問題だけではなく、弾薬の設計や推進薬の問題でもある。


 本来の軍用小銃の使命は相手を殺傷させることで、傷ついた兵士の救護をする将兵なども含めて敵軍に負担や損害を与えることであり、今のモーゼル小銃でも戦場では必要十分な精度だ。

 だがスナイパーである石動にとっては到底満足できる命中精度ではないので、現在も少しでも弾薬の精度を向上させるべく、日夜研究を続けているところである。


 しかし現在のところでは、まだ目覚ましい成果は残念ながら出てない。

 現状の精度で今後も戦わないといけないのであれば、セミオート射撃が出来るようにすることで、精度を弾数で補う方がいいかもしれないと石動は考え始めていた。


 たとえ一射目が外れても、素早く二射目を連続して撃つことが可能なセミオートなら、多少狙いからズレても連射することでカバーできるという考え方だ。

 加えて、必要に応じてフルオート射撃も可能なら、もっと良い。

 そう考えた石動は、以前に比べて鍛冶スキルが向上したという自覚もあるので、遂に自動小銃の製作を決心したのだ。

 

 あと、諜報部暗部に奪われたモーゼルⅭ96の代わりになる、バックアップ用の自動拳銃も造らねばならない。

 再びモーゼルC96を造ってもいいのだが、ようやく箱型弾倉ボックスマガジンがまともに使えるようになったのだから、ここは別の拳銃を作ろうと思う。


「(PPSh41サブマシンガンに使用している7.63x25mmマウザー弾がそのまま使えるルガーP-06もいいな。

 いや、この際だから7.63x25mmマウザー弾のケースを広げて9ミリパラベラム弾を造って、ワルサーP38にするという手もあるか。

 それとも、M3A1グリースガンに使用する45ACP弾が使えるコルトガバメントM1911A1というのもいいなぁ・・・・・・)」


 石動は一人でニヤニヤ笑いながら妄想を広げ、収拾がつかなくなってしまう。

 仕方なく自動小銃が完成するまでによくよく考えて、どんなモデルを造るかは完成後に決めることにした。

 もう少し妄想を楽しんでもいいだろう、という想いが強い。


 次に手榴弾の強化が必要だ。

 今回の闘いで、手榴弾の有効性は充分以上に証明された。

 初見殺しという面はあったが、一対多数の場面でも非常に有効だったのは確かだ。

 しかし今回、敵に手榴弾の存在が知られてしまった以上、次からは必ず警戒されるに違いない。


 それでもこの世界に、他には存在しない爆発物を使った武器というアドバンテージは、計り知れないくらい大きい。

 これを強化していくなら投擲で使用するだけではなく、物理的に飛距離と威力を伸ばすことで、広い範囲で使用できるようにするのが理想だろう。


 本当は40ミリグレネードを使用するGLX160A1グレネードランチャーのようなものが理想的だ。

 理想を実現できない理由は、そもそも40ミリグレネード使用する爆薬であるコンポジションBに必須のRDX火薬が、まだ石動には開発できていないからだ。


 プラスチック爆弾の主原料でもあるトリメチレントリニトロアミンとTNT火薬を混ぜたものがコンポジションBという爆薬なのだが、石動の錬金術レベルでは現状、錬成は難しい。

 ヘキサメチレンテトラミンを硝酸でニトロリシス化すればトリメチレントリニトロアミンになると知識としては知っているのだが、そもそもヘキサメチレンテトラミンとはどんなもので、どうすれば手に入るのかが現状では見当がつかない。

 

 そこで手持ちのTNT火薬を活用して最大の効果をあげようと考えるなら、たとえば旧日本帝国陸軍の50ミリ八九式重擲弾筒のような、歩兵が携帯できるほどコンパクトでありながら最大火力を発揮できるものを造るのが良いのではないか、と石動は考えている。

 これも開発の優先順位は高い。早めに作成にかかろうと考えている。


 最後に火力の向上だ。

 今、石動が持っている最大威力の弾薬は、エレファントガン用として作ったシャープスライフルに使用する50-110WCF強装弾である。 

 ただ、この銃弾は単発銃であるシャープスライフルでしか使用できないので、使い勝手が悪い。

 それは弾薬としての設計が古いためで、弾速より弾頭重量の重さでダメージを与える銃弾なので、有効射程が短いうえ反動が大きく他の銃への汎用性は低いという難点がある。

 そのかわり裏を返せば、200メートル以内の近距離では大型獣でも一発で倒せる、ほぼ無敵の威力があるということだ。


 長距離射撃でも使える強力な弾薬が欲しいと思った石動は、50口径の12.7x99mm弾、すなわち50BMGブローニングマシンガン弾を作ることを思いついた。


 50BMGこと12.7x99mm弾はアメリカ軍に1921年に制式化されたブローニングM2重機関銃に使用する弾薬だ。

 第一次大戦後、アメリカ軍は新兵器として出現した戦車や装甲車両などに対抗できるよう、当時の標準弾薬だった30-06スプリングフィールド弾より強力な弾薬を開発することが急務となった。

 そこで、もともとデザインが優秀だった30-06スプリングフィールド弾をそのままスケールアップし、50口径にした50BMG弾を造り上げたのだ。


 使用する重機関銃も銃器設計の天才ジョン・ブローニングが、自身で以前に設計したM1917機関銃を再設計することで、完成させたのがM2重機関銃だ。

 M2重機関銃と言えば第二次世界大戦中はもちろん、現在でも陣地防衛や戦車などの車載重機関銃として使用され続けている銘機関銃である。


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